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神様と作ろう新世界 〜ケモミミ世界で純愛ラブコメ異世界リアルサバイバル〜  作者: 河合 翔太
第1章 改訂前作品(改訂終わったら消します)
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第48話 サトウキビ畑をめざそう。島の北に向けて遠征

【異世界生活 17日目 8:00】


 俺、明日乃あすの一角いずみ琉生るうの4人で北のエリアの探索に行く。

 北の平地にあると思われる、小麦畑の確認と、サトウキビ畑を見つけ、砂糖を作る作業、そして途中でイノシシあたりを狩り、干し肉を作るのが目的だ。


「秘書子さんに最短ルートをマップにマークしてもらうか?」

俺はみんなに聞いてみる。


「最短だけじゃダメだよ。道の起伏が少ないところ、後川沿いで水を確保できるルート、そして、道が歩きやすいところをおススメしてもらわないとね」

明日乃あすのが俺の意見にアドバイスをくれる。


「あと、どうせなら、一度北の海岸まで出た方がいいんじゃないか? 海さえあれば魚が獲れるかもしれないし」

一角いずみがそう言う。


「あと、お野菜獲れるルートがいいな」

琉生るうがそう言う。


「とりあえず、野菜は置いておいて、明日乃あすのの意見と一角いずみの意見は一理あるな。その条件でサトウキビ畑を通って、海に出るルートだな。野菜は砂糖が落ち着いてからだ」

俺はみんなの意見をまとめる。


「承知しました。マップにその条件でルートを追加いたします」

アドバイザー女神様の秘書子さんがそう言いマップに赤いラインを引いてくれる。

 マップ自体は未踏破なので真っ黒だ。


「よし、ルートも確認できたし、いくか。じゃあ、改めて、行ってくるね」

俺は、留守番係の麗美れいみさん、真望まもすずさん、レオに挨拶をして出発する。


 とりあえず、東に進むらしい。

 右手に森を見ながら草原の横の土の道を歩いていく。


 30分くらい歩くと、ルートが北向きに変わる。

 北を向くと草原を分けるように獣道が続き、その先には小高い丘が見える。


「この丘を登るのか」

俺は少しうんざりする。


「砂糖を手に入れる為だよ! がんばろう!!」

琉生るうはやる気満々だ。


「小麦の存在を確認できれば将来的にパンが食える」

一角いずみもやる気満々だ。


 琉生るうが先行して歩き出す。一角いずみも横に並び、俺と明日乃あすのが後に続く。


「あんまり、気負い過ぎるなよ。バテるぞ」

俺は二人に注意する。


 そこからなだらかな山道を1時間ほど歩く。土地が痩せているのか、山を登るほど草木が減っていく。

 平地なら30分くらいで歩ける距離なのだが傾斜が歩みを遅らせる。 

 

