第133話 新しい魔法の確認
魔法はとりあえず、覚えなくても大丈夫です。面倒臭かったらスルーしてください。
強さは、生活級、初級、中級、上級、最上級の5段階。
単体魔法と範囲魔法がある。
攻撃魔法、結界魔法、回復魔法がある。
最上級はとにかく強い。このくらいの解釈でざっくり読んでください。
【異世界生活 119日目 17:30】
「はあ、ひどい目に会ったな」
とりあえず、南西の臨時拠点に戻り一角がそう呟く。
さっきの魔物狩りは本当にきつかった。
「ワータイガーね。あれは苦労しそうだわ。白い橋から出たら魔法も使ってくるだろうし、ダンジョン争奪戦はかなり厳しい戦いになりそうね」
麗美さんがそう言ってぐったりする。
「とりあえず、一角、裏の泉で水浴びでもして来いよ。血まみれだぞ」
俺はリセットもかねて水浴びを勧める。
「私も行ってこようかな?」
「みんなが行くなら私も行くわ」
明日乃も水浴びに行きたがり、真望もそれに続く。
「そうしたら、みんなで行ってきなよ、水浴び。俺が拠点見張っておくから」
俺はそう言って女の子達に水浴びを勧める。
俺はあくまでも明日乃と真望のレベル上げの補助役だったのでそれほど返り血も浴びてないし、汚れてもいないしな。まあ、軽く洗い流す水は欲しいかな?
「ごめんね、りゅう君。代わりにお水汲んで来るからね」
明日乃がそう言って着替えを持って泉に向かう。
麗美さん、一角、真望も同じように森の奥にある泉に向かう。
さて、俺は待っている間に夕食でも作るか。
俺は、午前中に麗美さんが汲んできてくれた水で軽く体を洗ってから夕食作りを始める。
まあ、夕食といっても拠点から持ってきたクマの干し肉をお湯で戻し、同じく拠点から持ってきた野菜を切り、煮込んで塩野菜スープにする。
瓶詰めの肉や野菜も持ってきたが、あくまでも保存食だ。まずは賞味期限のある干し肉と生野菜を優先して料理に使う。
拠点では暗くなるギリギリまで、眷属のトラとアルが家を作っている。
まあ、手が肉球で俺達より器用ではないし2人だけで作っているので進みは遅いみたいだが、ツリーハウスと高床式の中間みたいな家の基礎が少しでき上っていた。
まあ、木材を一から材木に加工するところからやっているのでかなり時間もかかりそうだな。
今日は魔物狩りから帰ってきたら軽く倒木から木材の切り出しをやる予定だったが、急ぐことはなさそうだな。
そんな感じで、眷属達の家づくりを遠くから眺めながら、たき火で夕食を作る俺。
1時間ほどで、女の子達が水浴びから帰ってくる。暗くなったので明日乃の光魔法で明かりを出して帰ってきたようだ。
「生き返った感じだわ。水浴びのおかげで疲れや頭の中のモヤモヤ感がだいぶマシになったわ」
麗美さんが満足げにそういう。
「お、流司、夕食作っておいてくれたのか。悪いな」
一角がそう言って、たき火のまわりに座り、飯を催促する。
「ああ、明日は早いからな。夕食を早めに食べて早く寝よう」
俺はみんなに夕食の塩味の肉野菜スープを配る。
「でも、明日はかなり苦戦しそうよね。ワータイガーが強い上に明日からは魔法を使ってくる可能性もあるし」
麗美さんが夕食を食べながら俺に声をかける。
「そうだね。でも、お祈りポイントが貯まってるし、明日はお祈りポイント使いまくりでワータイガーを全滅させるつもりで戦えばいいんじゃないかな?」
俺はそう答える。
最近、お祈りポイントを使っていなかったので、上限の20万ポイントに届きそうになっている。
「お祈りポイントと言えば、少し減ってないか? 今日あたり上限に到達しそうな勢いだったのに、微妙に減ってるぞ」
一角がステータスウインドウを開き不思議そうに聞いてくる。
「ああ、今日のお祈りで上限に到達しそうだったから、昨日のうちに琉生と鈴さん達と相談して、俺達の留守中にお祈りポイントが溢れそうだったら、西の川に橋を少しずつ作って調整してもらうようにお願いしておいたんだ。上限オーバーして無駄になるよりいいだろ?」
俺は一角にそう答える。
