第89話 魔物の島のダンジョンを攻略。拠点に帰還する
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【異世界生活 61日 12:00】
魔物の島にあるダンジョンの最終ボス、5階のレベル28のリザードマン型ウッドゴーレムを倒し、急いでドロップアイテムや宝箱を回収した俺達。
「それじゃあ、メインディッシュといきますか?」
麗美さんが嬉しそうに言い、ボス部屋の奥にある部屋をめざす。
ボス部屋の奥にある扉を開けると少し小さい部屋があり、その中央には石の台座があり、その上に、見慣れた金属製の筒が安置されている。
『水の精霊の迷宮を攻略した者への褒美として水の精霊の加護を宿した武器を与える』
石の台座にはそんな文言の書いてあるプレートが張ってある。一つ目のダンジョンと全く一緒だな。
ただし、この台座にはちゃんと変幻自在の武器が安置されている。
「本当はこんな感じで手に入れる物だったのね」
麗美さんがそう言って、俺が貸していた変幻自在の武器を俺に返してくれてから、ゆっくり石の台座の上にある筒を手に取る。
俺の変幻自在の武器といっても、実際は明日乃専用の武器を借りているだけだけどな。
「明日乃の光の精霊の剣と違って、少し青いんだね」
俺は麗美さんが手に取った少し青みのかかった金属の筒を見ながらそう言う。
そして麗美さんは慣れた感じで、その青い筒を日本刀のような反った片刃の件にする。
「なんかしっくりくる気がするわ」
そう言って、麗美さんはその剣を軽く2~3回振る。
「おう、水の精霊のダンジョンも攻略したのか。早かったな。そしておめでとう」
そう言っていつもの日本人顔の半透明のおっさんが光りながら現れる。
「二つ目のダンジョンは難しくし過ぎたか? 結構苦戦したみたいだが」
神様が申し訳なさそうにそう言う。
「レベル21以上の敵は全て魔法が使えるとか、マゾゲーすぎるだろ?」
一角が神様を責めるようにそう言う。
「すまんな、この世界は一応、魔物にも生きる権利があるってことで、敵もお前たちと同じようよな条件で生きているんだ」
申し訳なさそうに神様がそう言う。
「というか、神様がダンジョンや魔物を作る理由が分からないんだけど? しかも魔物もダンジョンでレベルアップできるってどういう事かしら?」
麗美さんが直球で俺達が聞きたかったことを聞く。
「んー、まー、そうだな。前に秘書子さんが説明した通りだ。俺達神様の原動力となる信仰心、要はお前たちの願いの力なんだが、お前たちのレベルが上がるとその信仰心の量も増えるんだよ。だけど、倒す魔物がいないとお前たちのレベル上がらないし、魔物が弱いとレベルの上がりも悪いだろ? だから、魔物もレベルが上がるようにダンジョンを準備したって意味もある」
神様が顔の表情だけ申し訳なさそうにしてそう説明する。
「それに、秘書子さんの上司の神様、要はお前たちが元居た世界の神様が、異世界には魔物がいた方がいいっていうルールを作っちゃったから、俺の力じゃ魔物をどうにもできないんだよ。中間管理職の辛さってやつ? で、魔物がいるなら有効活用しようって、秘書子さんが言いだしてこうなったと」
神様は秘書子さんにも頭が上がらないらしい。部下なのか上司なのかよくわからないな。
この世界の神様の秘書っていうより、俺達のいた世界の神様の秘書ってことか?