「ここが頂上かな? あとは下りだし楽だな」

俺はそう言う。

 頂上は低木とわずかな草の生える痩せた土地だ。土と岩の無機質な風景に心が疲れる。


「下りの方が足に負担がかかるから無理しないでね。登りより下りの方が怪我しやすいんだよ」

明日乃あすのが知識を活かし注意する。

 とりあえず、みんな気をつけながら、下りで調子に乗らないようにしながら歩く。


 30分くらい歩くと平地がみえて、森や草原が広がってくる。


「やっぱり、緑が多いと安心するな」

俺はそう言って、目の前に広がる森と草原に心が休まる。


「このあたりは獣が多いので気を付けてください。山と森と平地が交差するようなところは危険です。というより、実際、すでに獣がこっちに来ています」

秘書子さんが無感情な声で台本を棒読みするようにそう言う。


「マジか! みんな、何か来るらしい。秘書子さんが察知した」

俺は慌ててそう叫ぶ


「何かってなんだよ」

一角いずみが半ギレで吠える。


「クマです」

秘書子さんが冷静に無感情に言う。

 こういう時まで無感情はちょっとイラッとするんだよな。神様に言うのもなんだが。


「クマが来るぞ。みんな周りを警戒」

俺がそう言うとみんな背中を合わせ、外向きの円陣を組み、360度警戒する。


「いたよ私の方向。西の坂の下。向こうも気づいてる」

明日乃あすのがそう言い、みんなそっちに向かい明日乃あすのを庇うように陣形を組む。


「風下をとられていたのか」

俺は臭いを感じなかったこと、そして、今、フードを脱ぎ、後頭部に風を感じて気づく。


 どうする? 魔法を使うか? 誰の、どの魔法を使う?

 攻撃魔法か? 威力が弱く、1発で倒せなかったらどうする?

 補助魔法? 一角いずみの魔法は回避率が下がるからクマ相手には危険すぎる。琉生るうの魔法は攻撃向けじゃないし森など立体的に戦える場所じゃなくては無意味だ。明日乃あすのの魔法はそもそも回避専用、一番適しているのは俺の魔法か?

 ステータス上昇がどれくらい効果あるか分からないのが困るな。 

 それか、明日乃あすのの結界魔法もありか。明日乃あすのの結界魔法は今後も使えそうだしな


明日乃あすの、結界張る魔法あったろ? あれ、準備だけしておいてくれ。お祈りポイント使っちゃっていいから」

俺はそう指示する。

 そして背負った荷物や土器を地面に置く。仲間も荷物を置き身軽になる。


「私も魔法、試してみたいな。緊急時にいきなり使うのも怖いしな」

一角いずみが珍しくおねだりしてくる。 


「今回だけだぞ。相手が格上のクマだからだぞ。あと、使う魔法は『風の刃(ウインドカッター)』だっけ? 攻撃魔法にしとけ。補助魔法の方はなんか癖ありそうだしな」

俺がそう言うと、一角いずみが楽しそうにステータスウインドをいじり始める。


 魔法取得に300ポイント、使用に300ポイント、それが一角いずみ明日乃あすの二人だから1200ポイント。かなりの無駄使いだな。


 とりあえず、まだ距離があるので落ち着てスキルでクマを『鑑定』する。



 なまえ レッサーベア(オス)

 レベル 20

 クマでも弱い方。小型のクマ。

 力がとても強く、足も速い。

 固い毛皮に覆われ防御力は高く並みの武器では刃も通らない。

 意外と手先が器用で木を登ることもできる。



 またこいつか。レベル20で格上の危険な存在だ。


「おい、一角いずみ、遊んでないで弓使え。熊が近づいてきたぞ」

俺は慌ててそういう。

 クマが俺達を獲物と認識したみたいで徐々に近寄ってくる。

 俺も急いで左手に槍を持ち、右手に石斧を構える。投擲の準備だ。

 

「魔法は後回しか」

一角いずみが残念そうにそう言って矢をつがえ弓を構える。


 ヒュン

 と風を切る音がして、矢が風を切ってクマに飛んでいく。

 そして矢継ぎ早に、2本、3本と矢を放つ一角いずみ

 クマの右肩に2本、左肩に1本矢が刺さる。傷は浅い。黒曜石のやじりでもクマの厚い毛皮に阻まれる。

 俺の投擲距離内に入ったので、俺は右手に構えた石斧をクマに向けて投げる。

 

「グアァ」

クマが吠えて、俺の投げた石斧を左手で叩き落す。

 眉間を狙ったが外れてしまった。まあ、左手にはダメージを与えたようだ。


 俺は急いでやりを両手で構え直しクマを迎え撃つ。


 一角いずみも弓矢を捨てて槍に構え直す。琉生るうも槍を構える。

 戦闘が苦手な明日乃あすのは一歩下がって槍を構えている。


「どうする? 魔法使っていいか?」

一角いずみがそう言って、ちょっとわくわくしている。

 そんな場合じゃないだろ?


