第123話 家作りと魔物退治(スキップ回)
【異世界生活 97日 6:00】
昨日、橋作りに出かけていた鈴さんと麗美さんも無事合流し、2人が拠点から持ってきてくれた大量のウサギの毛皮のおかげで地べたに寝ないで済むようになり快適な睡眠がとれるようになった。
そのうえ、眷属達が拠点を襲ってきたイノシシを撃退、食料まで入手できたので、食料不足も解決、今日から一気に家作りを進める体制ができた。
鈴さんの提案通り、自然の木4本に四角く基礎となる梁を渡し、床を作って柱を立てて屋根をつけてツリーハウスと呼ぶには少し高さのない高床式の家を作るらしい。
さっそく、鈴さんを中心に、俺、一角、麗美さん4人で家づくりを始める。
まずは、一昨日から作っていた梁用の長い木材を4本自然の木の間に渡し、他の木材でパズルを組み合わせるように上手に自然の木に固定する。
その後梁をさらに増やし、壁をつける為の柱を縦横4本ずつ、12本の柱を立てる。
その後、最初の基礎作りと同じようなやり方で、柱の先より少し上ちょうど屋根ができるあたりに自然の木に梁を四角く渡し、その梁から三角の屋根の形になるように梁を渡していき屋根の骨の部分が出来上がる。
「なるほど、屋根は基礎とは別の梁で浮かせて作るんだね」
俺はその構造に驚いてそう鈴さんに聞く。
「そうだね。基礎に立てた柱に屋根を作っちゃうと、基礎の梁への負担がすごいことになるからね。この家の柱はあくまでも壁を支える為の柱で、本当の柱はこの4本の自然の木の方だからね。屋根も自然の木の方を基礎にして作る感じだね」
鈴さんがそう教えてくれる。
基礎と柱と壁でできた箱に自然の木に固定した屋根が浮いているみたいな構造だ。もちろん、屋根と壁の間は隙間風が入らないように工夫はするらしいが。
そんな感じで、とりあえず、基礎の梁と屋根の骨組みができたあたりで、一角と麗美さんは南西の島に魔物狩りに行く。
あまり早く行くと、ダンジョン争奪戦で橋の前に誰もいない。みたいなことになりかねないので、2時間ほど作業をしてから出発することにしたそうだ。
そこからは俺と鈴さんで、眷属達が作った床と屋根用の平らな板を使って床を張っていく。
釘がないので、木の板や梁にキリで穴を開けて木釘を打ち込む形で床を固定していく。
なんだかんだ言って、昨日サボっていたような俺と一角だったが、木釘だけはきっちり作っていた。もちろんイノシシの肉を干す作業の合間に片手間で作った感じなので木釘の数は足りない、木釘が無くなったらまた作らなくてはならない。そんな感じだ。
とりあえず、床の分の木釘は足りて、お昼になるころまでに1軒目の床は出来上がる。
そして魔物狩りに行っていた一角と麗美さんも帰ってきたので、俺以外の3人には木釘を作ってもらいつつ、俺はお昼ご飯を作る。
お昼ご飯と言っても、昨日のイノシシ肉の脂身の多い部分を串焼きにするだけの料理だが。
イノシシが獲れるといつもやる4~5食連続の焼肉づくしだ。これをやらないと干し肉にできない部分が腐って無駄になるので、飽きつつも焼いて食べ続ける。
ちなみに朝食も猪肉の焼肉だ。
「毎回、この焼肉期間が辛いんだよな。最初は美味しいんだけど、3食続いた辺りからな」
一角がそんな文句を言いながら焼肉を食べる。
「まあ、拠点に氷室ができたから、塩漬け肉なんて言う保存方法もできるぞ。多めの塩を肉にまぶして冷蔵しておけば1週間以上たっても食べられる。うまみも凝縮されて美味しいらしいぞ」
俺は新しい肉の保存方法を教えてやる。
それと、鈴さんが燻製器を作ってくれたから、イノシシの脂身を燻製にすることもできるようになったしな。
「拠点にイノシシ肉を持って帰れなかったのは残念ね。ベーコンを作って欲しかったし、留守番の子達には食べさせてあげられなかったし色々残念だったわね」
鈴さんがそう言って申し訳なさそうにイノシシ肉を食べる。
まあ、わざわざイノシシ肉を拠点に持ち帰って、臨時拠点の完成を遅らせる余裕もないからな。
そんな感じで、昼食を食べ、午後の作業に移る。
最初の1時間だけ、板を作った時に出た端切れの材木を材料に4人で木釘を作る。
