第81話 魔物の島のダンジョンに苦戦、撤退
本日ブックマーク1名様ありがとうございます。やる気が出ます。
それといつも誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
【異世界生活 54日 8:45】
一つ目の魔物の島にあるダンジョンに挑んでいる俺達。
3階のボス部屋前で作戦を決め、これからボスに挑む。ボスはレベル23のマーマンを模したウッドゴーレム。同格で苦戦必至な上に魔法を使う可能性までもある。
しかも装備は全身青銅の鎧に、全て青銅でできた立派な槍を持っている。
俺達は万全の状態でボス部屋に飛び込む。
まずは明日乃が全体補助魔法を発動。
次いで、全員が獣化スキルの補助魔法を自分自身に掛ける。
そして俺は魔法対策のために獣化義装を纏う。俺の体が毛むくじゃらの黒い獅子の姿になる。
明日乃も、ステータス不足でダメージを受ける可能性があるので獣化義装を纏う。
「じゃあ、先に行くぞ。敵の魔法が発動し終わったら、部屋に飛び込んできてくれ。さすがに5体は相手にできないからな」
俺はみんなにそう言う。
「敵のボスが2連続で魔法使う可能性はないんだよな?」
一角が俺に聞く。
「ウッドゴーレムの魔法も原初魔法、マナを使った魔法に準じているので、1度使うと30分間使用できなくなっております。ご安心ください」
秘書子さんがそう言う。
「なら、安心だ。じゃあ、改めて、行くぞ」
俺はそう言い、半開きのボス部屋の扉をみんなが通れるくらいまで開け、一息入れてから、一気に駆け出す。魔法を使うと予想されるボスウッドゴーレムに向けて。
魔法を使わなければ、補助魔法2重掛け+獣化義装の力で力押ししてボスを倒すという選択肢も考えつつ、ウッドゴーレムに向かって走るが、予想通り、ボスゴーレムの手のひらにマナが集まり始める。無詠唱の氷魔法だ。
あれ? この距離もしかしたら避けられるんじゃないか?
俺は、ボスウッドゴーレムの余りにも早い、距離のある魔法の発動に、変な欲が出てしまう。マナをもう300消費しての対魔法効果もある金剛義装を使わずに避ければマナの節約になる。
俺は一瞬でそう判断し、いきなり走る方向を左に切る。
そして放たれる5本の氷の矢。
俺は冷静に魔法の氷の矢を睨みながら全速力で走り矢から逃げる。
秘書子さんの話では攻撃魔法にはある程度の追尾機能があると聞いていたが。確かに曲線を描くように俺を追ってくる。
だが、その方向転換するスピードより俺が左の壁に向かって走るスピードの方が勝るようだ。1本、また1本、俺の横を紙一重で氷の矢がすり抜けていく。
3本の氷の矢は避けられたが残り2本、これは当たる。
俺は避けるのを諦めて盾を構える。
「盾と剣にマナを込めてください」
秘書子さんが頭の中に直接つぶやく。ほんの一瞬の間だった。
俺はわけもわからず、盾と剣に集中し、頭のなかでマナを込めるイメージをする。
そして、盾がマナで光出し、後を追う様に剣も輝きだす。
そして、盾に当たった氷の矢がそのマナで相殺される。
なるほどそう言うことか。
俺は一瞬で理解し、剣でもう1本の氷の矢を叩き落す。
盾と剣で氷の矢を叩き落すことに成功したが、すべては相殺できなかったようで、獣化義装が白く霜を纏う。
「流司クン、面白いことするわね」
麗美さんが楽しそうな声でそう言いながら俺の横をすり抜け、ボスに近接し、剣を振りかざす。
「流司、さっさと、取り巻きの相手をしろ。明日乃が2体相手しなくてはいけなくなるだろ?
