第42話 麻糸を作ったり、槍の強化をしたり
【異世界生活 12日目 18:00】
「もう日が暮れるな。どうするか。真望はこれから水浴びするだろ?」
俺はそう言う。もうすぐ周りは真っ暗になるだろう。
「もう仕方ないわね。私が魔法を使うわ」
真望はそう言って、魔法を使う。
無詠唱ってことは、自分のマナを使って魔法を習得、魔法を使ったってことだろうな。
そして真望の前に小さな炎が浮かぶ。
「この間、明日乃ちゃんが使ったって言っていた光魔法と原理は一緒ね。弱い炎なら1時間、明かりとして使えるみたい」
真望がちょっと自慢気にそう言う。
「真望はその火の明かりで水浴びするんだろ? そうしたら、この枯れた竹に火をつけてくれよ。こっちはそれをたいまつ替わりにするから」
俺はそうお願いすると、真望が出した火がふわふわと動き、近くにあった立ち枯れした竹に火をつける。結構便利そうだな。
「じゃあ、竹でも切っていて。早めに水浴び済ますから」
真望はそう言って、火の玉と一緒に泉に向かう。
「鈴さんはこれを使って」
俺はそう言って、変幻自在の武器を変化させたノコギリを渡し、自分はヤシの葉のリュックから石斧を出して竹を切り倒す。
麗美さんは竹を切り倒しつつ、運びやすい長さにも切っていく。
俺が石斧で切り倒した竹も麗美さんが長さを整える感じだ。
やっぱり、石斧の方が効率は悪いな。
まあ、何もしないで待つよりはましだし、作業を続ける。
そして、30分ほどすると真望が戻ってくる。
「お待たせ」
そう言って、火の玉と戻ってきて周りが少し明るくなる。
鈴さんは、火のついた立ち枯れた竹をのこぎりで切ってたいまつ代わりに持つ。
とりあえず、真望の魔法も1時間で切れるらしいので切った竹を担いで急いで帰る。そして、明日乃の光より若干暗いのは真望のINTが低いからかもしれない。
【異世界生活 12日目 19:00】
「ただいま。遅くなった」
俺はそう言って拠点に戻る。
「おかえり。水浴びは大事だもん、仕方ないよ」
明日乃がそう言って迎えてくれる。
「流司、明日も、ダンジョン攻略は午後からにしないか? 鈴さんに槍の新調してもらいたいしな」
一角がそう言う。
「柄になりそうないい木でも見つかったのか?」
俺は冷やかすようにそう言うと、
「太さも重さも増すが、耐久力はけた違いな良い木が見つかったぞ。しかも、結構たくさん。とりあえず、3本、青銅の穂先を作ってもらって槍を新調して欲しいんだよ」
一角がそう言う。
こいつ、弓矢だけでなく武器全般のマニアだったのか。
「まあ、石窯の屋根も作りたいらしいし、明日も午前中は作業するか」
俺はそう言う。
「麻の繊維も結構いい感じでほぐせたから、麻糸も作れそうだし、午前中は作業でいいかもね」
明日乃がそう言う。
「そうなると、スピンドルも作らないとね。鈴さん、少し手伝って欲しいな。将来的には足踏み紡ぎ車が作りたいけどね」
真望がそう言う。
良く分からない単語が多すぎて俺は話に入れない。まあ、鈴さんと真望に任せれば大丈夫だろう。
「じゃあ、とりあえず、麻糸づくりと、それに必要な道具作りと石窯の屋根作り、おわったら、ツリーハウス作り。そのあたりを明日の午前中やるか」
俺はそう言って明日の予定を決める。
「そういえば、琉生のダメージはどうする? 明日ダンジョンに行けるか?」
俺は気になって聞いてみる。
「そういえば回復方法しらないね。明日乃お姉ちゃんの回復魔法もレベルが上がらないと使えないんだよね? しかもどんなものがくるか使えるようにならないと分からないもんね」
琉生がそう言う。本人はあまり危機感を感じていないようだ。
「HPの回復は食事によるマナの摂取と休憩による時間経過により回復できます。HP7ポイントくらいなら食事をとり、一晩寝れば回復すると思われます」
秘書子さんがそう教えてくれる。
「琉生、秘書子さんの話だと、ご飯を食べて一晩寝れば回復するらしいよ。とりあえず、熊肉食べておきなよ」
俺はそう言って、マナ回復の高いクマ肉をお勧めする。
