第67話 とりあえず、みんな新しい魔法を覚えよう(スキップ回)
【異世界生活 36日目 5:00】
「え、石英取りに行かないの?」
鈴さんが朝食を食べながら絶句する。
「いや、行かないわけじゃないよ。とりあえず、みんなもう少しでレベル21だし、みんなも新しい魔法が使えるようになってから本格的な探索に出た方がいいかなって。石英が取れるところって結構山の上でしょ? 何が出るか分からないし、今日はレベル上げをしようって話なだけだよ」
俺は鈴さんを一生懸命説得する。
「私も中級魔法ってやつを使えるようになりたいしな」
一角が勝手なことを言う。
「真望ちゃんのレベルも上げたいし、鈴ちゃんだって、もしかしたら金属加工で役立つ魔法が手に入るかもしれないでしょ?」
麗美さんがそう言ってフォローしてくれる。
「え~、私もダンジョン行くの? 麻布作りがしたいのにな」
真望は不満を漏らす。
「いやいや、今一番レベル上げないといけないのは真望だからな」
俺はそう突っ込んでおく。
「まあ、真望ちゃんがレベル上げてる間に私と琉生ちゃんで麻糸いっぱいつくっておくから、ね?」
明日乃がそう言って説得する。
「で、どうするの?」
鈴さんが渋々聞いてくる。
「とりあえず、俺と一角と麗美さんは手伝うだけでも、貢献ポイントでレベルが上がると思うし、鈴さんももうレベル20にはなっているから、鈴さんと真望をメンバーに入れて、真望をスパルタかな? で、真望のレベルが上がったら次は鈴さん?」
俺はそう説明する。
「だったら、真望がレベル21になるまで拠点で琉生ちゃんと待ってるわ」
鈴さんがそう言い返してくる。
「いや、それ、なんかする気でしょ? 勝手に石拾いに行く気でしょ?」
俺はジト目でそう問いただす。
「これで、鈴ちゃんと琉生ちゃんを一緒にしておくわけにはいかなくなったわね。とりあえず、今日、明日はダンジョンに強制連行かな?」
麗美さんが呆れ顔でそう言う。
なんだかんだ言って、最年長の麗美さんの発言力は大きい。
鈴さんは渋々レベル上げに参加することになった。
「明日乃は拠点に待機で大丈夫か?」
俺は心配になって聞く。
「私は大丈夫だよ。逆に、りゅう君達は大丈夫? 私の補助魔法や回復魔法、あと、結界魔法? ないと困らない?」
明日乃が逆に俺達の心配をする。
「まあ、レベル上がったし大丈夫だろう。回復魔法は麗美さんも持っているし、最悪、獣化スキルが色々あるからなんとかなるだろ?」
俺は明日乃を安心させるようにそう言う。
明日乃と琉生はすでにレベル21だし、経験値の効率を考えると、鈴さんと真望のレベル上げへの参加を優先したい。
そんな感じで、とりあえず、朝食を終え、日課の麗美さんの剣道教室で剣を習い、午前中からダンジョンに入ることにする。
【異世界生活 36日目 6:30】
拠点から30分ほど歩き、泉の裏にある丘の中腹、ダンジョンの入り口に移動する。
今日のレベル上げメンバーは俺、一角、麗美さん、真望、鈴さんだ。特に今日は真望を中心にレベル上げする。
とりあえず、1階からレベル上げしていけば、貢献ポイントで俺と一角と麗美さんあたりはレベル21になるだろうという事で1階から真望を育成することにする。
「というか、真望、さぼり過ぎだろ? 一人だけレベル14ってなんだよ?」
俺はそう言って突っ込む。
「仕方ないじゃない、麻糸作りや麻布作りが大変なんだし、ウサギの毛皮の布団だって役に立っているでしょ?」
真望が反論する。
まあ、確かにウサギの毛皮の服や布団は助かっているけどな。
ちなみに現在の仲間たちのレベルはこんな感じだ。
流司 レベル20 レンジャー 剣士
明日乃 レベル21 神官 聖魔法使い 剣士
一角 レベル20 狩人 剣士
麗美 レベル20 医師 剣士 治癒魔法使い見習い
真望 レベル14 裁縫師 剣士
鈴 レベル20 鍛冶師見習い 剣士
琉生 レベル21 テイマー見習い 剣士
皮の防具は全員自分に合ったサイズの物が揃っている感じだ。
とりあえず、グダグダ言ってる、真望を引きずって、1階からレベル上げをしていく。
まず、ダンジョン3階の前半で、真望のレベルが15になる。
4階をクリアしたところで、レベル18に。
5階の途中でレベル20になり、麗美さんもレベル21になる。
ボス部屋までで真望にレベル21になる気配がなかったので、それ以降の敵でとりあえず俺と一角をレベル21にし、5階のボスを余裕で倒せるように調整、2人がレベル21になったところで残りの敵を鈴さんに振る。
