第94話 追加のクロスボウを作る。食料が無くなる。そして新しい仲間?
【異世界生活 65日 8:30】
「りゅう君、クロスボウを作り終えたら動物を狩に行かないとまずそうだよ」
明日乃がタラのみりん干しを軽くあぶったものを朝食で出しながら言う。
「どうした? 明日乃? 食料が無くなりそうか?」
俺は気になって聞き返す。
「うーん、すぐにはなくならないけど、干し肉は少ないね。熊肉が2食分、猪肉が1食分、あと魚が3日分くらいあるけどクロスボウ作りって2日くらいかかるでしょ? それが終わったら残り2日で食料が尽きるね」
明日乃が少し心配そうにそう言う。
「また、鳥、獲ってくるにゃん?」
眷属のココが気にしてそう聞いてくる。
「私と麗美姉で魚獲ってきてもいいぞ。それともダンジョンでウサギ肉を確保するか?」
一角も朝ごはんを食べながらそう言う。
一角のヒットポイントも昨日1日寝たら回復したようだ。
ちなみに麗美さんはまだ寝ている。昨日はピザ窯作りで遅かったからな。
「琉生の畑の野菜も結構ギリギリかな? 時間があれば北の平原に野菜を採りに行きたいかも」
琉生が残念そうにそう言う。
「とりあえず、ココとレオに頑張ってもらって1~2食延命しつつ、明後日くらいに一度北の平原に遠征に行くか。ダンジョンのウサギ肉は確保できても1日分、限界もあるし、何より作業が進まない」
俺はそう言い、ココとレオに食料調達をお願いしつつ、急いでクロスボウ作りをすることになった。
「というか、流司。お祈りポイントが9450ポイントってどういうことだ?」
一角が思い出したようにそう言う。
「当たり前だろ。あれだけ耐熱煉瓦作って魔法使いまくってピザ窯作ったらお祈りポイントはなくなる」
俺はそう答える。
やっぱり、こいつ、気づいてなかったのか。条件反射で生きているのか?
「マジか。またお祈りポイント貯めないとダンジョン攻略できないじゃないか」
一角がそう言ってぐったりする。
とりあえず、一角は放って置き、作業を始める。
【異世界生活 65日~66日】
クロスボウ作りは前回と同じような流れ。鈴さんと俺がメインで作業し、1日目の午前中に金属部品の鋳型作り、午後に青銅を溶かして鋳型に流し込み、2日目の金属部品をグラインダーで研磨しつつ、木材部品を加工し、夕方にはさらに2個クロスボウが完成する。
一角と麗美さんは1日目の午前は魚とり、午後は魔物狩りに行く。2日目は午前中魔物狩りに行き、午後はクロスボウ作りや矢を作る作業を手伝ってくれる。
真望と明日乃は麻布作り、琉生は畑作業と田んぼ作りに専念している。ちなみに田んぼは水道ができたら水を入れて、しろ掻き? 水の入った状態で耕し直しをすれば完成するくらいまで出来上がったそうだ。
ココとレオの活躍もあり、晩ご飯はキジ鍋で食糧消費を少し抑えることができた。
それと、最近忘れがちだが、昆布干しと取り込みも毎日やっていて、あと1週間くらい干せば完成だそうだ。
そんな感じで、2日かけてクロスボウも出来上がり、矢の補充も完了。とりあえず、明日は早起きして北の平原に野菜の確保と食料探しに行く。
【異世界生活 67日 5:00】
今日の朝食は昨日レオとココが獲ってきてくれたキジ肉を焼いたものと、熊の干し肉の最後の在庫をお湯で戻して塩スープにしたもの。野菜もあるものを放り込んだ感じだ。野菜も干し肉も残りが殆どない。
「タラの干したのが2日分とイノシシ肉が1食分、一角ちゃん達が海でとってきた魚も3食分くらいかな」
明日乃が保存食の在庫を教えてくれる。
とりあえず、日課の剣道教室をした後、今日は予定通り、北の平原に野菜の確保と食料探しに行く。
メンバーは俺と明日乃、一角と麗美さん、そして琉生の5人で北の平原に向かう。タラの干したものを非常食として持って出発する。
真望はいつもの麻布づくり、鈴さんはアオとトラを連れて水道作りをするらしい。