この世界の神様は部長や課長で、秘書子さんは社長の秘書で社長から秘書を借りているみたいな感じなのかもしれないな。
俺は神様の口調からそんなことを想像する。
「せめて、武器はどうにかして欲しかったわ」
麗美さんがさらに神様に不満を言う。
「まあ、魔物も必死に生きてるし、無抵抗でやられっぱなしもちょっと神様的に可哀想だろ?」
神様がそう言ってひたすら麗美さんに謝りみんなにも謝る。
言っている意味が分からないが。
「とりあえず、魔物も必死で生き延びようと死ぬ気で襲ってくるから、お前たちも殺されないように必死で抵抗しろ。お祈りポイントの魔法で少し有利に戦えるようにしてあるし、無茶しなければ、そうそう死ぬことはないし、死なれると俺が困るしな」
そう言って、下手なウインクをするおっさん。
「とりあえず、神様や秘書子さんの上司の神様がこの世界のルールを決めちゃっているからどうにもならないって事でいいのかしら?」
麗美さんが今までの話を聞いてそう質問する。
「ああ、まあ、そんな感じだ。俺としてはお前たちにできるだけ協力するが、俺の力は世界を維持したり、成長させたりすることで精一杯であまり助けになるようなことはできない。そしてルール変更もあまりできない。お前達には今あるものと知恵を絞って何とか生き残り、魔物の数を減らし、そして自分自身を成長させて欲しい。勝手な話で悪いが頼むな」
神様がそう言って俺達に手を合わせて拝む。
神様に拝まれても困るんだけどな。
「それじゃあ、次は、この島の魔物を減らしつつ、このダンジョンで装備を固めて、南東にある3つめのダンジョンの攻略が次の目標だ。風の精霊の管理するダンジョンだから、イズミの武器が手に入るぞ」
神様がそう言って今後の方針を教えてくれる。
「ああ、それと、レイミ、お前の場合、持っている武器の正統な所有者だから、その武器で魔法を使うと精霊の協力でお祈りポイントが半分で済むようになるからお得だぞ、試してみろ」
神様がそう付け足す。
「マジか? そんなお得なら私専用の武器もすぐに取りに行かないと」
一角がそう言い、神様がその反応に満足そうな顔をする。
「というか、私達が一つ目のダンジョンクリアしたときに、そんな話は聞きませんでしたけど?」
明日乃が少し不満そうに神様に聞く。
「ちなみに、アスノも光の魔法に関してはレイミと同じように必要なお祈りポイントは減る。ただ、光属性の魔法って使える魔法ないだろ? しかも明日乃が使う魔法はほとんど聖属性で俺が直接力を貸している感じだ。だから精霊の剣の正統な所有者になっても、消費するお祈りポイントは減らない。だから、あえて言わなかったんだよ」
神様が申し訳なさそうにそう言う。
言われてみると、明日乃が使う、補助魔法も結界魔法も回復魔法も聖魔法で光属性の魔法じゃないな。
俺の使っている変幻自在の武器を明日乃に返そうと思ったが、なんかこのタイミングで返すのも可哀想な気分になった。
「おっと、そろそろ、退散しないと、また力の無駄使いになる。それじゃあな、みんな。毎日のお祈りも楽しみにしてるぞ」
神様はそう言うと、背中を向けさっさと消えていく。
「ああ、それと、レイミの眷属? ちゃんとその剣とつなげておけよ。アスノの武器は4体眷属が繋がっていて働かせすぎだしな」
神様が急に現れて、言い残したことを追加してもう一度消える。
忙しい神様だな。
「私の聖魔法にかかるお祈りポイントが減らせないのは残念だね」
明日乃がそう言ってがっかりする。
「まあ、そのうち、光属性の魔法にも攻撃魔法とか追加されるかもしれないしな。それを期待するしかない」
俺は明日乃を慰めるようにそう言う。
「まあ、とりあえず、調味料を貰って、帰りましょ? 拠点に戻ってココとこの剣をつなげないといけないみたいだしね」
