第96話 燻製器作りとか調理道具を作ろう
今日も1名様ブックマークありがとうございます。
【異世界生活 70日 6:00】
昨日、イノシシが獲れたり、桜の木が見つかったりして燻製が作れる材料が揃ったせいで、今日は、水道作りをお休みして、燻製器作りをすることになってしまった。しかも、最初の計画では、燻製器を作った残りの青銅ではた織機を改良しようという話だったが、それがバーベキュー用の鉄板(青銅板)と焼肉用の金網(青銅製の網)作りに代わってしまった。
完全に、一角と鈴さんの暴走だ。
そんな感じで、とりあえず、日課の剣道教室と、昆布干しをしてから、今日も一角と麗美さんは南東の島に魔物狩りに。
真望と明日乃は熊の油を作りながら麻糸と麻布作りをし、琉生は畑作業と田んぼ作り、そしてニワトリの世話をして、終わり次第、麻糸作りに加わるらしい。
俺と鈴さんはいつもの鋳型作りだ。午前中鋳型を作って、窯で青銅を溶かせる状態まで準備し、午後は青銅を溶かして、鋳型に流し込む。いつもの作業だ。
それで、薄い青銅版を合計6枚作り直方体の箱型の燻製器を作る。そして余った青銅で焼肉用の網を作る。網と言っても針金で作った網ではなく、四角い穴がいっぱい開いた鉄板といった方がいいような焼肉屋によくある網だ。
そして、バーベキュー用の鉄板(青銅版)はるつぼ1杯分くらいの青銅が必要そうなので、明日以降、というか、水道工事が終わり次第になりそうだ。
俺と鈴さんはいつもの作業をする。薄い青銅版が作れる様な少しくぼませた鋳型。そして、ベルギーワッフルが焼けそうな、四角いでっぱりがいっぱいできた鋳型の二種類をつくり、窯に木炭と溶かす青銅、ダンジョンでドロップした青銅のうさぎの爪や青銅の斧の金属部分を窯に入れたところでお昼ご飯の時間になる。
お昼ご飯を食べて、午後は青銅を溶かす作業。これもいつもと一緒で鈴さんと交代でふいごを動かし続け、窯の炎を1000度以上にして青銅を溶かす作業だ。青銅が溶けたら鋳型に流し込み今日の作業は終了。
ちなみに、俺と鈴さん以外は午後から一つ目のダンジョンに潜り、ダンジョンクリアの副賞、胡椒を取ってきたらしい。ついでに、真望のレベル上げを4階と5階でおこなったそうで真望のレベルが25から26に上がったそうだ。
帰りに麻の茎の回収と新しい麻を腐らせる作業もしてきてくれたらしい。
そのあと、ダンジョンから帰ってきた一角と麗美さんと琉生は竹林に行って竹を切り、水道のパイプ作りをしたそうだ。
夕食前に、今日獲ってきた胡椒と塩、あと残っていた醤油やネギやタマネギなどの香味野菜、香草などで浸けダレを作り、ベーコンを浸し下準備をする。
それと、熊の油の不純物取りも5回終え、熊の油も出来上がったらしい。
明日は石鹸づくりもしないと駄目そうだな。
夕食を食べ、日課のお祈りをし、今日も1日が終わる。
【異世界生活 71日 6:00】
今日も昨日と同じような作業だ。
剣道教室の後、昆布を干し、それぞれ作業に移る。
ただ、今日は、石鹸づくりもしないといけないので、一角と麗美さんは岩場に貝を取りに行く。
真望と明日乃はいつもの麻糸作りと麻布づくり、琉生も農作業をしてから、麻布作りに合流する感じだ。
俺と鈴さんは、昨日鋳型で作った青銅の板をグラインダーで研磨したり、火床、要は金属を再加熱して加工するかまどのようなもので再加熱し曲げたり伸ばしたりして、燻製器を作る。
ついでに作った、焼肉用の網も研磨してそれらしいものに加工する。
あとはダンジョンドロップの青銅の爪を火床で熱して、金床の上で金槌を使って叩き、ひたすら伸ばして針金のようなものも作る。
「鈴さん、針金も作れるようになったんだね」
俺は感心する。
「まあ、金床で叩いて伸ばす感じだから、長い針金は作れないけどね。銅線とか作れたらいいんだけど、銅線は素人にはなかなかハードルが高いかな? 細くて長い金属を作るのは工業レベルの機械がないと無理だよね」
鈴さんが少し残念そうにそう言う。
溶かした銅を糸のように細く延ばして絡まないように維持する。できないことはないが人手や機材を用意するのが大変らしい。
