第90話 新たな目標と今後の計画
【異世界生活 61日 16:00】
2つ目のダンジョンを攻略し、拠点に帰ってきた俺達。
全員集まって、タイミングもいいので、休憩しながら今後の事を考える。
明日乃は、ダンジョンで拾ってきたドロップアイテム、タラの切り身とシャケの切り身、今日食べきらない分を塩水に浸けて干す作業をしつつ話を聞いている。
「とりあえず、お祈りポイントは、67600ポイント。今回の魔物狩りはかなりお祈りポイント節約で実行できたから、選択肢は増えたな。ひきつづき南の島の魔物狩りをする、南東の島、一角の変幻自在の武器が眠る、ダンジョンを攻略する、そして、お祈りポイントを貯めて鈴さんの欲しがっている鍛冶道具を手に入れる。この3択かな?」
俺はまず、今後の方向性について聞いてみる。
「それと、明日は作業を軽めにして休日にしようと思う。琉生が獣化義装の副作用で、体調が悪そうだしな」
俺はそう付け足す。
「というか、琉生ちゃん、自分の部屋で休んでいていいよ?」
明日乃が慌ててそう言う。
「うーん、体に変な痛みがあるけど、傷があるわけでもないし、動けなくなるほど痛いわけじゃないし、私も話し合いに参加するよ」
琉生がそう言って、みんなに心配かけないように笑う。
「琉生、無理はするなよ。それじゃあ、明後日以降の行動をどうするか考えたい。さっきの三択、どれを選ぶかって感じだな」
俺は気を取り直しみんなに聞く。
「私はもちろん、鍛冶道具、残りの金床を貰いたいわ。青銅器をすっ飛ばして鋼の武器が作りたいし、川で砂鉄を集めて鋼を錬成、日本刀みたいな武器が作りたいし」
鈴さんがそう言う。
「そうだな。青銅の武器や防具は、もう、ダンジョンで拾えるようになってきたし、青銅では生活品を作ってもらって、武器の方はその先の先を行かないと、鈴さんの鍛冶が活きてこないし」
俺は自分の着ている防具を見渡してから、そう言って、鈴さんの意見にのる。
「その場合は、鍛冶道具を貰った代償のお祈りポイントを回復するまでは本格的な魔物狩りはできなくなるのよね。みんなで水道作りをして、時間をつぶし、お祈りポイントを回復する感じかしら?」
麗美さんがそう付け足す。
「水道作りは私も優先的にして欲しいかな」
明日乃は水道目的で鈴さんの案に乗る。水浴び大好きだからな。
「私はどれでもいいよ。時間があるなら、田んぼ作りをするし、魔物狩りするにしても間に休みをもらって農作業と田んぼ作りするし。ただ、南の魔物の島の探索はして欲しいかな? お米があるらしいから、稲を回収してこの島の田んぼに移植したいし。ああ、そうなると、水道がないと困るから、私も水道を作り優先って方向になるかな?」
琉生は田んぼの水を確保したいので水道作り、鍛冶の道具を貰う案に賛成になった。
「私は、南東の魔物の島、3つ目のダンジョン攻略を希望だ。少しでも早く自分専用の変幻自在の武器が欲しいしな」
一角は予想通りの意見だ。
「私はどの案でもいいけど、何をするにしても、1回、南東の島を偵察してからの方がいいかな? そうすれば、前みたいに、私と一角ちゃんだけで橋の上から魔物を減らす作業みたいなのもできるし」
麗美さんがそう言う。
「それもいいな」
一角が麗美さんの意見に乗る。
「私は鍛冶道具に交換かな? 金床があればもっと精密な金属加工品ができるらしいし、もっと細かい目の布が織れるはた織り機に進化させる為にも必要らしいからね」
真望ははた織り機の進化の為に鍛冶道具の交換を希望だ。
「全体的に鍛冶道具交換と水道作りの希望が多そうだな。それと、麗美さんの意見も気になるな。確かに一度新しい魔物の島の下見をしに行くのはいいかもしれない」
俺はそうまとめる。