「琉生、野菜の在庫には余裕ある感じか?」
俺は拠点を出発し歩きながらそう聞く。
「うーん、野菜の在庫は物によってはあるけど、普段食べる野菜炒めとかに使う食材はほぼ在庫切れだね。あと、トウモロコシ畑の様子が見たいかな? もう少ししたら収穫時期だし」
琉生がそう答える。
「今日は、動物狩りをメインにしつつ、トウモロコシ畑のそばに何かないか開拓してみるか?」
俺は琉生に聞く。
「トウモロコシ畑の先、北東に少し行った所に同じように野菜の生えている場所があります」
秘書子さんが俺達にそう教えてくれる。
「トウモロコシ畑の先に野菜があるらしいからそこまで行ってみよう。で、ダメだったら戻ってきて川で魚獲りかな?」
俺はそう提案し、みんなも賛成する。
俺達はとりあえず、いつもの道を通って、南の平地と北の平地を隔てる丘を越える。3時間歩いて9時になる。
クマの出現を期待したが、残念ながらクマはいなかった。
少し休憩してから、丘に沿って東に移動する。丘と森の境を歩きクマやイノシシの出そうなルートを歩いてみるがイノシシはおろか、キジすら出てこなかった。15分ほど歩き、森を北に5分抜けるとそこにトウモロコシ畑が広がる。
「琉生、トウモロコシの成長具合見るんだろ? 俺と一角は少し周りを探索するから明日乃と一緒にゆっくりしてな。麗美さんは、2人の護衛を頼めるかな?」
俺はそう言い、麗美さんに2人を任せ北東にあると言われた畑の方に歩く。
「クマでも出てくれるといいんだけどな」
一角がそう言うが、さすがにクマは御免だ。せめてイノシシくらいにして欲しい。
「カサカサ」
5分ほど歩くと草原に何かいる!?
鳥? いや、ニワトリ?
「ヤバいぞ、ニワトリだ。卵がとれるかもしれない」
俺は姿勢を低くして、俺の横で少し興奮する一角を抑えつつそう呟く。
「だが、捕まえる方法が分からないぞ。どうするんだ? 殺して肉を確保するか?」
一角が俺にそう聞く。確かに捕まえかたが分からない。
「とりあえず、俺が見張っているから、琉生達を呼んできてくれ。琉生はニワトリのプロだからな」
俺は小声で一角にそう答えると、一角は無言でうなずき、忍び足で去っていく。
ニワトリのプロってなんだよ? 俺はそう思い返したが、まあ琉生は元の世界でニワトリを育てていたし間違いではないよな?
ニワトリは地面を掘ってエサを探しているのか逃げる気配はない。
10分ほどすると、真望が他のメンバーを連れて戻ってくる。
「流司お兄ちゃん、ニワトリがいたの?」
琉生が少し興奮気味にそう囁く。
「ああ、だが捕まえ方が分からない。できれば捕まえて繁殖させたいんだよ」
俺は琉生にそう答える。
「そうだね。ニワトリ飼えば卵とれるし、繁殖させれば毎日美味しい鷄肉が食べられるよ」
琉生も乗り気のようだ。
「ニワトリの捕まえ方わかるか?」
俺は琉生に聞いてみる。
「さすがに分からないよ。罠とか、追いかけて捕まえる感じ? というか、私のテイマースキルってやつ使ってみる?」
琉生がそう言う。
「テイマースキル? なんだそれ?」
俺は聞き返す。
「うーん、今、新しくできたスキルみたい? 『飼い慣らす』、動物と意思疎通ができるらしいよ。ただし自分より圧倒的に弱い動物じゃないとダメみたい。あと、『気配を消す』『威圧』っていうスキルも新しくできたよ。全部初級スキルかな?」
琉生がしれっとそう言うが、俺としたら何だそりゃって感じだ。
まあ、マナを600消費するくらいならダメ元で使ってみてもいいかもしれない。
「とりあえず、『飼い慣らす』ってやつを使ってみてくれ」
俺はそう許可を出す。
「了解。使ってみるよ」
琉生がそう言うと、マナを300使って、スキルを習得、さらにマナを300使ってスキルを使ったようだ。テイムとかって土の精霊とか関係なさそうだもんな。もちろん神様も関係ないからお祈りポイントでは使えない感じか?