ある程度数が揃ったところで、俺と鈴さんは家の屋根作りを始める。午前中に作った骨組みだけの屋根に木の板を雨漏りしないように重ねながら梁や骨組みに屋根の板を木釘で打ち付ける作業だ。
一応、雨漏り防止のために、屋根は二重につくる。木の屋根に瓦を乗せる感じをイメージしながら。
そんな感じで途中、木釘を補充しながら屋根も完成し、壁を少し作り始めたところで日が暮れてしまう。日が暮れると真っ暗になり作業効率が悪くなるので、作業は終了。さっさと夕食を食べて寝てしまい明日の作業の為に体力を回復する感じだ。
もちろん、日課のお祈りは忘れずにする。
床と屋根まで完成した家は女の子3人に使ってもらう。壁がまだできていないので昨日まで使っていたテントのような布を屋根の梁から吊るして屋内キャンプみたいな微妙な家だが。
【異世界生活 98日~100日】
98日目も昨日と同じように臨時拠点の家づくりを急ぐ。
今日は、1軒目の壁作りから再開、一角が木釘づくりに飽きたと言い出すので、俺と交代し、一角が鈴さんを手伝って壁作り、俺と麗美さんはたき火のまわりで眷属達と一緒に作業する。眷属達は平らな板作り、俺と麗美さんは木釘作りだ。
この日も、途中から一角と麗美さんは家づくりを抜けて魔物狩りに行き、その間、俺と鈴さんは残りの壁を作る作業をする。
屋根の時といっしょで、柱と板にキリで穴を開けて木釘を打ち込む。そんな作業だ。
お昼近くなり、一角と麗美さんが帰ってくるころには1軒目の壁も出来上がり、あとは窓と扉を付けたら完成だ。
ここで、鈴さんが、2軒目の梁と柱に使う木材が足りないことに気づき、早めにお昼ご飯を食べて、俺と一角で長い材木を切り出す作業に行く。
鈴さんと麗美さんは拠点に残って扉と窓をつける作業をするそうだ。
俺と一角はいつものように森を歩いて手ごろそうな倒木を見つけ、倒木を縦に切り出し、長い柱や梁に使う木材が作れるような材木を切り出す。
切り出せたところで、一緒についてきたアオとトラが2人で肩に担いで拠点にその材木を運んでいく。
次の材木が切り出し終わるころに、もう一度アオとトラがやってきて同じように運ぶ。そんな感じでピストン輸送しながら倒木を柱用に長く切り出して眷属達に運ばせる。
2時間ほどで、倒木1本切り出し終わり、拠点に帰る。だいぶ日が暮れてきたが、何とか1軒目が出来上がり、鈴さんと麗美さんは2軒目の基礎作りと柱を立てる作業を始めていた。
眷属達は急ピッチで梁や柱に使う木材を切りだしたり、かんな掛けをしたりしている。
俺と一角も眷属達の作業に加わり、柱を切り出す作業を手伝う。
材木を切り出す作業は変幻自在の武器を使える俺達の方が早くできるしな。自分のイメージした通りのノコギリに変化させられるのは大きい。
そんな感じで、材木から柱や梁を俺と一角が切り出し、それを眷属達がかんながけして平らにし、できた柱や梁を鈴さんと麗美さんが組んでいく。
日が暮れるころには何とか2軒目の基礎と柱が立つくらいまで作業を進めることができた。
次の99日目も同じ作業。
とりあえず、眷属達が板を作る材料の材木が底をつきそうという事で、俺と一角とアオとトラで倒木を探しに行き、今度は縦に切り出し、切り出したものをアオとトラに運ばせる。
倒木を横に切り出すより縦に切り出した方が長い板ができるからな。長い板の方が鈴さんの作業も減るそうだし、今日は縦に切り出し、アオとトラが運べるぐらいの長さと厚さにしてどんどん運ばせる。
倒木1本を切り出したところで、拠点に帰り、一角と麗美さんは今日も魔物狩りに行く。少しでも魔物を減らさないと、ダンジョンの挑戦権の争奪戦が厳しい戦いになりそうだしな。
そこから俺は鈴さんを手伝って2軒目の家づくり。基礎と柱はできたので、屋根の梁と骨組みをくみ上げる作業をする。
もうすでに1軒作っているので作業も早い。
そして、プレハブみたいな小さい家なので、普通の家を作るのと違い意外と早く組みあがるものだ。
お昼が近くなると簗の骨組みも出来上がり、床を張る作業に移る。ただし、途中で木釘が尽きてしまい、作業は中断。俺と鈴さんで急いで木釘を作り、木釘を作っているところで一角と麗美さんが魔物狩りから帰ってくる。
俺は二人と木釘作りを交代し、昼食を作る。