「銅線とかできたら発電とかできるんだけどね。まあ、文明ゼロの状態で銅線とか高望みすぎるかな?」
鈴さんがそう付け加えさらにがっかりする。
「将来的に電気とかも欲しいよね」
俺はそう答えるが、実際どうやってこんな原始時代の様な生活で電気を作るのかも想像ができなかった。
そんな雑談もしつつ、青銅の板を加工して午前中の作業で燻製器が完成した。
燻製器イメージ図
【異世界生活 71日 12:00】
お昼になり、昼食の時間なので出来たての燻製器を持って、みんなの集まるたき火の方に戻る。
他のメンバーもみんな帰ってきていたようだ。
「鈴さん、りゅう君、凄いよ、なんかいい感じの燻製器できてるよ」
明日乃は、鈴さんが燻製器を料理用のかまどに設置しているのを見て興奮する。
「これなら美味しそうなベーコンができそうだな」
一角もそれを見て興奮する
「お昼ご飯を食べ終わったら、さっそく、燻製を作ろう」
俺も少し興奮しがちにそう言う。
いままで、干し肉に向かないということで無理に食べていた肉の脂身の多い部分も燻製にすることで保存食にすることができるようになったのだ。
まあ、干し肉に比べると保存期間は長くはないのだが。
「石鹸も作らないとダメだからね」
真望が少し不機嫌にそう言う。
俺としては燻製器で燻製作りを手伝いたかったのだが、真望の一言で俺と鈴さんは自動的に石鹸づくりをさせられることになってしまった。
「そういえば、一角、貝殻は確保できたのか?」
俺は石鹸と聞いて思い出しそう聞く。
貝殻がないと強アルカリが作れなくて石鹸ができないからな。
「もちろんだ。今日のお昼は貝のバーベキューでパーティだ」
そう言って、土器に大量に入った岩ガキやサザエ、アワビなどを自慢げに披露する一角。
「焼肉用の網もできたから試してみよう」
鈴さんはそう言って、燻製器と一緒に持ってきた、青銅製の焼肉用の網を披露する。
「なんか、調理器具が充実してきていい感じだね」
琉生がそう言って喜び、明日乃も頷く。
そんな感じで、今日のお昼ご飯は一角と麗美さんが採ってきた貝でバーベキューが始まる。もちろん鑑定スキルで食中毒を起こさないかチェックしながらだ。
岩ガキに、サザエにアワビ。直火で焼いて醤油をたらして食べる。
「焼いた貝にはやっぱり醤油だな」
一角が嬉しそうにサザエを頬張る。
「というか、醤油あったのか?」
俺はどこからか出てきた醤油に疑問を持つ。
「もちろん、さっき、ダンジョンで採ってきた。サザエが採れたんだから、やっぱり醤油だろ?」
一角が自慢げに言う。
「こっちの身にもなってよね。一生懸命、麻布を織っていたら、いきなり部屋に入ってきて、『醤油取りに行くぞ』よ? あきれてものも言えないわ」
真望が不機嫌そうに言い、明日乃も呆れ顔で笑う。
そんな感じで俺と鈴さん以外は貝採りから帰ってきた一角に強制的にダンジョン攻略の副賞、調味料を取りに行く作業に付き合わされたらしい。
「まあ、サザエに醤油をひとたらしは本当に美味いからな。まあ、いいんじゃないか?」
俺もそう言って今日に関しては一角の暴走にも寛容になる。
それだけ、貝の醤油焼きは美味かった。
「そういえば、前に干したアワビってどうなった?」
俺は急に思い出して聞いてみる。
「そう言えばそんな事あったな」
一角が興味なさそうにそう言う。
グルメにうるさい一角だが、残念ながら記憶から抜けると興味を失うようだ。
しかも記憶の容量は決して多くない。
「いまも、日陰干ししてあるよ。秘書子さんの話だと、2~3カ月、10週間以上干さないと出来上がらないらしいから、あと1か月以上はかかるかな?」
明日乃がそう言って、俺と明日乃のツリーハウスの土台の下あたりを指さす。
確かに干しかごが吊るしてあるな。
「そんなに時間がかかるのか」
一角はさらに興味を失う。
「アワビの干物は旨味を凝縮させるのにかなり時間がかかるみたいだね。そういうこともあって、中国料理とかだと、特に大きくて立派なアワビの干物は高級品だからね」
明日乃が一角にそう答える。
「アワビの干物ができたら美味しい中華風のスープが作れるようになるぞ」
俺は一角にそう言う。
「そうか、頑張ってくれ」