麗美さんがそう言う。
「なんか、今の話だと、私の眷属を召喚したら、危なかったっぽいよね? 剣の働かせ過ぎって。そして、もう少し我慢した方がいいかな?」
明日乃が不安そうにそう言う。
「そうだな。一角の専用武器が手に入ってアオとつなげてからくらいの方がいいかもな」
俺はそう答える。秘書子さんめ、何も聞かないと本当に何も教えてくれないな。
眷属が増えたことで夜の見張りをやってくれることでみんなも熟睡できるようになったし、朝早くから作業できるようになったし、薪とか、必要なものをこっそり拾ってきてくれているから助かっているんだよな。作業の手伝いも簡単なものならしてくれるし。
できれば7人分の眷属を呼んでしまってもいいんだが、剣にも限界がありそうだし慎重に決めた方がよさそうだな。
「私の剣で、トラちゃんあたりを引き取ってもいいけどね?」
麗美さんがそう言う。
「また、余計な事をしてトラブルが起きても嫌だし、眷属4人でも生活がだいぶ安定しているから、明日乃が言う通り、一角の専用武器が手に入ってからでいいんじゃないか?」
俺はそう答え、みんなも頷く。
「眷属の手が肉球じゃなかったらもう少し色々できるんだけどね」
琉生がそう言って残念そうな顔をする。
麻糸を紡いだり麻布を織ったりする細かい作業はさすがにレオやトラにはできないからな。肉球は見かけ通り不器用だった。
「まあ、肉球、可愛いし、いいんじゃない?」
麗美さんはあまり気にしていないらしい。
とりあえず、麗美さん専用の変幻自在の武器を取った後、台座はいつもの自動販売機の様な台座に変化していた。
四角い石、ボタンみたいなものを押すと、台座の上に超微量の入った小瓶が現れるのだ。
「今日はどうする?」
一角が明日乃に聞く。
「1つ目のダンジョンを周回して、タラをお鍋にする為の調味料は一通り揃っているからね。何でもいいよ?」
明日乃がそう言う。
「じゃあ、焼肉のたれだな。最近もらってなかったし、肉が手に入った時ないと悲しくなりそうだしな」
一角はそう言い、迷うことなく焼肉のたれのボタンを押す。
そして、台座が光り、台座の上に小さな陶器の瓶が現れる。
「気持ち、いつものより大きい?」
明日乃がそう言う。
「言われてみると大きいな。ダンジョンの難易度が上がると調味料の量も増えるって、秘書子さんも言ってたもんな」
俺は明日乃にそう答える。
たぶん、いつもの倍ぐらい、2食分くらいの焼肉のたれが入っていそうな大きさだ。
「これは、今日参加していない真望や鈴さんのレベルアップの為にももう一度来ないとダメだな」
一角がそう言ってやる気になる。
「まあ、真望や鈴さんのサイズに合った青銅の鎧も欲しいしな」
俺はそう答える。
調味料はともかく、青銅の防具は魅力的だし、安全を考えるなら全員分揃えておきたい。
「じゃあ、帰ろう。荷物もいっぱいだし、荷物を抱えてこれ以上の魔物狩りは難しそうだしな」
俺はそう言って、魔物狩りとダンジョン探索の終了を宣言する。
俺達はとりあえず、持ち帰るドロップアイテムを地上階のエントランスまで運ぶ。
2往復しないと運べないような量になってしまった。青銅の防具とか重いしな。
「結構な荷物だな。どうする? さらに必要なものだけ仕分けして持ち帰るか?」
俺はみんなに聞く。
「私が霊獣とかいうやつを出すよ。トラさん? 2匹ぐらい出して背中に背負わせれば何とか持ち帰れるんじゃないかな?」
琉生がそう提案する。
「ちなみに、霊獣はダンジョン内では出すことができません。ダンジョンの外で召喚することをおすすめします」
秘書子さんがそう教えてくれる。
俺が聞かないと教えてくれないって心の中で思ったのが伝わっちゃったのかな?