「それじゃあ、晩ご飯は熊肉にするね。一応朝ご飯も熊肉かな? 遅くなったけど夕ご飯作るね」
明日乃がそう言って調理を始める。
「とりあえず、さっき約束した砥石、貰っていいかな? 夜の見張りの間、暇だからちょっと槍の穂先砥ぎたいし」
そう言う鈴さん。ものづくり魂がうずくようだ。
「だったら私も縫い針欲しいな。明日留守番している間に縫物したいし」
真望がそう言う。
「真望はどちらかというと、麻糸づくりが優先だろ? 縫物、ウサギの毛皮はとりあえず置いておけ」
俺はそう言う。ウサギの毛皮のふわふわに真望は魂を奪われたようだ。
そんな感じで、明日乃が夕食を作る間に鈴さん希望の砥石を2種類、荒い砥石と、仕上げの細かい砥石、真望も希望の縫い針を神様のくれた魔法の箱で交換する。
砥石がお祈りポイント2000×2で4000ポイント、縫い針はいろんな太さの針のセットで1000ポイント消費する。11200ポイントあったお祈りポイントが6200ポイントまで減る。
まあ、結構な散財だが、鈴さんも真望もうれしそうなので良しとしよう。そして明日はさらにノコギリをお願いして15000ポイント消費する予定だ。
「とりあえず、お祈りポイントが寂しくなると心に余裕がなくなるからみんなでお祈りしよう」
俺はそう言ってみんなにお祈りを勧める。
明日乃が調理中でいないので少し少ないが4500ポイント回復して10700ポイントまでお祈りポイントの貯金が増える。
そんな感じで神様から色々貰い、作業の幅が広がる。
夕食もできたので夕食を食べて就寝する。
「琉生、今日は見張りの係の番だったが、俺が代わりにやるからしっかり寝ろよ。HPが回復しないと、明日のダンジョン攻略参加できないしな」
俺はそう言って琉生に寝ることを勧める。
「そうだね。今日は流司お兄ちゃんのお言葉に甘えて寝させてもらうね。その分、明日がんばるからね」
そう言って琉生は自分の家に入る。
ちなみに、ツリーハウスができるまでの臨時の家は今現在、4つで、俺と明日乃、麗美さんと鈴さん、真望と琉生の組み合わせで3つの家を使い、なぜか一角とレオが一緒に寝ている。なんか、明日乃と眷属交換したというより、一角と眷属交換したみたいな状態になりつつある。
良く分からないが一角が結構レオを気に入っているようだ。
それと、魔法の箱を置く小さな祠のような小屋と土器や道具を置いておく物置、たき火を置いておく小屋も別にある感じだ。
寝る前に、明日乃も日課のお祈りをして眠りにつく。
今日の見張りは前半が鈴さん、真ん中がレオ、後半が俺という順番だ。
そしてレオが見張りをしている間は、お約束の時間が始まる。
とりあえず、俺は夜の見張りをしながら、あまりうるさくならないように気を付けながら、麻の茎を叩く作業をして夜が明けるのを待つ。なんか、レオも俺から少し離れたところで、麻の茎を黙々と叩いている。まあ、眷属のレオは俺たちの半分しか寝なくていいらしいし、何かみんなの役に立ちたいんだろうな。
俺とレオは会話もせずに黙々と麻の茎を木の棒で叩いて柔らかくする作業を続けた。
【異世界生活 13日目 4:30】
「おはよう、りゅう君。っていうか、りゅう君とレオ、黙々と作業していて怖いよ」
明日乃が朝起きてきてそう言う。
「別に話すことないし、仕方ないだろ?」
俺はそう言う。どうせ、話しかけてもレオが無視するだろうしな。
「もう、眷属交換で私がレオの主って事にはなってるけど、本来はりゅう君が主なんだからね。もう少し仲良くする、歩み寄る姿勢は見せないと」
明日乃が呆れるようにそう言う。
「そんなこと言われても、レオが歩み寄る姿勢がゼロなんだからゼロに何をかけてもゼロはゼロだ」
俺はそう言って、仲良くなろうとすること自体放棄する。
「もう、しょうがないんだから。なんか、最近、私の次に、一角ちゃんのほうがレオの主っぽくなってるよ?」
明日乃がそう言って笑う。
「そう言われると、そうなんだよな。なんでだろう?」
俺は不思議に思ってそう言う。
「やっぱり、レオがりゅう君に少し似ているからじゃない?」
明日乃がそう言う。