一角は完全に他人事だ。記憶からこぼれたことには興味が薄れるらしい。
「一角、多分、昆布の事も忘れてるよね。毎日昆布干しを手伝わされたり、毎夜、鍛冶工房に昆布毎日置かれたりしている私の気持ちにもなって欲しいわ」
鈴さんが呆れるようにそう言う。
美味しいタラの鍋を作ろうと昆布だしの取れる乾燥昆布を作り始めた一角だが、20日かかるという事で、一角の少ない記憶容量から抜け出てしまったようだ。最近興味すらない。
「もう、一角ちゃんは昔からそういうところあるよね?」
明日乃はあきれるようにそう言う。
昔から、飽きやすい、というより忘れやすい性格らしい。
「ちなみに昆布はあと3~4日ほど干せばいい出来に仕上がると思われます」
アドバイサー女神様の秘書子さんが突然そう呟く。
【異世界生活 71日 13:00】
豪華な貝料理の昼食が終わり、一角と麗美さんは南東の島へ魔物狩りに。
残りのメンバーで、残った貝殻を良く洗って、たき火で焼いて乾かす。
乾いたら、石や金槌で細かく砕き、一緒に木炭も細かく砕いて、鍛冶工房の窯に入れて 俺と鈴さんでひたすらふいごで空気を送って1000度以上の高温で焼き続ける。
その後はいつもの石鹸づくりの流れだ。焼いた貝殻と、たき火から集めておいた灰から強アルカリを作り、熊の油と反応させて、石鹸を作る。
今日の午後は石鹸づくりで終わってしまったな。
明日乃は午前中に完成した燻製器でさっそく下ごしらえしてあったイノシシ肉を燻製にしてベーコンを作ったらしい。
魔物狩りに行っていた一角と麗美さんも帰ってきて、みんなで夕食。
ニワトリたちから卵を貰いスクランブルエッグに。出来立てのベーコンと一緒に食べる。
「ベーコン、少ない調味料でもよくできてるな」
俺は感心する。
「タマネギと少しの醤油で風味付けしたんだけど、結構いい感じにまとまったね。試しに入れた香草とかもちょうどよかったみたい」
明日乃も嬉しそうにそう答える。
確かに香草や香味野菜のおかげでイノシシの獣臭さが少し抑えられて、いい感じになっている気がする。
「胡椒の味のついた肉が美味い。やっぱり胡椒は偉大だな」
一角も美味しそうに、よく炙った厚切りベーコンを頬張っている。
「卵も久しぶりに食べられてちょっと感動よね」
麗美さんがスクランブルエッグに感動している。
「胡椒もそうだけど、バターとかケチャップ、もっといろいろ調味料が揃えば、もっと美味しい料理が作れるんだけどね」
明日乃が少し残念そうにつぶやく。
「ニワトリさんも、元の世界のニワトリと違って、品種改良されてないから、卵を産む頻度があまり高くないんだよね。スクランブルエッグも少しずつしかなくてごめんなさい」
琉生が少し残念そうにそう言う。
地鶏とか烏骨鶏に近い種類らしい。卵もたまに産む程度。烏骨鶏に近そうということで、琉生としては1週間に1個、卵を産めばいいかというくらいに予想しているそうだ。
そして、数年間は卵を取るよりニワトリを増やす方向で育てる方向になりそうだとのこと。
まあ、そもそも、ニワトリという品種自体、人間が長い歴史と時間をかけて作ったもので天然には存在しないらしい。神様が向こうの世界から持ってきてくれたんだろう。1週間に1回しか卵を産まないニワトリだとしても神様には感謝だ。
「よし、卵はともかく、調味料は毎日取れるんだ。毎日調味料を取りにダンジョンに潜るか」
一角がそう言ってやる気になるが、他のメンバーはあきれ顔だった。
そこまでして美味しい料理を作る気にはならない。それがみんなの意見だろう。
ダンジョンの副賞の調味料も少ししかもらえないしな。
日課のお祈りをして、今日も一日が終わる。
明日は、本格的に水道作りを進め、水道を完成させるのだ。
次話に続く。
【改訂部分】改訂前はクロスボウ作りのついでに適当に作っていた感じですが少し詳しく書き直しました。イメージ図も描いたりw
もとになる文がなかったので、ほぼゼロから書き直した感じです。
水道作りまで書きたかったのですが、長くなり過ぎるかと思ったので次回に回しました。
天然に存在しないニワトリが天然に存在する。よく分からない異世界ですw
 