そして、最後にボス部屋を攻略、ボスは真望にとどめを刺させる。真望のサイズにあった皮の服の上下を手に入れる為だ。
ダンジョンをクリアした後の副賞の調味料は明日乃の希望で醤油だ。
それと、レベル21になった俺、一角、麗美さんの新しい魔法だが、琉生と似たような中級魔法が多い。
俺の場合、攻撃魔法は『闇弾の連撃』琉生の攻撃魔法と同じように、5発攻撃魔法を放てるようになった。それと、『横取り』の強化版、『強奪』という複数の敵のステータスを下げて、自分のステータスを大きく上げる魔法が追加された。あと、防御魔法がない代わりに『盲目』という複数の敵を闇につつむ魔法も増えた。
一角は琉生と大体似たような感じだ。
『風刃の連撃』、防御魔法の『風の壁』。ただし、個の防御魔法、壁で物理的に防ぐというより、風で飛び道具や矢を逸らす、広範囲魔法らしい。なので、琉生の『石の壁』と比べると物理攻撃を防いだり、魔法を受けたりする力は弱いようだ。
それと、初級魔法に『疾風』という風の補助魔法も覚えられるようになったそうだ。素早さを上げる魔法らしいが、これも一角の獣化補助魔法『狼の疾走』と同じで、直線的な素早さが上がるが旋回性や回避力が下がるいつも通り癖のある補助魔法だった。まあ、広い戦場なら使う機会がありそうだが。
麗美さんも琉生や一角と似た魔法を覚えられるようになった。
攻撃魔法は複数攻撃の『氷矢の連撃』。防御魔法は『氷の壁』。琉生の魔法とよく似ている。
それと攻撃魔法として『水の刃』高圧の水を発射して物を切断する魔法というのも使えるようになるらしい。攻撃力は高いが射程が短いそうだ。
麗美さんの氷の壁も琉生の『石の壁』同様、10分で消えるようにするか、溶けるまで放置のどちらも選べるらしい。これは以前言っていた、穴を掘って、氷室を作るという際に氷を作るのによさそうな魔法だ。冷蔵庫代わりの氷室の可能性が見えてきた。
3人とも獣化スキルの初級に『金剛義装』が追加、義装(着ぐるみ)を金属化して動けなくなる代わりに物理攻撃も魔法攻撃も一切遮断するスキルも使えるようになるようだ。
その後、拠点に帰り、お昼ご飯。午後はいつもの作業をして、麻糸や麻布作り、鍛冶工房の小屋作りをする。
4人の眷属達がどんどん竹や、荒縄を補充してくれるのでハイペースで小屋が出来上がるのはありがたい。
日が暮れたら作業を終了し、夕食を食べて、日課のお祈り、就寝する。
【異世界生活 37日目】
次の日も午前は同じようなレベル上げ、午後は作業をする。
とりあえず、ダンジョンに潜るメンバーも昨日と同じ、そして、鈴さんをレベル21にすることから始める。
結果、5回の中盤で鈴さんはレベル21に。真望もボス部屋でギリギリレべル21になった。
ただし、ボスにだけは麗美さんがとどめを刺した。麗美さんが5階ボスのドロップアイテム、皮の服が欲しかったからだ。
これで、全員レベル21で中級魔法が使えるようになった。
ちなみに真望の中級魔法も琉生と似た魔法だ。
攻撃魔法は複数攻撃の『火矢の連撃』。防御魔法は『炎の壁』。『炎の壁』に関しては琉生の『石の壁』と違い物理防御力は皆無。ただし、通ろうとする敵を焼き尽くす。敵の侵攻を妨げつつダメージを与えられる魔法って感じだ。
鈴さんの覚えた中級魔法は琉生に似ている。
『雷矢の連撃』5本の雷の矢を放つ複数攻撃魔法。
防御魔法は 『雷の壁』。真望の『炎の壁』と似ていて、物理防御力は低い代わりに、通ろうとする敵を雷で焼き尽くし、痺れて動けなくする効果もある。
鍛冶に使えそうな魔法も覚えられるようになったそうで。『金属を変形する』(50) 少しだけ金属を変形させることができる魔法だそうだ。
ほんの少しだけだし、金属同士をつなぎ合わせて大きな金属の塊にする。みたいな効果は期待できないようだ。
2人も他メンバー同様、獣化スキル初級に『金剛義装』を覚えられるようになった。
最後に、副賞の調味料、みりんを貰って拠点に帰る。
昼食を食べ、午後の作業をし、日が落ちたら作業終了で夕食だ。
鍛冶工房の小屋もかなりでき、あとは窓や扉を着けたらほぼ完成だそうだ。
「これで、明日は耐熱煉瓦の原料、石英を取りに行けるね」
鈴さんが夕食を食べながらそう宣言する。
明日は、山に登って石拾いという過酷な探索が決定したようだ。
次話に続く。
【改訂部分】改訂前の61話~62話あたりの書き直しです。ダンジョンクリアにレベルが足りないからレベル上げだったものが、新しい魔法を使う為にレベル上げになっています。ラスボスのレベルが20→18になった弊害ですね。その分、調味料が貰えるようになりました。