麗美さんが、俺の代わりにボスを引き受けてくれたようだ。俺は慌てて、麗美さんが相手をする予定だったレベル20のワーフロッグ型のウッドゴーレムの相手をする。
パリパリと音を立てて、獣化義装の表面に張り付いた氷が割れ、床に落ちる。魔法のダメージがあるようだ。体が少し重い。
本来、ウッドゴーレムの首を刎ねて回る予定の麗美さんがボスと対峙し、足止めされてしまう。
俺は作戦を変更し、とりあえず自分の対峙するウッドゴーレムを袈裟切りするように攻撃、ダメージを受けて動きが止まるので、返し刃で額の弱点、核を剣で粉砕する。
そのまま俺は明日乃が対峙している、というより逃げ回っているウッドゴーレムに斬りかかり、動きを止める。
「明日乃、ウッドゴーレムにとどめを」
俺はそう叫び、明日乃も慌てて、ウッドゴーレムに飛び掛かり、額の核を青銅の槍で貫く。
「次行くよ」
俺は明日乃にそう言うと、麗美さんが相手をしているボスウッドゴーレムに横から斬りかかる。
麗美さんは、それに反応し、的確にウッドゴーレムの首に長柄斧槍を叩きつけ、2度、3度と叩きつけ首を刎ねる。
あとは格下のウッドゴーレム。麗美さんが順番に首を刎ねていく。
「明日乃、とどめを」
俺はそう言い、明日乃は床に落ちたウッドゴーレムの額の核を破壊していく。
そして、すべての敵を倒す。
ボスのドロップアイテムは青銅の胸当て。明日乃のサイズに合わせた鎧だ。
取り巻き達は皮の鎧や粗悪な青銅の槍をドロップする。
皮の鎧は在庫があるしかさ張るので放置、青銅の槍の穂先だけ回収する。
ボス部屋にある宝箱の代わりの木箱は変わらず粗悪な青銅の斧が入っていた。
「みんな、補助魔法が切れないうちに、4階の頭くらいはレベル上げに活用しよう」
そう言って、ボス部屋を抜け、エントランスへ。
重い荷物は全て、この部屋に置き、4階のエントランスに階段で降りる。そしてそのまま、ダンジョンの4階入り口に飛び込む。
とりあえず、魔法弾を全部は避けられないことが分かったので、4階ではあきらめて金剛義装を使い、魔法を全部受ける。
金剛義装。毛むくじゃらの着ぐるみが鋼鉄の様な金属になり全てのダメージを遮断する。
そして、説明に書いてあった通り、俺は全く動けなくなる。
魔法を受けきったところで、麗美さんと一角が敵に同時に斬りかかり、敵が麗美さん達に集中したことを俺は確認すると、金剛義装を通常の獣化義装に戻し、動けるようになったところで、ウッドゴーレムに斬りかかり、麗美さんは冷静にウッドゴーレムの首を刎ねる作業をする。
そして、床に落ちた首に明日乃がとどめを刺す。
1体ずつ敵が襲ってくるエリアで、ウッドゴーレムを3体倒したところで、ダンジョンの先には2体のウッドゴーレム。
無傷で進めるのはここまでかな?
俺は足を止めて、休憩を提案する。
そして、ダンジョンを少し戻り、休憩。
明日乃のレベルが上がってレベル23になったようだ。
3体倒したドロップアイテムは魚の切り身が2切れと青銅の脛あてだ。しかも切り身は結構大きい。
「これって、マーマンの肉って事かな?」
明日乃が嫌そうな顔をする。
俺がスキルで鑑定すると、
魚の切り身
タラの半身の切り身。
マーマンの肉ではない。
怪しい解説だな。
まあ、おいしそうな白身魚ではある。
「タラの切り身らしいぞ」
俺は少し疑いつつもそう言う。
「本当に?」
明日乃が訝しむ。
「本当です。ウッドゴーレムからわざわざドロップするのに、マーマンの肉ではがっかりなので、神がそのように精霊に依頼しました」
秘書子さんがダンジョンを管理する精霊や神様を弁護するようにそう言う。
「たまにシャケの切り身もドロップします」
秘書子さんが余計なこともいう。
「なんだそりゃ」
一角ががっかりした顔でそう言う。
俺もがっかりだ。世界観ぶち壊しじゃないか?