麗美さんと鈴さんが一度拠点に帰った時に、野菜を補充してくれたのでその野菜とイノシシの肉で野菜スープを作ってみんなで食べる。
昼食を食べ終え、午後の作業はとりあえず、俺と一角が木釘作り、鈴さんと麗美さんが2軒目の家の床板を張る作業をする。
このペースなら明日には2軒目の家も完成しそうだな。
一角と俺は2時間ほど木釘作りをし、残った時間で、倒木探し。屋根と壁を完成させるにはもう少し板が必要らしい。
午前中と同じように、俺と一角、アオとトラで倒木の切り出しと運搬をし、倒木を1本切り出し終わったころに日が暮れてしまい、今日の作業も終了になる。
日が暮れたら、さっさと夕食を食べて、さっさと寝る。それがこの世界の効率的な生活方法だ。
ちなみに、作業が忙しすぎて、みんな水浴びをする時間がないので体を拭いて、軽く頭を洗うだけで寝てしまう。明日乃だったら我慢できなそうな生活だ。
というか、俺はこんな生活で早く拠点に帰ってたまには温かい風呂に入りたくなった。女の子達もそんな気分だろう。拠点に帰ったらお風呂を沸かそう。
100日目、臨時拠点作り最終日だ。
今日も特に変わりなく、一角と麗美さんは魔物狩りに行くまでの時間、ひたすら木釘を作る作業。2時間ほど作業したら、日課の魔物狩りだ。
俺と鈴さんは2軒目の屋根の骨組み作りと屋根板を張る作業をする。
昨日、鈴さんと麗美さんが頑張ってくれたようで、屋根の骨組みもほとんどできていて、少し骨組みを作って、あとは屋根の板を張るだけだったのでお昼までには屋根も完成、壁を途中まで作ることができた。
一角と麗美さんが帰ってきて、お昼ご飯。
お昼ご飯を食べた後は俺と麗美さんが木釘作り、鈴さんと一角が壁を張る作業をする。ぶっちゃけ、一角は木釘作りが苦手のようだ。というか飽きやすい性格なので仕方ない。
そんな感じで木釘も一段落したころ、家もだいぶ完成。残りは眷属達の板作りを手伝い、鈴さんと一角は扉と窓作り。
ギリギリになったが、何とか2軒の家を完成することができた。
最終日という事で、少しパーティ気分で夕食を食べる。まあ、夕食はいつものイノシシ肉と野菜の炒め物だけどな。
まあ、みんな無事に臨時拠点を完成させた達成感と開放感で和気あいあいと夕食を食べる。
眷属達もこれでゆっくり過ごせるようになるので、少し嬉しそうな雰囲気がする。
まあ、眷属達はどうせ、拠点に帰ったらまた新しい仕事を探し出して働きまくるんだろうけどな。
「これで、やっと拠点に帰れるな。そろそろ、イノシシ肉多めの野菜炒めには飽きてきたところだしな」
一角がその野菜炒めを食べながら嬉しそうに愚痴を吐く。
「何言ってるの? 一角。明日は石灰石取りに行くよ? 石灰石取りに行って、もっとガラス瓶を増やして保存食をふやすんだからね?」
鈴さんが不満そうにそう言う。
そう言えば俺も忘れていたよ。カヌー作りは延期になったが、石灰石採取は延期になってなかったのか。
「まあ、運よく、この臨時拠点から少し山を登ったところで石灰石が採れるみたいだし、午前中の作業で終わるんじゃないかな?」
麗美さんがそう言って一角を励ます。
「でも、大工道具とか結構荷物があるし、あまり持って帰れないよな?」
一角が不満そうにそう言う。
「また何言ってるの? 一角。私が荷牛の霊獣出すし、その為のリュックサックもみんなから借りてきたし、リュックサックがいっぱいになるくらい石灰石持ち帰るし、その為に何匹でも霊獣だすよ?」
鈴さんは興奮気味にそう言う。彼女はやる気満々のようだ。
まあ、石灰石があると色々便利だしな。
いずみは面倒臭そうに大きくため息を吐く。まあ、ガラス瓶が量産できれば自称グルメの一角にも利はあると思うけどな。
明日の石灰石掘りもあるので、開放感から騒ぎたい気持ちも抑え、早めに就寝。女の子3人は1軒目の家に、俺と眷属4人は2軒目の家で寝る。ウサギの毛皮のクッションもあるし、麗美さんが定期的に作っているミントのような虫よけ効果のあるハーブを煮詰めて作った虫よけ水や乾燥ハーブ、蚊取り線香代わりの除虫菊も拠点から持ってきてくれたので快適に就寝できる。
明日は、午前中、山登りをして石灰石を採取し、午後には久しぶりに拠点に帰るそんな予定だ。
次話に続く。