明日乃あすのが先だ。結界の魔法を頼む」

俺はそう言って明日乃あすのに目配せする。


「わかったよ。神よ力をお貸したまえ。『聖域サンクチュアリ』!!」

明日乃あすのがそう唱えると、彼女を中心に俺たちの周りにドーム状の光の膜が拡がり出す。

 そして8畳くらい、大き目の部屋くらいの結界が張られた。


 それを見たクマが一瞬止まり、様子をうかがう。


「これって、こっちから攻撃できるのか?」

一角いずみがそう言う。


「弓矢で射ってみろよ」

俺は一角いずみにそう答える。

 すると素直に、槍を弓矢に持ち替え、もう一度弓に矢をつがえるとクマに矢を放つ。

 矢は光の結界を抜けてクマの左目に刺さる。


「グアァァァ」

クマが大きく唸ると一度立ち上がり、前足を引きずりながら突進してくる。

 そして、光の壁に阻まれるが、狂ったように突進したり爪で何度も攻撃したりする。


 こちらからは攻撃できて、敵からの攻撃は防ぐ。なかなか優秀な魔法だな。


「りゅう君、マズいよ。どんどん結界の耐久度が減ってる」

明日乃あすのには結界の耐久度が見えるのだろう。

 そんなことを考えると、俺にも結界の耐久度が表示されるようになる。


 クマが結界に攻撃を1撃加えるごとに耐久度が2減る。

 

「一撃で耐久度が2減るのかよ!!」

俺は思わず叫ぶ。


「敵の攻撃力によっては耐久度が2減ったり、3減ったりと変動します」

秘書子さんがケロッと暴露する。


「敵の攻撃力で耐えられる回数が変わるらしい。聞いてないよ秘書子さん」

俺はみんなに聞こえるように、そして秘書子さんに文句を言う様にそう叫ぶ。


「はい、言っていませんでした。聞かれなかったので」

秘書子さんがいつもの無感情な声でそういう。

 

 結界の耐久度は31。もう14も減っている。


琉生るう、熊の後ろ脚を攻撃するぞ。動けなくする。明日乃あすのは様子を見ながら少しずつ後退だ」

俺はみんなにそう指示をする。


 琉生るうは熊の左から、俺はクマの右から槍で何度も後ろ足を突く。今回は肉の確保も目的だからな。逃がさないようにまずは足を狙う。


 クマは怒りに任せて結界を殴り続ける。進む速度が落ちない。


 明日乃あすのがじわりじわりと後退すると、結界の境界線も少しずつ下がる。明日乃あすのを中心に展開し、展開後も移動可能なのか。不利な状況での撤退にも使えそうだな。

 俺は冷静に結界の魔法を評価する。まぁ、それだけ心に余裕が持てる優れた魔法ってことかもな。


「結界の耐久度が19、壊れそう。危ないよ」

明日乃あすのが悲鳴を上げる。もうすぐ耐久度が半分を切る。


一角いずみも攻撃しろ、首だ。首をねらえ」

俺がそう言うと、


「魔法は使っちゃダメなのか?」

一角いずみが寂しそうにそう言う。


「じゃあ、至近距離から首に当ててみろ。俺と琉生るうには当てるなよ」

仕方がないので俺は一角いずみに許可を出す。

 一角いずみと会話しつつ、俺はクマの足に何度も攻撃を仕掛ける。


琉生るう、ちょっとどいてろ。風の聖霊よ、神の力を借りて魔法の力とせよ。『風の刃(ウインドカッター)』!」

一角いずみはそう唱えると、右手に槍を持ち、左手を前に出す。

 そして、左手の周りに風が吹き、それが集まり突風となり、風の刃と化す。

 

 そして、その風の刃は熊の首の右に当たり、ぱっくりと傷口を作る。そして鮮血が飛び散る。


「うわっ、こら!」

俺と一角いずみがクマの血の雨を浴びそうになる。

 しかし目の前で結界に阻まれ、結界に沿って血が垂れていき、地面に吸われていく。どういう仕組みなんだ? この結界?