「それでは、次回からマーマンの肉に置き換えましょうか?」
秘書子さんが俺の心を読んでそう提案する。
「いや、それはそれでがっかりだから、タラやシャケの切り身でいいよ」
俺は慌てて断る。どうせなら食べられる方がいいしな。
とりあえず、明日乃は今着ている皮の鎧と靴を脱ぎ青銅の鎧とブーツを装備する。なんかちぐはぐな感じだが仕方ない。
「とりあえず、これ以上、補助魔法無しで無傷の状態で進むのは難しそうだから撤退するか。さすがに4階のボスをクリアできる気もしないしな」
俺はそう提案する。
「だったら、2体ずつ敵が出るエリアまではクリアしようよ。私が補助魔法をかけて壁役やるし。それで、麗美さんと一角ちゃんのレベル上げよ。なんかもったいないし。マナで魔法使っても、もらえる経験値の高さから元は取れそうだし、ね?」
真望がそう言う。
確かにレベル23のマーマンを倒すと経験値が3000以上もらえる。補助魔法、獣化義装、金剛義装を使ってもマナは900ポイント、2人がやっても1800ポイント1体倒すだけでもおつりが帰ってくる。
「そう言ってもらえると助かるわ。じゃあ、流司クンと真望ちゃんがもう一度補助魔法2重掛けの上、獣化義装で2体抑える。魔法は金剛義装で受ける感じで行きましょ」
麗美さんが真望の意見にのる。
「ああ、でも、敵にとどめを刺す役、今日は流司でいいぞ。青銅の防具が無駄になるからな」
一角がそう言う。
確かに一角がとどめを刺してしまうと一角サイズの青銅の鎧が余ってしまう。
だったら俺のサイズの鎧をとっておいた方がいいよな。
そんな感じで俺と真望が補助魔法と獣化義装を使いまくり、明日乃も一応、全体補助魔法をかけ、敵が2体出るエリアで4組。8体のウッドゴーレムを倒す。
麗美さんのレベルが上がり、レベル23に、その後は俺がとどめを刺す役をし、レベルは上がらなかったが青銅製の防具は手に入る。
次はダンジョンの先に3体のウッドゴーレムが待ち構えている。
「さすがにここまでかしらね」
麗美さんがそう言い、みんなも頷く。
そのままエントランスに戻りドロップアイテムの確認。
麗美さんのサイズの青銅製の胸当てと脛あて。俺もサイズのあった胸当てと脛あてを手に入れ、そして魚の切り身が4つ手に入った。1切れだけ、新巻鮭の様なシャケの半身だ。3人で食べてもお腹がいっぱいになりそうな大きさだ。
「これはけっこう苦戦しそうだな」
一角がそう言ってため息を吐く。
「ああ、4階の時点でレベルが拮抗している上、魔法まで使うしな」
俺もそう言ってため息を吐く。
「とりあえず、帰ろ? 拠点に帰って明日以降の作戦を考えようよ」
明日乃が気を取り直すように笑顔でそう言う。
「そうだな」
俺はそう言って、荷物を担ぐ。
みんなも立ち上がり帰りの身支度をする。
とりあえず、ダンジョンの各階のエントランス、安全地帯に放置したドロップアイテムを回収して回り、ダンジョンの出口まで戻る。
【異世界生活 54日 10:00】
「敵はいなそうだな」
「うん、気配もないね」
俺と明日乃は確認し合う。
「橋の辺りにいるかもしれないし、森の中で待ち構えているかもしれないから注意は必要ね」
麗美さんがそう言い、みんなも頷く。
俺達はダンジョンを後にし、森の中の獣道を警戒しながら帰路に着く。
森の中には敵はいなかったが、元の島につながる白い橋のところにはマーマンの群れがいて結界を攻撃していた。数は30体強。平均レベルが15程度の敵の群れだ。
「明日乃と一角は結界を張って荷物を守っていてくれ」
俺はそう言うとドロップアイテムで重くなったバナナの葉っぱで作ったリュックサックを下ろす。
「私も戦いたいぞ」
一角が不満を言う。
「ここは一角が走り回るには狭すぎるだろ? 今は明日乃と荷物を守ってくれ」
俺がそう言うと、一角は不満ながらも提案を受け入れる。
そして明日乃が結界魔法を張ったので、俺と麗美さんと真望は獣化スキルの補助魔法を各自がかけて、獣化義装を装着、マーマンの群れに斬りかかる。
30対3で多勢に無勢。囲まれる危険性もあるので、安全面を考えて格下の敵ながら、補助魔法と獣化義装で守りを固めた。
レベルが5以上も高い上に補助魔法までかけてある。マーマンに囲まれる前にどんどん殲滅していく。特に麗美さんの殲滅力はすさまじい。
囲まれないように注意は必要だったが、魔法が切れる10分もかからないうちに32体のマーマンを退治し、帰路を確保する。
他の魔物に挟み撃ちにされる危険性も配慮したが運よく、他の魔物は近づいてこなかったようだ。
マーマン達の青銅の槍の穂先だけ回収し、皮の鎧は死骸と一緒に神に還す。そして経験値にする。
「よし、帰ろう」
俺は明日乃達と合流して荷物を持つと、白い橋を渡り元の島に。
【異世界生活 54日 11:30】
途中、川をいかだで渡り、拠点に着くと時間はお昼近くだった。まあ、今日は出かけるのも日が出る前、早かったしな。
魔物の島のダンジョンは少し苦戦しそうだな。お祈りポイントも今日1日で25000ポイント近く使ってしまったし。
休憩して落ち着いたら今後の作戦を決めないとな。
次話に続く。
【改訂部分】敵のレベルを上げてダンジョンに苦戦するよう調整したので、苦戦、ほぼすべて書き直しです。
改訂後は結界魔法も使うと動けなくなる仕様になったので、獣化義装や金剛義装で代替している感じです。
それと、ダンジョンで魚の切り身がドロップするようになりましたw
マーマンの切り身は嫌すぎるので。タラとシャケです。