とりあえず、ダンジョンの出口から外の様子を伺い、魔物がいないことを確認し、全員で荷物を持って外に出る。
「じゃあ、霊獣を召喚するよ」
琉生がそう言って両手を自分の前に腰の前あたりで伸ばすとマナを込める。
そして、目の前に、土色の光のようなものでできた虎が現れる。
そして、青銅の防具など重そうなものを荒縄で縛り虎の背中に乗せる。
「もう1匹必要だね」
琉生はそう言ってもう1体霊獣を出し、同じように荷物を背中に乗せる。
「それじゃあ、残りの荷物を持ってくるから明日乃と麗美さんと琉生は見張りを。俺と一角で荷物を運んでくる」
俺はそう言い、一角を連れてダンジョンの中と外を往復する。
「さすがに脱いだ皮鎧までは持ち帰れないか」
俺はそう言って持ちきれない防具をダンジョンに放り込む。
「まあ、皮鎧は必要になったら最初のダンジョンに潜ればいいしな。調味料探しをするときにいくらでも手に入るし捨てていっていいだろ?」
一角がそう言って持ちきれない皮の防具をダンジョンに放り込んでいく。
こうすれば、魔物も再利用できないし、明日の朝になれば精霊がゴミとして分解、再利用してくれる。
【異世界生活 61日 12:00】
「おい、どうする? ワーフロッグが出てきたぞ。ドロップアイテムをダンジョンから運び出すのを待っていたみたいだな」
一角がそう言って、ダンジョンの外、向かいの森から出てくる人影を嫌そうな顔で指差す。
俺たちは、2つ目のダンジョンを攻略し、そのまま、拠点まで帰る予定だったが、簡単には帰してくれなそうだ。
俺も外を見ると30体近いワーフロッグが待ち構えている。
「ダンジョンで消耗したところを狙ってとどめを刺すつもりかしらね?」
麗美さんが外を少し覗いてからしらけた顔でそう言う。
「まあ、実際、消耗しちゃっているもんね。どうする? りゅう君?」
明日乃がそう聞いてくる。
「魔法使っていいか? ダンジョンの中は安全だから安全地帯から攻撃魔法を撃ち込みまくって全滅させる」
一角が魔法を撃ちたくてしかたないらしい。
「ダメに決まってるだろ? せっかくお祈りポイント節約したのに無駄になる。それに、霊獣はダンジョンに入れないから、ドロップアイテム全部持っていかれるぞ」
俺は呆れ顔でそう答える。
「それは確かに困るな」
一角がそう言って真剣に悩み出す。
「というか、一角、弓矢持ってきているんだから弓矢使え」
俺は、一角が背負っているデカい弓と矢筒を見て思い出したように言う。
「そういわれればそうだ。ダンジョンでは弓矢が役に立たないから、使っていなかったな。私自身、弓道部だったことを忘れそうだったよ」
そう言って一角は弓を下ろすと矢をつがえ構える。
実際、ダンジョンで弓矢を使ってもウッドゴーレムには効かないし、額の核を的確に打ちぬける程、一角の弓矢は精密にはできていない。竹で素人が作った和弓もどきでしかないしな。
「矢は、15本しかないからな。それで、カエル達が逃げなかったらどうする?」
一角は弓矢を構えながら俺に聞く。
「剣で戦うしかないだろうな。魔法はどっちにしろ使わせないからな。とりあえず、15体倒せ」
俺はそう言い返す。
「必中必殺命令かよ。厳しいな」
一角がそう言い笑うと、矢を放ち、ワーフロッグの眉間を貫く。
そして矢継ぎ早に第二射。同じように別のワーフロッグの眉間に刺さる。
「なんだかんだ言って全弾命中じゃないか」
俺は感心する。矢を15発放ち、全部当てた。残念ながら2体は致命傷を外したようだが、13体倒せば上出来だ。絶命しなかった2体も地面にのたうち回って戦闘不能だしな。
「残り15体。倒せない数ではないな」
俺はそう言って敵の残りの数を確認する。
「こいつら倒さないと安全に帰れそうにないしね」
麗美さんが面倒くさそうな顔でそう言う。
「こいつらって、一応、初級魔法は使えるんだよな?」
一角がそう言う。
「敵も経験値が減っちゃうから、よっぽどのことがないからマナをMPとして使う原初魔法は使ってこないらしいけど、絶対じゃないし、気を付けてね」