そして、スキルが発動すると琉生の雰囲気が変わる。何というか穏やかな空気が周りに広がる。
「ニワトリさん、おいで、おいで。私たちと暮らすと安全だよ。美味しいご飯も食べられるよ」
琉生がそう言ってニワトリたちに声をかける。
「ニワトリに話しかけるんかい」
俺は思わず関西弁風に突っ込んでしまう。
「とりあえず、気持ちが伝わればいいんだよ」
琉生はそう言ってニワトリの説得を始める。
なんなんだ? このスキルは?
そして、琉生が声をかけていくうちに確かにニワトリが寄ってくる。
琉生が背負っていた竹かごを地面に置いて、さらに声をかけると、ニワトリたちが1匹、1匹と竹かごに入っていく。マジか!?
「流司お兄ちゃんの竹かごも貸して」
琉生にそう言われて背負っていた竹かごを渡すと、さらにニワトリが入っていく。
その後も明日乃の竹かごも借りて、2匹ずつ、計6匹のニワトリがかごに入る。
とりあえず、着ていたマントで蓋をして逃げないようにする。
琉生が、ニワトリがいた付近で雑草を刈りだし、小さくナイフで切って籠に入れる。エサのようだ。
「意外とうまくいったね」
琉生が作業を終えてそう言って笑う。
「意外過ぎでちょっと引いたぞ」
俺はかなりドン引きした。
いきなり話かける琉生の姿を思い出す俺。
他のみんなも少し呆れた顔をする。
「クマとかイノシシには効かなそうだけど、結構使えそうなスキルじゃないかな?」
明日乃がそう言うが、俺には理解の範疇を越えていて「あ、ああ」とあいまいな返事をすることしかできなかった。
まあ、結果よしという事にしよう。ニワトリのメスが4匹、オスが2匹手に入った。
「これからどうする?」
俺は一応、聞いてみる。
「とりあえず、トウモロコシはもう少し育たないと収穫は無理そうだし、北東にある野菜の生えているところっていうやつを見に行こうよ」
琉生がそう言うので、このまま、秘書子さんにマークしてもらったマップを見ながらその場所をめざす。
とりあえず、ニワトリの入った竹かごは前線で戦う予定のない、明日乃と琉生に背負わせ、俺も1つ背負う。
目標の野菜の生えている場所はいつも行く北の野菜畑と違い、森や丘が近いところにあるようで、いかにもクマやイノシシが出てきそうな山と平地の境界線って感じのところにあった。
「これは出そうね」
明日乃が何か嫌な気配を感じるらしい。ウサギのけもみみをぴんと立てて周りを警戒する。
確かに今までの経験上、出そうな地理をしている。
「流司、いるぞ、丘の中腹、クマだ」
一角がそう叫んで指をさす。
今いる場所の南に位置する丘に、確かにクマがいる。少し遠いな。
「行くか?」
「行こう」
俺がみんなに聞くと、一角がやる気だ。
「琉生と明日乃はニワトリを守ってここで待機、俺と一角と麗美さんで熊を倒すぞ。一角も麗美さんも弓矢の準備を」
俺はみんなに指示を出すと、俺は背負っていた竹かごを下ろし、琉生と明日乃に任せる。一角と麗美さんも身軽になる為に竹かごを地面におろし、武器を構える。
今日は全員、弓かクロスボウを装備している。一角は弓を構え、俺と麗美さんはクロスボウに矢を装填する。
「準備できたわ」
麗美さんがそう言うので、クマの方を見る。まだ、こちらには気づいていないようだ。
「明日乃、他にも獣が出たら結界で琉生とニワトリたちを守ってくれ」