 

 傷口はそこそこ深い。だが、クマの毛皮が邪魔したのか、ダメージは抑えられてしまったようで、熊は動きを止めない。致命傷だが、即死ではない。そんなダメージだ。

 

 俺は慌てて槍で首にできた傷に追撃を加える。傷口が広がり、首が落ちるのをめざすように。

 琉生るうも反対側から、熊の左側から、首を何度も槍で突く。


「魔法の威力は微妙だな。当たり所が良かったから今回は効いたが、至近距離じゃなかったら致命傷にすらならないような威力だな。まあ、格上のクマだったっていうこともあるか」

一角いずみが冷静にそんなことをつぶやく。


一角いずみ、喋ってないで攻撃しろ。まだ動くぞコイツ」

クマも必死で、しかも後ろ足を俺と琉生るうに事前に攻撃されて、移動力を失い、撤退という選択肢も奪われている。もう、死ぬ間際のヤケクソ攻撃なんだろう。両手の爪で何度も結界を殴りつける。


一角いずみちゃん、早く倒して。結界が壊れちゃう」

明日乃あすのも悲鳴を上げる。結界の耐久度は9だ。


「さすがにもう、倒れるだろ?」

一角いずみがそう言って、半立ちになっているクマの左胸に槍を当てると、骨の位置を探っているのか、少し槍を動かし、そこから一気に全体重をかけて槍を押し込む。心臓への一撃だ。


首を切られて、体中傷だらけ、クマが声にならない呻き声をあげる。

 