「もし、本当にレオが俺に似ているとしても、逆に嫌うだろ? 一角の場合」
俺はそう言って首をかしげる。
「りゅう君はわかってないなぁ。一角ちゃんは私を好きなように見えて、実はりゅう君の事も好きなんだよ。まあ、気になるって感じかな?」
明日乃がそう言う。うん、訳が分からない。
そんな感じで雑談をしていると、当の本人、一角が起きてきたので話は終わる。
「おはよう、明日乃、流司、レオ。どうした? 何かあったのか?」
一角があいさつをしながら違和感に首をかしげる。
「なんでもないよ。最近、一角ちゃんがレオと仲がいいよねって話」
明日乃がそう言う。
レオは気にならないのか黙々と麻の茎を叩いている。
「ああ、こいつは真面目だし、よく働くし、流司とは大違いだからな」
一角がそう言って俺を冷やかす。
「な、こんな感じだろ?」
俺はそう言って明日乃に同意を求める。
「りゅう君はやっぱり分かってないね」
明日乃がそう言って笑う。
確かに何も分からん。
「朝ごはん食べるでしょ? 出来上がるまで、一角ちゃんも麻の茎でも叩いてて」
明日乃はそう言って調理を始める。
「まるで、俺が暇つぶししているみたいな言い方だな」
俺はそう言って、麻の茎を木の棒で叩く。
「まあ、麻の布ができれば明日乃も喜ぶと思うから、それを想像して頑張るんだな」
一角はそう言って、俺のそばに座り、俺と同じように麻の茎を叩きだす。
麻の茎が多すぎて終わる気配を感じない。しかも今日あたり、琉生の魔法で腐らせるのを早めた麻の茎、第二段が出来上がる予定だ。
そんな作業をしていると麗美さんや真望、琉生も起きてくる。
鈴さんは昨晩、前半の見張り役だったのでもう少し寝てるかな?
「おはよう、みんな。琉生、体調は悪くないか?」
俺は琉生が気になって声をかける。
「おはよう、流司お兄ちゃん。体調は万全だよ。HP? っていうのも回復したし。ただ、その分、マナ? 経験値? ちょっと減っちゃったけどね」
琉生が元気よくそう言う。
琉生のステータスを見ると確かにHPは回復しているが、経験値、マナが3くらい減っている。昨日の晩御飯と睡眠で4ポイントマナが増えて、HP回復で7減ったって感じかな?
「おはよう、流司、一角ちゃん、レオ。麻の茎を叩いてくれたんだ。助かるわ」
そう言って真望が嬉しそうに麻の茎をチェックしながら足りない所を叩いて仕上げをする。
「今日の午前中は真望のチームと鈴さんのチームに分かれて麻糸作りと家作りって感じかな?」
俺は鈴さん以外集まったので簡単に打ち合わせをする。
「ああ、最初だけ、鈴さん借りていいかな? 麻糸作りに必要な『スピンドル』っていうのを鈴さんに作ってもらいたいなって」
真望がそう言う。
「スピンドル? なんだそれ?」
俺は昨日も聞いた聞き慣れない単語を聞き返す。
「まあ、鈴さん起きて来たら説明するわ」
真望はそう言って、麻の茎叩きを再開する。
「じゃあ、鈴さんの手が空くまではみんな麻の茎を叩く作業かな?」
俺がそう言って締めると明日乃の朝食も出来上がる。いつもの熊鍋風塩スープだ。
「そろそろ、別のものも食べたいな。米とかパンとか」
一角がいつものわがままを言う。
「ダンジョン攻略したら食材探しの探索しようね」
琉生が楽しそうにそう言う。
食材はともかく、島を一回りして、この島の全体図は把握しておきたいな。
雑談をしながら朝食を食べていると、鈴さんも起きて来て朝食に加わる。
鈴さんに今日の予定を説明して、朝食が終わった子から自然と麻の茎叩きの作業に移る。
「そういえば、鈴さん、スピンドルってわかる?」
俺は朝食を食べ終わった彼女にそう聞く。
「ああ、わかるよ。スピンドル、紡錘という意味で、まんま、糸を紡ぐ道具ってことだね。独楽みたい道具で、回転を使って麻糸を紡ぐ道具だね」
鈴さんがそうこたえる。
「ねえ、鈴さん、スピンドル作れる? できれば人数分」
真望がそう言って鈴さんに詰め寄る。
「まあ、変幻自在の武器と材料があれば作れるかな? 人数分は多いな」
鈴さんが引き気味に答える。
「そうしたら、流司、材料拾いにいこう。直径15センチくらいの丸太があれば、あとは竹を材料にして作れるから。丸太もすぐ見つかるだろうし」