俺はそう言ってクマの方に歩く。
「矢の射程に入ったら一斉に矢を放つ。クマが突進してきたら武器を持ち替えて、不利になったら獣化義装で対応する」
俺はそう指示する。
今日は探索がメインなので防具は着けずに毛皮の服だけだ。ダメージを考えたら獣化義装は必須だろう。
俺達はクマのいる方に歩いていく。クマとの距離は100メートル以上、クロスボウの射程外だ。俺達が確実に矢を当てられるのは4~50メートルってところだろう。
クマに地理的に上をとられるのはなんか嫌なので、クマにまっすぐ向かわず、回り込むように歩き、クマと同じ高さの横の位置をめざす。
もう少しで横に並べそうなところで、俺の目とクマの目が合ってしまう。
「来るわよ、みんな。クロスボウを構えて。頭は骨が固いから狙っちゃダメよ。狙うなら肩や足やお腹、柔らかそうなところを狙って」
麗美さんがそう言い、俺自身もクロスボウを構えクマに照準を合わせる。
麗美さんが言う通り、クマの頭蓋骨は小口径のピストルでも弾くくらい硬いらしいからな。もちろん、弓矢で貫通するわけがない。狙うなら目か鼻だろうけど、弓矢素人の俺にそんな命中率は期待できないしな。
一角が冷静に和弓を構え、弦を引き、クマの右肩に矢を放つ。
俺と麗美さんもクロスボウで矢を放ち、左肩と右腕に矢が刺さる。
「グアァァァ」
クマが痛みで吠える。
一角が矢をもう一度つがえるので、変幻自在の武器は大き目の丸盾にし青銅の剣を構える。突進してきた場合の盾役をする考えだ。
そしてクマが、ゆっくり進んでくるので『鑑定』をする。
レッサーベア―、レベル20。弱い方のクマだな。
麗美さんもクロスボウの2射目を装填し始める。
一角が矢の2射目を放ち、もう一度右肩に刺さる。クマが戸惑っている。
やばい、逃げられるかもしれない。
「クマと距離を詰めるぞ」
俺はそう言うと、走り出す。
麗美さんはクロスボウで矢を1発放ち、武器を変幻自在の武器に持ち替え、薙刀の様な武器にして俺を追いかける。
クマが本気で逃げたら車より早いらしいからな。逃がすわけにはいかない。
「麗美さん、クマが逃げる気配を見せたら魔法で攻撃しちゃって」
俺はそう言ってさらに走り出す。
ぶっちゃけ、今の俺のレベルなら、ステータス効果で弱いクマの方なら対等に戦える。まあ、無傷って訳にはいかないかもしれないが。
クマも俺が一人で飛び掛かってきたので、舐めてかかってきたのか、俺に襲い掛かる。
俺はサイドステップで、クマの一撃を避けて、クマの右に回る。そしてクマの首に横から一撃を加える。
傷が浅い。俺は青銅の剣を引き抜きもう一度首に刺す。
クマは痛みに悶えながら、左手で俺を薙ぎ払う。俺はタイミングを合わせてバックステップで紙一重で避ける。いや、構えた盾に熊の左手がかすり、俺はよろける。
ステータス効果があるとはいえ相手はクマ。全力で殴られたら俺は吹っ飛ばされるだろう。
俺はよろけつつもクマの正面に立たないように時計回りで回りながらクマに攻撃を繰り返す。
そして追いついた麗美さんが、俺の反対、クマの左側から首に薙刀の一突きを浴びせる。
俺に集中し過ぎたクマは、麗美さんの攻撃に慌てる。
そして、麗美さんにクマの意識が移ったところで、俺も熊の右後ろ足を何度も突き刺す。
俺の最初の頸動脈への攻撃も、麗美さんの今の攻撃も致命傷だろう。あとは逃がさないようにして体力を奪う。
