第14話 明日乃の水浴びと素材集め(竹と粘土)
ガリ、ガリ、ガリ。
俺は竹林の前で、さっき、切り倒したばかりの竹をのこぎりに変えた変幻自在の武器で綺麗に切断する。
二つのふしで挟まれた筒状の竹をいくつかつくる。イメージ的には缶ジュースみたいな形をした竹が8つ、竹の水筒を作った。
切り出せた竹筒は片方のふしに穴を開けて、木の棒を切って栓を作り蓋にする。なんか時代劇で見たことあるような典型的な水筒だ。
今日は、粘土も持ち帰りたいし、竹自体も持ち帰りたいから数はこんなもんでいいだろう。
そして、のこぎりでもう2本竹を切り倒し、キャンプに持ち替えることにする。2本くらいなら明日乃と2人で持てば持って帰れるだろう。
それと、粘土か。俺は、ステータスウインドウを開きマップも開く。
粘土がありそうな位置にマークがされている。神様がしてくれたのか秘書子さんがしてくれたのか分からないが助かる。
泉から東に伸びる川を少し歩いたところにあるようだ。明日乃の声が届くくらいの距離のようなので、明日乃が水浴びを楽しんでいる間に粘土も探しに行く。
川沿いに歩いて行くと、川の流れが緩くカーブしだしたあたりに少し開けた場所があり、崖のようなものが見える。
マップを確認するとマークは崖のあたりにある。
崖に近づいてみるときれいに縞模様ができており、地層が確認できる。
「これも神様が作ったのか? なんかよくできているな」
俺は地層をペタペタと触りながらそう独り言を言いながら地層を調べる。
そしてちょうど目の前のあたりにある地層が青みのかかった灰色の粘土層になっていて、いかにも土器を作るのに良さそうな粘土が取れそうだった。
おれは、変幻自在の武器をシャベルに変化させて粘土を掘り出す。
そして、近くに落ちていた大き目の葉っぱを何枚か使って包み、抱えてさっきの泉の方に戻る。
竹も持ち帰らないといけないから、持ち帰れる粘土もたかが知れているな。サッカーボールくらいの大きさの粘土の塊を抱えて泉まで戻る。
「りゅう君、粘土もあったの?」
気さくに声をかける明日乃。
「ああ、川を少し下ったところに地層が見える崖があって粘土がたくさんあったぞ」
俺は声のする方に振り向いてそう答える。
「もう、りゅう君のエッチ」
そう言って照れた顔で言う明日乃。
泉の岸につかまり泳ぎするように水に浸かって前は見えないがお尻は丸見えの明日乃。
思わず、丸く可愛いお尻を見とれてしまい、急いで目を逸らす。
「ふふっ、りゅう君も一緒に入ろうよ? 冷たくて気持ちいいよ?」
明日乃がそう言う。
俺は恐る恐る、明日乃を見るとさっきと同じように岸に両肘をついてつかまり泳ぎをするように足をひらひらと揺らしている。
そして、明日乃は何かを期待するようなまなざし。
「い、いいのか?」
俺も期待してしまう。
「りゅう君も3日間お風呂入ってないでしょ、私が背中流してあげる。ね、洗いっこしようよ」
明日乃がいたずらっ子の笑顔でそう言う。
俺は、その誘いに抗うこともできず、粘土や石斧を地面に置くと、そのまま、明日乃のすぐ横、泉に足をつけ、両足を入れる。少し進むと膝上まで浸るくらい。ちょうどお風呂くらいの深さでちょうどいいな。
「もう、りゅう君、お風呂入るときは服を脱ぐでしょ?」
明日乃がそう言うので、恥ずかしいけれど、明日乃に背中を向けて、腰に巻いた大きな葉っぱの結び目を解き、腰に巻いてあった葉っぱをほどいていき裸になる。
「ね、洗いっこしよ?」
そう言って明日乃が背中を向けていた俺に不意打ちのように抱きついてくる。俺の背中に立派な双丘が当たり、存在を主張している。