そう言って、鈴さんに手を引かれて拠点のすぐ裏の森へ。
お目当ての物は比較的早く見つかり、条件通りの倒木を一応、2本持って拠点に帰る。
「鈴さん、最初の1個、作る所見ていい?」
俺がそう言うと真望も寄ってくる。
「いいわよ。できれば手伝って欲しいんだけど、道具が一つしかないから仕方ないわね」
鈴さんはそう言って作業に入る。
確かに変幻自在の武器が2~3本あると色々はかどるんだけどな。
俺と真望が見ている前で鈴さんはてきぱきと作業を始める。
まずは拾ってきた丸太を輪切りにして丸い板、コースターのようなものを作る。
そして、その上に、昨日、ダンジョンで拾ってきた青銅の爪2本を麻紐でつなげたものを使ってコンパスのようにうまい具合に円の傷をつける。円の中心にも傷をつける。
あとは傷をつけた線に沿ってナイフにした変幻自在の武器で削っていき、真円の木の板を作る。
最後に、円を描いた時に円の中心できた傷の位置にナイフで穴を開けて、太めに削った竹ひごを差し込み、まさに独楽のようなものを作る。
最後に、竹ひごの先端に麻糸を通す穴を作って出来上がり。
これがスピンドルらしい。
「すごいよ、鈴さん、想像通りの出来だよ。早速実演しちゃおうかな?」
真望が大喜びでそう言い、物置小屋から麻の繊維を持ってくる。
「みんな、見て見て、麻の糸作りの実演をするよ。麻の繊維がいっぱいできたらみんなにもお手伝いお願いするから、使い方覚えてね」
真望がそう言うと、みんなの前でスピンドルの使い方を説明する。
まずは麻の繊維の束から何本か繊維を取り出し、ねじって糸にしていく。そしてある程度長さができたら、スピンドルの軸に巻きつける。ちなみに軸に大量に余っているウサギの皮が少し巻き付けてあって、これが糸巻きの芯になるらしい。
あとはスピンドルを独楽のように回して麻の繊維をねじって糸にして、繊維を出してはねじるの繰り返し、糸がある程度の長さになったら、スピンドルの軸につけた糸巻きの芯(毛皮)に糸を巻いて、同じことを繰り返す。そうすると長い麻の糸が出来上がるらしい。
※スピンドルの構造と使い方
「シンプルだけどなんかすごいね。面白いね」
明日乃がそう言い、琉生も面白そうに見ている。
「将来的には足踏み式の糸車が作りたいけど金属部分が作れるようになってからかな?」
真望が夢を膨らませる。
「鈴さんは凄いね。こんなすごいものを簡単に作っちゃうんだから」
俺は二つ目のスピンドルの作成に取り掛かっている鈴さんを褒めると、少し嬉しそうに笑う。
そんな感じで、みんなで麻の繊維を叩き、真望が千歯こきで繊維をほぐし、鈴さんは黙々とスピンドルを人数分作る。
「鈴さん、それが終わったら、槍の作成もお願いします」
一角がそう言って太くて固そうな木を何本も持ってくる。
「ふう、人気者過ぎて、ツリーハウスを作るどころじゃないわね」
鈴さんが、ため息交じりでそう言う。
そんな感じで鈴さんの作業が終わるまで、全員で麻の茎叩きと繊維を取り出す作業に専念する感じになった。
「一角、できたよ」
鈴さんがそう言って槍を見せる。
俺と、一角と麗美さんが手を休め、槍に群がる。
「これはいいな」
「うん、青銅の穂先もよく切れそうだし、柄を一回り太く、丈夫にしたから、ウッドゴーレムを殴り飛ばしても折れなそうよね」
一角と麗美さんが絶賛する。
「つなぎ目の処理も凄いね。これなら穂先が抜けたり、折れたりして落ちることもなさそうかな?」
俺は槍の穂先のつなぎ目を見て興奮してしまう。
松脂と灰の接着剤で固定した上に、麻紐で柄を丁寧に巻いて柄の先が欠けたり割れたりしないように丁寧に作られている。俺達が作った黒曜石の槍とは全然次元が違う。
「とりあえず、って感じかな? 将来的には樫の木みたいな固い木から木材を切り出して、まっすぐな、本格的な柄を作りたいわね」
鈴さんがそう言い、一角もそれを欲しがる。
とりあえず、今日できた3本の青銅の穂先のついた槍は、麗美さんと一角、琉生が使うことになった。明日乃は次回かな?