クマの後ろ足のモモの部分も美味しく食べられるので、俺は膝から下を中心に何度も攻撃し、クマが膝をつく。
クマは苦し紛れに麗美さんに左手で大振りの一撃、攻撃を仕掛けるが、麗美さんがひらりと躱す。
俺に後ろ足を攻撃されて、クマは機動力が落ち。攻撃範囲も狭まっているのだろう。麗美さんに攻撃をかすらせることもできない。
麗美さんはクマが大振りでバランスを崩したところで左脇の辺りから深々と薙刀の様な武器を刺し、引き抜く。
クマの脇から大量の鮮血が流れ出る。
一角も追いつき、青銅の剣で熊の鼻面を殴り、クマが後ろ足で立ち上がり、鼻を押さえながら悲鳴を上げる。
そこに麗美さんが左わきにもう一撃を食らわせ、さらに鮮血が溢れる。
「ここまでレベルが上がると、クマくらいなら余裕かしらね」
麗美さんがそう言って、最後に深々と左脇への一撃。これは心臓に達しただろう。血が溢れクマが膝を折り、地面に突っ伏す。
まあ。1対1だと勝てるか怪しいが、3対1ならもう負けることはないだろう。
「とりあえず、一角、琉生を呼んできてくれ。クマを解体するぞ」
俺はそう言い、一角に琉生達を迎えに行かせ、麗美さんと二人で熊の解体を始める。とりあえず、心臓をもう一度突いて、血抜きをする。
それと、体中に刺さった矢も抜き回収する。
「クマの解体もだいぶ慣れてきたわね」
麗美さんがそう言って皮を剥いでいく。
一角が呼んできた明日乃と琉生も合流して、さらに手際よく皮を剥いでいく。
一角は明日乃と琉生が待っていたところで、入れ替えでニワトリの入った籠の見張りをしている。
「クマの皮とか、そろそろなめし皮にしないとパリパリになっちゃうよね?」
琉生がそう言いながら皮を剥いでいく。
ダンジョンで拾ったウサギの皮はなぜかなめし皮になっているのだが、さすがに倒した獣の皮はなめし皮にはなっていない。
叩いて柔らかくはしているが、経時と共に動物の皮はタンパク質が固くなってしまうらしい。
「なんか方法を考えないとな。毛皮のなめしまで神様にお願いしていたらお祈りポイント足りなくなりそうだしな」
俺は琉生にそう答える。
「タンニンなめしかな? 比較的この島でもできそうななめし皮の作り方といったら」
一緒に皮を剥いでいた明日乃がそう言って何か考えだす。
生活が落ち着いたらなめし皮作りも始めないとな。
琉生がクマの解体に加わることで圧倒的に作業のスピードが上がる。
こうして、ニワトリに加えて、クマの肉も確保できた。
ニワトリのそばで待っていた一角と合流して、最後の目的地、北東の畑も探索する。
「大根だよ。大根がある。カブもあるよ、すごいよ」
畑について、琉生が嬉しそうに騒ぎ出す。
いつものニンジンやキャベツに加えて、大根やカブもある。あと、イチゴも少しあったので摘んで帰る。今日は大収穫だな。
籠に入らない分は着ていたマントを風呂敷にして抱えて持ち帰る。
ニワトリの入った籠に野菜やクマの肉を入れるわけにはいかないしな。
ニワトリに加え、熊の肉。そして、大根とかぶとニンジン、キャベツにネギやタマネギ、野菜も色々と収穫して荷物がいっぱいになってしまったので拠点に帰る。
琉生はにこにこだ。
途中でお昼ご飯を食べる為に休憩して拠点に帰る。
拠点に着くともう夕方で、琉生は急いで野菜を畑に植え直す。
そしてニワトリはどうするんだ?