 そして一角いずみが槍を抜くと、傷口からさらに鮮血をまき散らし、前のめりに結界に倒れ掛かるクマ。

 結界の耐久度は残り3だった。


明日乃あすの、終わったぞ。結界を外していいぞ。追加料金とられちゃうからな」

俺はそう言って一度クマから離れ、一角いずみ琉生るうも少し安全な距離をとる


「ふう、危なかったね。結界壊れちゃうところだったよ」

明日乃あすのが大きく息を吐き、緊張を解く。そして結界も消えていく。


「結界の魔法は有用なことはわかったけど万能ではないな。あまり多用すると、一気にお祈りポイント持っていかれるぞ、これ」

俺はそう評価する。


「そうだね。あまり無茶な戦闘は避けた方がいいだろうね。例えば、大量の魔物に囲まれちゃうような感じ?」

明日乃あすのがそう言う。


「その時は、事前に沢山、お祈りポイント貯金しとかないとダメだね」

琉生るうも笑ってそう言う。


「というか、私の魔法もいま一つだったな」

一角いずみがそう言って肩を落とす。


「まあ、今回みたいに当たり所が良ければ結構ダメージ出るみたいだし、雑魚相手ならいい武器になるんじゃないか?」

俺はそう言ってフォローしてやる。


「雑魚相手だと、お祈りポイントの採算がとれないんだよ。つまり使えないってことだ」

一角いずみがそう言ってがっかりする。

 まあ、俺も一度『闇弾ダークバレット』とか言う謎の攻撃魔法も試してみないとな。


「よし、流司りゅうじお兄ちゃん、変幻自在の武器貸して。このクマ、ちゃっちゃと解体しちゃおうよ」

琉生るうがそう言うので俺は武器を貸してやると、それをナイフに変えて、ちゃっちゃと解体を始める。


 俺はとりあえず、近くに落ちている石斧を拾いに行く。クマに投げたやつだ。


 そしてクマの死骸のそばに戻ると琉生るうが手際よく解体をしている。


琉生るう、解体上手いな」

俺はあまりの手際の良さに自然とそんな言葉が出る。


「ああ、クマはさすがにないけど、イノシシとかシカとかは何度か解体したことあるからね。おばあちゃんちの近所の猟師さんに教わりながら何度かね」

琉生るうはそう言うと丁寧に血抜きをしてから毛皮を剥いでいく。


「これ、どうする? 一度拠点に帰るか?」

俺も青銅のナイフを出してクマの解体、琉生るうの手伝いながら、みんなにそう聞く。


「そうだね。砂糖は魅力的だけど、1回拠点に帰って干し肉にしてから再出発しようよ。真望まもちゃんとか石鹸欲しがってたし、クマの油も作ろうよ」

明日乃あすのがそう言い、一角いずみ琉生るうも渋々頷く。


「砂糖とれなくなっちゃうよ?」

琉生るうが手を止めずに俺の方を向くとそう言う。


「2~3日遅れたくらいじゃ変わらないだろ? こんな大荷物もって、しかも干し肉作りをしながらの方が砂糖作り遅れそうだしな」

俺はそう言って琉生るうを説得する。


「そう言われるとそうだね」

琉生るうがそう言って諦める。


「クマの油作るなら肉片をろ過するのに麻布が必要だよね。真望まもちゃんに連絡して、毛皮の洋服作りは止めてもらって麻糸作りと麻布作りしてもらわないと。ちょっとマナ勿体ないけど連絡しちゃうね」

明日乃あすのはそう言って魔法の通信で拠点に留守番をしている真望まもに連絡を取る。



【異世界生活 17日目 12:00】


 俺達はその後、クマの解体を終え、骨や内臓など要らない部分を神様に還し経験値化する。

 なんか、琉生るうが上手にクマの胆のうを取ったので、秘書子さんに聞きながら漢方薬にでもしようという話になった。なんか色々効果があるらしいが、胃薬的な漢方薬かな?

 肉は塊のまま塩を振って持ってきた土器に入れて運ぶ。拠点まで半日だし腐らないだろう。


 とりあえず、拠点に帰る事になり、丘の頂上まで戻るとお昼になる。

 丘を登りながら薪を拾い、明日乃あすのが魔法で火をつけてたき火をする。

 さっき、倒したクマの肉の脂身の多いところをとりあえず焼いて食べることにする。最近、食料が減ってきて、魚とバナナが多かったので久しぶりの焼肉パーティだ。

 

 

【異世界生活 17日目 14:00】 

 

「おかえり、みんな。クマ捕れたんだって?」

真望まもが嬉しそうな声で迎えてくれる。


真望まもはクマの油が目当てか?」

俺はそう言って冷やかす。


「だって、クマの油ってお肌にいいのよ? そんな油で石鹸なんて作ったら、ねえ?」

そう言って喜びを隠しきれない真望まも


「でも、麻布がないと熊の油作れないぞ。何度かお湯で煮て、脂をろ過して不純物をとらないといけないらしいからな」

俺は真望まもにそう言う。


「そうなのよね。明日乃あすのちゃんと琉生るうちゃん。疲れているとこと悪いんだけど、麻糸と麻布作りを手伝って。急ピッチで作っちゃうから明日の朝までに何とかするから、脂捨てないでね」

真望まもがそう言って俺達にお願いする。


「おかえり、みんな。石鹸を作るとなると、貝を拾ってきて生石灰も作らないとね」

すずさんがそう言って色々考える。


「そうなると、明日は貝拾いと熊の油作りかな? とりあえず、クマの肉を干し肉にしよう。麗美れいみさん、一角いずみ、手伝ってくれ」

俺はそう言って荷物を下ろし、クマの肉を出す。


「レオ、海水を汲みに行くぞ。あと、塩作りも再開だ」

一角いずみはそう言ってレオを連れて海に向かう。


「私はいいの?」

すずさんが俺にそう聞くので、変幻自在の武器を渡してツリーハウスの材料作りに専念してもらう。


 2人が海水を汲んできたので、俺と一角いずみ麗美れいみさんは青銅のナイフを使って、クマの赤身を薄く切って塩を加えて塩分濃度を上げた海水に浸けていく。脂身は別に取っておいて、脂にする予定だ。