一応、明日乃と麗美さんには相談したんだが、一角と真望には伝えてなかったな。報連相は全員にしないとな。
俺は一角と真望に相談していなかったことも一緒に謝る。
「とりあえず、明日乃の結界魔法、まだ使っていないものを試してみたり、金剛義装でどうにもならなそうだったら麗美さんの新しい魔法とか試したりしてみよう」
俺達は明日の方針を決めていく。
「というか、一角ちゃんと明日乃ちゃんもレベル41になったんだよね? 新しい魔法は確認した?」
真望が思い出したようにそう言う。
「そう言えばまだだった。なんかそんな雰囲気じゃなかったからな」
一角がそう言いステータスウインドウを開きスキルのチェックを始める。
明日乃も頷き、慌ててステータスウインドウを開く。
「別に飯食べ終わってからでもいいぞ」
俺はそう言って笑う。ご飯が冷めたらおいしくないしな。
そうは言っても二人とも新しい魔法が気になるようで、箸を止めて新しい魔法の確認に集中する。
何分か経ち、一角の目がステータスウインドウから離れ、俺に聞いて欲しそうな顔をする。面倒臭い奴だな。
「で、どうだった? 一角? 新しい魔法は?」
面倒臭いが一応聞いてやる。
「まあ、今までの魔法の強化版って感じだな。新しい魔法は『極大暴風。上級魔法の『大竜巻』を強化した感じのようだな。より広範囲に暴風雨と風の刃で大ダメージをまき散らす感じだ」
一角がそう説明する。
「あとは初級魔法の『風の刃』を強化した『強風刃』? 一撃必殺の単体攻撃魔法って感じだな。あとは『合体魔法』? よく分からないけど、他のメンバーの超上級魔法と組み合わせることで威力3倍だそうだ」
一角が追加でそう説明する。
一角の新しい魔法は全部で3つ、ってことか。
「なんか『合体魔法』って魔法は面白そうね」
麗美さんが興味を持つ。
「要は、麗美姉の『絶対零度』と『合体魔法』を同時に詠唱すると、『氷結の暴風』になって、威力3倍になるって感じだってさ」
一角がそう答える。
麗美さんはアブソリュートゼロという名称がでて、ちょっと微妙な顔をする。
「ワータイガーが面倒臭そうだったら、それで一掃しちゃってもいいかもしれないな」
俺はそう呟く。
「流司、お前、つまらない男だな。とか言われないか? ロマンとかないのか? ワータイガーに剣で打ち勝ちたいとか?」
一角がそう言ってジト目をする。
「一角とは一生分かり合えないかもしれないな。ぶっちゃけ、楽に倒せるなら楽に倒したい」
俺は一角にそう言って反撃する。
「りゅう君、一角ちゃん、ケンカしないの。ワータイガーはともかく、ドラゴン対策にはよさそうじゃない? 氷属性で3倍ダメージだよ?」
明日乃がそう言ってフォローする。
「まあ、本当に困ったときはそれもアリだな」
一角が明日乃に言われて渋々折れる。
魔法が使いたいという割にはこういう1発で決まる魔法みたいなのは邪道という考えらしい。
面倒臭い奴だ。
「で、明日乃の方はどうだ?」
俺は、明日乃も新しい魔法の解説を読み終えたようなので聞いてみる。
「うーん、なんか微妙かな? というかちょっと使いたくないかも?」
明日乃が微妙な顔をする。
「もしかして、名前が残念な感じ?」
麗美さんがなんか期待した顔でそう明日乃に聞く。
「名前もそうだけど効果もかな? 『極大陽光』地上に小さい太陽を作っちゃう魔法? 光と熱で大ダメージって感じの範囲魔法? 結構威力が凄そう? あとは、『天罰』? 回復魔法の逆魔法を敵にかける感じらしいけど、なんかグロテスクそうだよね。グロテスクと言えば、もう一つ、『天に還す』なんか幽霊とかゾンビに効く魔法らしいけど、生身の魔物にも効いちゃう感じ?魂を強制的に昇天させちゃうみたいな?」
明日乃が困惑した顔でそう説明する。
「なんか、エグイ魔法ばっかりだな。しかも最後のやつは即死呪文か」
一角もちょっとひいている。
「まあ、100%即死ではないらしいし、強い魔物には効果ない感じっぽいね」
明日乃が困った顔のまま一角に答える。
というか、この世界には幽霊とかゾンビみたいな魔物もいるのか?