明日乃がそう言い、みんなも慎重になる。
「しかも、一角ちゃんの弓矢を恐れて、少し距離置かれちゃったしね。相手が魔法を使うならちょうどよい距離をとられちゃっているよね」
麗美さんがダンジョンの外を覗き、そう言う。
「明日乃、敵が魔法を使ってきそうだったら結界魔法を使って霊獣と荷物を守れ。敵が近寄ってきてもそうだ。霊獣は攻撃力ないらしいからな」
俺はそう言い、明日乃が頷く。
秘書子さんの話だと霊獣は普通の動物と変わらない、レベル10のオオカミと同じくらいの強さしかないそうだ。
「とりあえず、俺と一角と麗美さんで斬り込む。琉生は明日乃と荷物を守れ。一角と麗美さんはいつでも獣化義装をまとえるようにな。魔法を使ってくるかもしれないから」
俺はそう指示し、みんなが頷く。
「いくぞ」
俺は荷物を足元に置き、そう声をかけ走り出す。
一角と麗美さんも荷物を置くと俺の後に続き走り出す。
「グアッ」
「ゲコッ」
ワーフロッグたちが騒ぎ出し、俺達に一斉に襲い掛かる。
魔法を使う気はないようだ。ありがたいな。
「お客さんが来たぞ。盛大にもてなしてやろう」
俺はそう言い、変幻自在の武器をサーベルのような少し反った片刃の剣にする。盾を持っているので、槍だと不便だからな。
襲ってくるワーフロッグの槍を叩き折り、返し刀で首を横に薙ぐ。
麗美さんは自分の変幻自在の武器を今度は薙刀のように変化させ、それを振り回す。
攻撃範囲内のワーフロッグたちがどんどん斬り倒されていく。
「いいな、やっぱり。自分用の変幻自在の武器が早く欲しくなった」
一角がそう言ってワーフロッグたちに青銅の剣で斬りかかり、時々地面に倒れているワーフロッグの死骸から矢を抜き取り回収していく。
「ああ、そうだ、麗美さん、1回だけ魔法使ってみる? 神様の話だと、お祈りポイント半分で済むようになったんでしょ?」
俺はワーフロッグを斬り捨てながらそう聞いてみる。
「そうね、1発だけ試してみようかしら。水の精霊よ神の力をお借りし、魔法の力とせよ『氷矢の連撃』!」
麗美さんがそう言い、薙刀の柄を魔法の杖のように構え、魔法を詠唱する。
現れた5本の氷の矢は正確に5体のワーフロッグの喉に刺さり致命傷を与える。
神様が言った通り、普段ならお祈りポイントが1000ポイント必要な魔法を使っても、実際に減ったお祈りポイントは500ポイントだった。
「なんか、この武器があると、気持ち、魔法が手足のように使えていいわね。そして神様の言う通り消費お祈りポイントが半分になったわ」
麗美さんが嬉しそうにそう言う。
「いいな。わたしも使いたいぞ、魔法」
一角が麗美さんの魔法を見て自分もと使いたがる。
そして、襲ってくるワーフロッグを斬り捨てる。
「一角も早く自分の変幻自在の武器を手に入れろ。そうしたら、魔法を使う機会がふえるかもしれないな」
俺はそう言って冷やかす。
「じゃあ、明日から次の島のダンジョンに挑戦するぞ」
一角はそう言って、やる気満々でワーフロッグを青銅の剣で斬り払う。
「琉生の体調が回復するまで無理だ。それに、そろそろ、鈴さんの鍛冶道具ももらわないと、鈴さんがしょげそうだしな」
俺はそう言って一角の出過ぎたやる気を抑える。
そして、ワーフロッグを袈裟切り。防具を着ている魔物がまだ、まばらなのはありがたいな。
「やることいっぱいで困るわね」
麗美さんが笑いながらそう言い、薙刀風の武器でワーフロッグたちを切り捨てていく。
「ゲッ!」
「ゲコッ」
ワーフロッグたちがお互いの顔を見合い、後退りしていく。逃げる気のようだ。
残り数匹、形勢逆転だな。
「判断が遅かったな」
一角がそう言って、武器を弓に持ち替え、途中で回収した矢をつがえ、逃げるワーフロッグに放つ。
俺も逃げ遅れたワーフロッグを後ろから袈裟切り。麗美さんも1体倒し、2匹ほど逃してしまったがほぼ全滅させる。
「他に敵はいなそうだな」
俺はそう言って、周りを警戒するが他の魔物はいなそうだ。