 レオはもう一度海に行き、海水を汲んで、塩作りを始めるらしい。


すずさん、忙しいところ悪いんだけど、麻布を織る道具が作りたいんだけど手伝ってもらえるかな?」

真望まもがそう言いすずさんと何かを作り始める。

 竹で作った大きな木枠? 絵画の額縁みたいなものを作ったようだ。


「なんだそれ?」

俺は気になって聞く。


「まあ、簡易はた織機? この木枠に縦糸を張って、1本ずつ、交互に横糸を通す感じかな? 手間はかかるけど、今から本格的なはた織機作るのは無理だからね」

真望まもがそう言って嬉しそうにその木枠を持って明日乃あすの達の元に帰っていく。

 俺も干し肉の下準備に集中する。


「砂糖はどうするの? 諦めるの?」

クマ肉を薄切りにする作業をしながら麗美れいみさんが俺にそう聞く。


「いや、明後日、再挑戦かな? 干し肉と石鹸ができたらもう一度出発するよ。琉生るう一角いずみが我慢できそうにないしな」

俺はそう答える。

 一角いずみ琉生るうは食べ物にうるさいからな。


 そんな感じで干し肉を海水に浸け、下準備は完了。

 真望まもが麻の群生地で腐らせている麻の茎を取りに行きたいと言い出したので、真望まもには布づくりを継続させて、俺と琉生るう麗美れいみさんで麻の繊維を取りに行くことに。

 一角いずみはレオと合流して塩作りをしながら麻の茎を叩きだす。


 本当に麻布作りは人手も時間も必要だな。

 そして、魔法の箱で麻布出しちゃえばいいんじゃないかと言いそうになったが、今日、お祈りポイントを勝手に無駄使いしてしまったので口ごもる。

 魔法をは有用だが、節約すれば、魔法の箱から色々欲しいものを出すことができる。難しい選択だな。


 とりあえず、麻の群生地まで行って、麻の茎を回収。新たに麻の茎を切り倒して琉生るうに腐らせる土魔法をお願いする。今回も3人で運べるくらいの量、魔法5回分で麻の茎の腐るのを早める。


 今日は麻の茎も拠点に在庫があるので、麗美れいみさんの魔法は使わずに土を川で洗い流して濡れたまま拠点に持って帰り、木の間に張った荒縄に干して乾かす。必要になった時に乾燥魔法を使えば多少お祈りポイントの節約になるだろうしな。


 拠点で麻の茎を干し終えたところで、日も落ち、真っ暗に。今日の作業も終わりだ。

 明日、明るくなったら、組分けをして、クマの油を煮込みながら麻布を作る作業、海岸に行って貝を拾う作業そして、食べ終わった貝殻を焼いて生石灰にする作業をやる。


 明日乃あすのが夕食作りを始め、俺も手伝う。今日は熊肉の油多めの部分を焼肉にして食べる。油が多いと干し肉には向かないからな。


 夕食後、海水に浸けた熊肉を取り出し、干し肉づくりの籠にいれて、木に吊るす。

 亜熱帯? 少し暖かい気候なのか夜露の心配もないので、夜干しても風でよく乾くのだ。


 そして、いつもの日課のお祈りをして、歯磨きをして就寝する。

 今日の見張りは一角いずみ麗美れいみさんの順番だが、遠征で一角いずみが疲れているだろうとのことで真望まもが見張りを交代してくれる。

 前半が麗美れいみさん、真ん中がレオ、後半が真望まもの順番だ。


 サトウキビ畑に行くことはできなかったが、クマを倒して肉が確保できたのは大きいな。

 クマの油と石鹸ができ次第、再度、サトウキビ畑をめざして遠征しよう。

 

 次話に続く。

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― 新着の感想 ―
[一言] サトウキビ畑=ポルトガル・プランテーションが出て来る自分が少し悲しいです。竜司君一向が歴史を繰り返し南アメリカ(そもそも存在しない気がするけど…)へと進行を行いフランシスコ・ピサロみたいにイ…
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