「何をするにしても、下見した後は、私は自分の変幻自在の武器を手に入れやすくする為にも橋の上から魔物狩りを続けるからな」
一角がそう言う。
「一人じゃ、危険だから、私も付き合ってあげるわ」
麗美さんがそう言う。
「お祈りポイントは使うなよ、2人とも。それならいいけどな」
俺はそう言う。
「私も手伝おうか?」
明日乃がそう言う。
「いや、明日乃は参加しない方がいいだろう。明日乃の結界や回復魔法があると、一角が調子に乗りそうだしな」
俺はそう言う。一角が白い橋から飛び出して魔物を倒そうとする風景が容易に想像できる。
「橋の上からの魔物狩りだと、私も弓矢が使えるといいんだけどね。私は弓に関しては素人だし、困ったわね」
麗美さんがそう言って悩む。
確かに橋から距離をとられたら、魔法以外攻撃手段がなくなるもんな。
「クロスボウとかあればいいんだけどな。あれなら素人でも撃てる気がする」
一角がそう言う。
現実の話なのかゲームの中の話なのかよく分からないが。
「クロスボウはいいね。作れるんだったら私も欲しいかも。結界張りながらでも攻撃に参加できるし」
明日乃も話に乗ってくる。
「うーん、設計図とか作り方が分かれば作れるんだろうけど、ゼロから作るのは専門じゃないから難しいわね」
鈴さんがそう言う。
「作り方なら私が知っています。アスノ様に体を借りて、粘土板にでも設計図を書きましょうか?」
アドバイザー女神様の秘書子さんがみんなにそう言う。
ん?明日乃の体を借りる?
「秘書子さん、そんなこともできるの?」
俺は慌てて聞く。
「降臨といって、信仰心が高い人に神や女神が乗り移ることは可能です。それによって、身振り手振りが必要な指導や、代行して作業するなども可能になります。ただし、お祈りポイントが必要で、私の場合、10分200ポイントです」
秘書子さんがしれっと言う。
「それって、明日乃の体に害はないのか? それと、私が代わりにするとかもダメなのか?」
一角が明日乃を心配してそう聞く。
「アスノ様に害はありません。一時的に体を共有するだけですので。それと、イズミ様では信仰心が足りない為、降臨は難しいです。不可能ではないですが、お祈りポイントがかかり過ぎて実用的ではありません」
秘書子さんが一角にそう答える。
「体に無害なら、秘書子さんに教えてもらいましょ? 私もクロスボウが欲しいし」
明日乃が乗り気だ。
今まで、戦闘に参加できないのを悩んでいたのかもしれないな。
とりあえず、鋳型を作る為の粘土や砂もあるので粘土板を作ってから、秘書子さんに明日乃の体に20分間だけ降臨してもらうことにする。
明日乃の体が光出し、目を開けると、いつもの雰囲気と違う明日乃、体が光っているし、目の色も金色だ。
「それでは時間もないので、手早く済ませましょう」
そう言って、用意した粘土板に竹の棒と麗美さんが用意した定規のようなものですらすらと設計図を書いていく。
鈴さんに解説をしながら。
そして出来上がる粘土板。
壊れないように一応、麗美さんに乾燥してもらう。お祈りポイントが550ポイントへってしまった。
ただ、麗美さんの魔法のお祈りポイント消費が半分になったのはありがたいな。
「うん、これなら、青銅の金属を溶かして鋳型で部品を作ればなんとか作れそうね」
鈴さんが粘土板を見てそう言う。
「今の原料と技術で作れるレベルで設計図を書きましたから」
秘書子さんが少しどや顔でそう言う。無感情な声だが。
竹を利用したり、ネジを使わない、ネジの代わりに釘で作るなど色々工夫をしたりしてくれたようだ。
「そろそろ、時間が切れますので、体をアスノ様にお返しします」
そう言って、秘書子さんが入った明日乃が目を瞑ると光が薄れ、明日乃がふらつく。
俺は慌てて、明日乃を抱き寄せ、支える。