「そういえば、砥石の具合はどうだった?」
俺は昨日、お祈りポイントで交換した砥石の具合を鈴さんに聞く。
「いい感じよ。荒い砥石でざっくり研いで、細かい砥石で仕上げの砥ぎをする。その槍の穂先もかなり切れ味良くなったと思うし、切れ味悪くなったらまた砥いであげるから」
鈴さんが機嫌よさそうにそう言う。
「そうだ、ノコギリも交換したいんだよね? ちょうどキリがいいから、みんなで早めのお祈りをして、ノコギリをポイント交換してしまおう」
俺はそう言って、みんなに声をかけて魔法の箱の前でお祈りをする。
お祈りポイントが18200ポイントまで増える。鉄のノコギリは確か15000ポイントだから足りるな。
ポイントを確認できたので、鈴さんが魔法の箱にノコギリをお願いする。
そして光り出す、宝箱みたいな箱。そして少しすると光が収まり、ノコギリが届いたようだ。
鈴さんが箱を開けてノコギリを取り出す。
「普通だな」
「ああ、普通のノコギリだ」
一角と俺が声をそろえてそう言う。
まんま、ホームセンターで売ってそうな両刃の四角いノコギリ刃に木の柄がついているようなノコギリだ。しかも鉄製のせいかちょっと安っぽい。
「とりあえず、変幻自在の武器が手元にない時だけ使う感じかな? そっちのノコギリは使えば使うほど劣化するし刃こぼれや折れる可能性だってあるしな」
俺はそう言う。
「そうだね。みんながダンジョン行っている時とかだけ使う感じかな? 大事に使わせてもらうよ」
鈴さんも頷きながらそう言う。自分用の道具がもらえて少し嬉しそうだ。
「なるべく早くレベル上げして魔物退治して、別の島のダンジョンも攻略しないとね。変幻自在の武器は、1本でも多くあった方が効率よさそうだしね」
麗美さんがそう言って、俺も一角も頷く。
「そうね、私がもっと色々な道具を欲しがる前にね」
そう言って鈴さんが笑う。
そんな感じで、一段落つき、ノコギリも神様から貰い、俺と一角と麗美さんと鈴さんは、石窯の雨よけの屋根を作り、終わり次第、ツリーハウス作りに着手する。
明日乃、真望、琉生とレオは引き続き麻の茎叩きと繊維取りの作業を始める。
とりあえず、ツリーハウスは、麗美さんが変幻自在の武器を変化させたノコギリで竹を切り、それを荒縄で組んで、ツリーハウスに登る為の梯子作りと木の上に基礎を作る作業に着手した。
ただ、交換したノコギリは温存で、変幻自在の武器を変化させた道具一つでの作業で、竹を切るスピードが遅く、鈴さん以外寸法も良く分からないと、人手があっても効率よく進まない状況。まあ、貰ったノコギリを使ったとしても、鈴さん以外どのくらいの長さで竹を切ればいいのかさっぱりだしな。
なんか暇になってしまったので、麗美さんは麻糸づくりの方に移動し、俺と一角も、待ち時間は枯草で荒縄を作る作業をする感じだ。
「私の頭のなかにしか設計図がないし、ツリーハウスを作る木に合わせて寸法の違う竹をその場の雰囲気で切ったりとかしないといけないし、道具も一つだし、これはかなり効率が悪いね」
鈴さんが残念そうにそう言う。
設計図通りいかない場所も多いようだ。
「まあ、鈴さんが竹を切っておいてくれれば、鈴さんの指示で竹を組んだり、木の上にあげたりする作業は俺達にもできるから、とりあえず、鈴さんは竹を切る作業に専念してよ」
俺はそう言って、フォローする。
「そうだね。それしかないね。まあ、気長に作ろう」
鈴さんはそう言って、竹を切る作業に戻る。
待っている間、俺と、一角で元の拠点のそばまで枯草をとりに行ったりする。
新しい拠点の周りは少し草が少ない、土がむき出しのところが多いのが難点なんだよな。
そんな感じでお昼まで、麻糸づくりとツリーハウス作りをして、昼食を食べる。
そして、日課の剣道道場をやるのを忘れたので食後に剣道の特訓をし、少し休憩してから予定通り、午後からダンジョンに再挑戦することになった。
次話に続く