そして、明日乃が神様にお祈りして魔物の死骸をマナに還し、経験値化する。
魔物の死骸が光になって消えていき、防具や槍だけが残っていく。
「結局ほとんど倒しちゃったね」
琉生が周りを見回してそう言う。
明日乃と琉生が俺達の置いていった荷物を持ってきてくれたので背負い直す。
「明日乃、武器や防具も重量オーバーでもう拾えないから神様に還してしまってくれ」
俺はそう言う。
「ちょっと待った、矢だけ回収させてくれ」
一角が慌てて矢を回収して回る
「ついでだから、持てるだけ青銅の槍の穂先も回収するか」
俺はそう言って、ワーフロッグの使っていた粗悪な青銅の槍の木の柄から、穂先だけ取り、ヤシの木の葉っぱでできたリュックサックに詰めていく。
一角が矢を回収し終わったところで、明日乃に追加でお祈りしてもらう。
そして、地面に残った防具や槍も光になって消えていく。魔物達に再利用されると面倒だからな。
「とりあえず、帰りましょ? また襲われたらいやだし」
麗美さんがそう言って、白い橋の方をあごで指す。
「そうだな。ダンジョンも攻略したしな」
俺はそう言い歩き出す。
一応、帰りも罠や魔物に警戒しながら。
【異世界生活 61日 13:30】
「さすがに今日は疲れたな」
俺は、白い橋を渡り終え、元の島につき草原に腰を下ろしそう呟く。
橋の前で他の魔物が待ち構えているかもしれないと気を張っていたが、結局、魔物はおらず、あれ以降戦闘は起きなかった。
「そうだね。今までで、一番魔物倒した上にダンジョンも攻略だからね」
明日乃もそう言い俺の横に座る。
「まあ、おかげで、目的の物も手に入ったし」
麗美さんがそう言って、薙刀のような武器にしていた変幻自在の武器を筒の状態に戻す。
「早く、私の武器も欲しいぞ」
一角がそう言うが、琉生を休ませてやりたいし、真望や鈴さんのレベルも上げたいし、何より鈴さんがお祈りポイントの無駄使いを許してくれなそうだ。
「次のダンジョン攻略は琉生の体調が万全になって、鈴さんがお祈りポイントを使う許可をくれたらな」
俺は一角にそう釘をさす。
「そうね、そのあたりも、拠点に戻ってから、みんなで検討しないとね」
麗美さんがそう言う。
「今日は、お祈りポイント600ポイントしか使わなかったんだしすぐに次の島も行こう」
一角が適当に計算する。
まあ、確かに今日はお祈りポイントの無駄使い無しで、魔物狩りとしては大成功だったな。
「鈴さんのお預けになっている鍛冶道具もそろそろ神様に貰ってあげないとへそ曲げるぞ」
俺はそう言って笑う。そろそろ鍛冶の事も考えないとな。
「とりあえず、休憩にして、お昼ご飯食べよ。お弁当も悪くなっちゃうし」
明日乃がそう言う。
「あ、霊獣が消えちゃうから、川の手前まで移動しよ?」
琉生が慌ててそう言う。
ワーフロッグとの戦闘で帰る時間が遅れてしまい、霊獣が拠点まで持たないらしい。
「その先はどうするか?」
俺は川をたくさんの荷物を持って渡る方法を思いつかなかった。
「私の霊獣が川を泳げるらしいから、それでピストン輸送するわ」
麗美さんがそう提案するのでそうすることにした。
とりあえず、拠点の西にある川のそばまで行き、昼食休憩をする。
休憩を始めたところで、ちょうど、琉生の霊獣が光になって消える。そして背負っていた青銅の防具や荷物がぼとぼとと地面に落ちていく。
とりあえず、そこで、周りから枯れ枝を集め、たき火をし、竹筒でできたお弁当箱を温める。
【異世界生活 61日 14:30】
俺達は遅い昼ご飯を食べ、少しゆっくりしてから川を渡って拠点をめざす。
川を渡るのは予定通り麗美さんが霊獣、大きな亀を出してその上に麗美さんが乗りピストン輸送をする。
青い光のようなものでできた大きな亀に乗る麗美さん。なんかシュールな光景だ。
一緒に俺と琉生がいかだに荷物を積んで先に渡り、渡った先で荷物番をしながら待つ。
明日乃と一角は運びきらなかった荷物の番をし、荷物を運び終えたらいかだで川を渡る感じだ。