「大丈夫か?」
俺は心配になって聞く。
「うん、大丈夫。秘書子さんから体を返してもらうときに、少し体の自由が効かなかっただけだから」
明日乃はそう言って、自分の足で立ち、たき火のまわりに座り直す。
体を動かす主導権の入れ替えで少しふらついただけらしい。疲労等はないそうだ。
とりあえず、みんなの意見を聞きながら、予定を色々決めていく。
とりあえず、明日はゆっくり休み琉生の回復を待ちつつ、作業をし、明後日は一度、南東の魔物の島を探索に行く。
その後は、
俺:鈴さんの手伝い、クロスボウ作りと水道作り
明日乃:真望の手伝い、麻糸作り、麻布作り
一角:基本午前中は南東の島の橋で魔物狩り。午後は鈴さんの手伝い
麗美さん:基本午前中は南東の島の橋で魔物狩り。午後は鈴さんの手伝い
真望:麻糸作り、麻布作り
鈴さん:クロスボウ作り、水道作り、時間ができたら糸車の2台目を作る。鍛冶道具がそろったら鋼の鍛錬を始める。
琉生:基本午前中は農作業、田んぼを作る。暇な時は鈴さんの手伝いや真望の手伝い
眷属の4人には消耗品の採取や簡単な作業の手伝い、塩作りや木炭作りを手伝ってもらう。
「ああ、それと、一角ちゃん。こんぶの事ちゃんと世話しなさいよね。今日なんか、私と鈴さんで全部干すことになったんだからね。流司も忘れていたでしょ?」
真望がそう言って怒る。
うん、確かに忘れていた。
一角もすっかり忘れていたと顔に書いてあるような表情で平謝りをする。
昆布を干す作業と回収する作業も忘れないようにしないとな。
食料が足りなくなったり野菜が足りなくなったりしたら適宜探索に行く感じだ。
まあ、今後のスケジュールも鈴さんの鍛冶中心に回りそうだな。
水道が出来上がるまではこのスケジュールで進み、水道ができ次第、南東の魔物の島や、南の魔物の島の魔物狩りを本格的に再開する感じだ。
その後、琉生を部屋で休ませて、軽い作業をする。俺は鈴さんを手伝って、水浴び小屋の作成を手伝い、一角と麗美さんは竹を取りに行き、真望と明日乃は麻糸作りと麻布作り。
夕食には今日手に入れたタラの切り身を湯豆腐風の鍋にして食べる。
麗美さんに少し昆布を乾燥してもらい、昆布だしの鍋にタラの切り身と豆腐代わりに野菜を入れて、たれは鰹節に醤油と刻みネギを入れたものを作りそれをつけて食べる感じだ。
「うーん、これは美味いな。これぞ和食って感じだ。醤油と鰹節が美味しすぎて、ご飯も食べたくなるな」
自称グルメな一角が食レポを始める。
ご飯はないと何度言わせれば。
琉生も起きてきて元気そうにタラのお鍋をつついている。
「私は豆腐が食べたくなっちゃったかな」
明日乃が珍しくそんな言葉をもらす。
「明日乃、元の世界に帰りたくなったか?」
俺は心配になって聞く。
「違うよ、りゅう君。そういうのじゃなくて、ただ食べたいなって思っただけ」
明日乃が慌てて否定する。
元の世界には帰れないことを理解していると主張するように。
「大豆がとれる島もあるらしいから、大豆が収穫できたら、豆腐も味噌も作ろうね」
琉生がそう言って笑う。
「まあ、ダンジョンの副賞のおかげで調味料も少しなら手に入るようになったし、たまの贅沢を今日は楽しもう」
一角がそう言って、タラの鍋をつつき、おいしそうに食べる。
一角の順応性の高さには助けられる部分もあるな。
俺はそう思いながら笑い、みんなも笑うのだった。
次話に続く。
【改訂部分】改訂前76話の書き直しといった感じです。
眷属4人が頑張っていたり、作業が前後していて、機織り機が完成している、糸車も完成している、鍛冶小屋も完成しているなど要らない部分が多かったのでも字数がだいぶ減りました。
ココを召喚する話も済んでいるのでも字数が減ってます。今日は文字数少なめです。