「おかえり、みんな」
留守番をしていた真望が迎えてくれ、鈴さんとアオとトラも少し遅れて水道作りを終えて帰ってくる。
「なにそれ?」
真望が竹かごをみてそう聞いてくるのでニワトリと答える。
「もしかして、卵がとれるの?」
真望が少し興奮する。
「生卵は無理だろうけど、火を通した卵料理はできるようになるかな?」
明日乃がそう答え、それを聞いた一角も興奮する。
「琉生は本当によくやったな。獣に襲われないように立派な小屋を作ってやろう」
グルメな一角がやる気になる。
「明日は午前中、鳥小屋づくりをしてから水道作りかな?」
鈴さんが呆れるようにそう言う。
「水道はできそう?」
俺は気になって聞く。
「今日はアオとトラが手伝ってくれたけど、やっぱり人手が必要ね。まだ始まったばかりって感じかな? みんなで一気に終わらせちゃった方がいいかもしれないね」
鈴さんがそう答え、ニワトリを楽しそうに観察している。一角もニワトリに夢中だ。
「私は琉生ちゃんの手伝いしてくるね」
明日乃は野菜の世話の手伝いに向かう。アオとトラも明日乃と一緒に畑に向かう。
「クマ肉も捌かないといけないし、やることいっぱいだな」
俺はそう言って、ため息をつく。
「もちろん、クマの油も作るわよね? 石鹸も作るわよね?」
真望がそう言って仕事を増やす。
俺はさらにため息をつく。
「とりあえず、真望も手伝え。クマ肉をスライスするくらいはできるだろ?」
俺はそう言って真望にも手伝わせる。麗美さんは自発的に手伝ってくれる。
「一角もニワトリで遊んでないで手伝え」
俺は一角に声をかけて、クマ肉の干し肉づくりを手伝わせる。
「ああ、そうしたら、海水を汲んでくる」
そう言って、土器を持って海岸に向かう。ココとレオも手伝うらしく、同じように土器を持って一角についていく。
「やることいっぱいだね」
鈴さんはそう言って笑い、地面に何か描いている。鳥小屋の設計図みたいだな。
日が落ちて、琉生と明日乃とアオとトラが畑作業を終えて帰ってくる。
とりあえず、ニワトリたちは1匹ずつ、竹かごに入れて、野菜くずをエサとしてあげて、明日、鳥小屋ができるまで我慢してもらうことになった。
ニワトリは、はこべらやタンポポといった雑草の葉っぱや野菜くず、あと、タンパク源として魚等をほぐしたものを少しあげれば元気に育つらしいので、干し魚は少しニワトリ用に確保しておくことになった。
トウモロコシが取れるようになったら、少しだけ上げるといいらしい。あげ過ぎるとカロリーオーバーらしいので注意は必要だそうだ。
「水道ができたら、一度、休日を作ろう」
最近、みんな、ちょっと働き過ぎな気がするので休憩する日を作ろうと思う俺だった。
そんな感じで、新しい仲間? ニワトリを迎え、遅くまでかかったが、クマ肉の下ごしらえも終え、動物が狩れた時恒例の、干し肉にならない脂身の多い部分を先に食べてしまう目的の焼肉パーティが始まる。
今回は、琉生の畑で育てていたナスやピーマンが収穫時期になったそうで、焼き野菜に加わりタマネギ、ニンジンと、さらに焼肉っぽくなってきた。しかも今日はイチゴのデザート付きだ。砂糖も出すし、紅茶も飲むことにした。みんな働き過ぎだったので、ちょっとした慰労会って感じだ。
「やっぱり、ダンジョンで焼肉のたれを取っておいて正解だったな」
一角が自慢げにそう言う。
そう言えば南の魔物の島のダンジョンを攻略したときに少し大き目な壺の焼肉のたれを貰ったんだったな。
下ごしらえに使ってかつ、全員で浸けだれにしても余るくらいの焼肉のたれがあったので、みんな美味しく焼肉と焼いた野菜を味わうことができた。
みんなお腹いっぱいになって、少し遅くなったが、お祈りをして就寝する。
明日からは本格的に水道を作らないとな。あとニワトリの小屋もか。
次話に続く。
【改訂部分】改訂前81話の辺りの書き直しです。ニワトリが仲間?として加わりました。留守番のメンバーと探索のメンバーが少し入れ替わったのでセリフや話すキャラの入れ替えが起きてます。
改訂前にはいた眷属のシロが改訂後はまだいないんですよねw そろそろ出さないと。
クマとの闘いも、改訂前は明日乃の結界任せだったものが、改訂後は流司、一角、麗美さんの三強で力押しに変わっています。