麗美さんが何往復貸して、荷物を運び終え、最後に明日乃と一角がいかだで川を渡る。
残りはまた琉生が虎の霊獣を出し拠点まで荷物を運ぶ。
そんな感じで荷物運びに苦労しながら拠点に帰りつくのだった。
【異世界生活 61日 15:30】
留守番をしていた、鈴さんが迎えてくれる。
「おかえり、みんな。また、新しい防具貰ってきたのね」
みんなが着ている青銅の防具を見て、少しがっかりした顔で鈴さんがそう言い、へそを曲げる。
「一応、一角のサイズだけど、鈴さんの着られそうな防具もあるよ」
俺は申し訳なさそうにそう言って、琉生の霊獣の背中に積んだ青銅の防具を指さす。
「あ、麗美さん、変幻自在の武器手に入れたんだね」
鈴さんがそう言って、気を取り直すように麗美さんの変幻自在の武器を観察する。
鈴さんには変幻自在の武器がノコギリや大工道具に見えているような気がする。
とりあえず、鈴さんは今日、水浴び小屋を作っていたらしい。水道ができても、みんなの前で裸になって水浴びするわけにいかないもんな。
将来的にはそこにお風呂も作るらしい。
まあ、鈴さんとアオとトラの3人だったのであまり進んでいないらしいが。
「おかえり、みんな。意外とお祈りポイント使わないで済んだみたいね」
そう言って真望も裁縫小屋になっている自分のツリーハウスから降りてくる。
「ただいま、鈴さん、真望。まあ、お祈りポイントの事も含めて今後の行動を考えないといけないと思ってたんだ。お祈りポイントを貯める話とか、鍛冶の話とか?」
俺は、鈴さんに謝るようにそう言う。
「会議する前に、私の変幻自在の武器にココをつなげないと。というかどうやってするんだろ?」
麗美さんがそう言って悩む。
言われてみるとそうだな。眷属と精霊の武器をつなぎ直すってどうやるんだ?
「とりあえず、対象となる眷属の前に立ち、そう意識することでつなぎ直しが完了します」
秘書子さんがそう教えてくれる。
とりあえず、拠点の柵の中に入り、いつものたき火のそばに移動する。
琉生の霊獣に積んだ荷物を下ろし、霊獣を還す。
なんか霊獣は出し入れ自由らしい。
「じゃあ、ココおいで」
落ち着いたところで、麗美さんがそう呼ぶと、たき火のそばでレオと作業をしていたココがてとてとと可愛らしく走ってくる。
「いやーん、ココったら、走る姿も可愛いわぁ」
そう言って麗美さんがココを抱き寄せようとするが、ひょいっと躱される。
「もう、ココったら、ツンデレなんだから」
麗美さんが残念そうな顔をしてそう言うが、ココもみんなも呆れている。
猫にしつこすぎる飼い主は避けられるのだ。
「とりあえず、つなぎ直しってやつをやってみたら?」
俺は気を取り直して麗美さんにそう言う。
「そうね、とりあえず、雰囲気でやってみましょ」
麗美さんがそう言い、持っていた変幻自在の武器を筒状に戻し、ココに向けて構える。
「眷属とのつながりをつなぎ直したまえ」
麗美さんが雰囲気でそう言うと、変幻自在の武器から光の糸のようなものが出てココにつながり、徐々に光が消えていく。
「うん、なんか、ココとのつながりが強くなった気がするわ」
麗美さんが嬉しそうにそう言う。
「気のせいにゃ」
ココが呆れ顔でそう言う。
麗美さんの気のせいらしい。
「明日乃はいいのか? 眷属、多分呼べるぞ」
一応、俺は明日乃に確認する。
「さっきも言った通り、一角ちゃんが専用の武器を手に入れて、アオとつなぎ直せてからかな?」
明日乃がそう言う。
まあ、眷属も4人いるし焦る事でもないしな。
「落ち着いたら、今後の作戦でも考えるか。お祈りポイントの使い道とか今後の事とか、水道をどうするかもあるしな」
そう言って、休憩がてら、作戦会議をすることにしたのだった。
次話に続く。
【改訂部分】改訂前の74話と75話を足して書き直した感じです。真望の代わりに琉生が参加していたり、眷属のココがすでに召喚されていたり、改訂後はお祈りポイントもほとんど使いませんでしたし、微妙に書き直しが多かったりします。