「それと、回復魔法として、『継続回復』、お祈りポイントか私のマナがある限り、全員のHP (ヒットポイント)を回復させ続ける魔法だって。ダメージを受け続けるような攻撃を受けた場合に有効らしいけど、その分、お祈りポイントもどんどん消費されるらしい。使いどころが難しそうな魔法だね。あと、補助魔法の強化版も来たね。『神の恩寵』全員のステータスが全体的に大きくアップするらしいよ。中級魔法『大いなる祝福』の強化版みたいだね」
明日乃は他にも魔法を使えるようになったようで、教えてくれる。
「うーん、明日乃の魔法はなんか良く分からないのが多いな」
俺もそれを聞いて困ってしまう。
威力は凄そうだが、明日乃が言う通り使いどころに困りそうだ。
「なんか、明日乃ちゃんの範囲魔法もそうだけど、麗美さんの範囲魔法も一角ちゃんの範囲魔法もなんか仲間も巻き込みそうだよね」
真望が素朴な感想を言う。
確かに明日乃の範囲魔法は味方も巻き込みそうだし、回避できなそうだ。
「ああ、その辺は、神様も考えているみたいで、私の結界魔法? 『聖盾』が味方の魔法に関しては自動で発動するようになったみたい。危ないって感じたら、全員に小さな結界を配る感じ? ただ、威力に応じて、お祈りポイントがどんどん消費されちゃうらしいから、なるべく味方を巻き込まない方法で使った方がいいかな?」
明日乃が新情報をしれっと漏らす。
「敵の魔法には自動で働かないのかよ?」
一角が突っ込む。
味方の魔法に対応できるんなら敵の魔法にも対応できるだろう? と、俺もちょっと思った。
「みたいだね」
明日乃が申し訳なさそうに笑う。
「まあ、でも、自分の魔法で味方が傷つかないってわかっただけでもありがたいわね」
麗美さんがそう言ってフォローする。
「それにしても、明日乃ちゃんの魔法の数は多いわね」
真望が呆れるようにそう言う。
「そうだね。光属性の魔法と聖魔法、回復魔法、3系統の魔法が使えるから仕方ないのかな?」
明日乃が申し訳なさそうに笑いながらそう答えた。
そんな感じで麗美さんに続き、一角、明日乃も最上級魔法が使えるようになった。
夕食を終え、日課のお祈りを済ませ、就寝する。
明日の起床時間は2時半と早いので、早く寝ないといけなかったのに新魔法等の情報交換の為に雑談をし過ぎてしまい、寝るのが遅くなってしまった。
とりあえず、明日は試しにダンジョン争奪戦に挑んでみて、不利そうだったら、お祈りポイント使いまくって、ワータイガーを1体でも多く倒す。そんな戦略になりそうだ。
次話に続く。
すみません、魔法の解説多過ぎで重過ぎると思ったので今日は短めです。