俺は、その双丘を拝みたくなって振り向くが明日乃は抱きついたままなので、距離が近すぎて、双丘を拝むことはできなかった。
その代わり、俺の目の前には、明日乃の密接した顔と可愛らしい唇。
「ねえ、キスしよ?」
明日乃はそう言って、ぎゅっと背中に回した腕に力を入れると、俺の口に、明日乃の唇を寄せてくる。
俺の口の中に明日乃の味が広がる。
☆☆☆☆☆☆
「やっぱり、体を洗うと気持ちがいいね」
明日乃が泉で泳ぎながらそう言う。
「そうだな。頭を洗うのがこんなに気持ちいいって事、当たり前すぎて忘れていたよ」
俺は泉の浅いところの石に腰掛けながら休憩しつつそう答える。
「だね。髪の毛や頭のベタベタが無くなってがさっぱりするとほんと、気持ちいいよね」
明日乃が本当にうれしそうにそう答えながら平泳ぎをしている。明日乃のお尻が丸見えだ。
「竹の方は何とかなりそう?」
明日乃は心配そうに俺に聞く。
「ああ、神様に貰った変幻自在の武器のおかげで何とかなったけど、やっぱり竹は固いな。輪切りにするだけでも結構時間がかかったよ」
俺はそう答える。
「そっか。こういう場合、異世界転生ものの小説だと神様がくれた武器とかって切れ味抜群で山まで切れちゃったみたいなギャグが入りそうだけどね」
明日乃が笑ってそう言う。
「そうなのか? 俺たちがもらった武器は本当に平凡な切れ味だ。しかもホームセンターで売っているステンレス製の刃物より若干劣るぐらいだぞ」
俺はそう言う。
「普通の刃物より切れ味悪いんだ。チート能力皆無だね」
明日乃が残念そうにそう言う。
チート能力。俺は異世界転生という分野の小説をほとんど読んだことがないのであまり聞きなれないが、要はズルってことらしい。
「竹は結構な数、水筒みたいに切り分けられたから、水を持ち帰れそうだぞ。直火にかけて煮沸すればば食中毒も防げそうだしな」
俺はさっき作った竹の筒を思い出し、明日乃に伝える。
「鍋だけじゃ、調理に限界があったから竹があると助かるよ」
明日乃が嬉しそうに言う。
「粘土も採ってきたから土器も作ろう。水瓶とか作れば水汲みとかもっと効率よくできそうになるしな」
俺はそう言い、明日乃も頷く。
「水筒があれば、一角ちゃんにお水を持ち帰れるね。というか、交代で連れてきてあげればいいか。一角ちゃんも水浴びしたいだろうし。というか、一角ちゃん待っているよね。急いで帰らないと」
明日乃が思い出したようにそう言う。
俺もステータスウインドウの時計を見るともう14時近くなっていた。
「そうだな。あんまり長居すると一角にどやされそうだ。お昼ご飯、食べたら、竹筒に水を汲んで帰ろう」
俺はそう言って、泉から出ると脱ぎ捨てた葉っぱの服を腰に巻く。
明日乃も身支度を済ませ、泉のほとりの石の上に腰掛け、2人でお弁当に持ってきたイノシシ肉を食べる。
湧き水が綺麗で直飲みできるのはありがたいな。まあ、川の水はちょっと怖くてそのまま飲む気は起きないけど。
肉を片手に、美味しい水を飲みつつ、遅めの昼食をとる。
そして、帰りは1時間以上かかけて、キャンプに帰る。竹2本と水筒8本、粘土と野草とキノコ、結構な荷物になったので明日乃の体力も気になるので休み休み帰ることにした。
「遅かったな」
一角が不機嫌そうな顔で迎えてくれる。
真剣に塩づくりをしてくれたみたいでヤシの木の器に塩が結構できていた。そして干し肉もしっかり干されているようで、ヤシの木にかごが吊るされて風に揺れていた。
「真面目に仕事していたみたいだな」
俺は干し肉のかごを見て満足そうにそう言う。
「ああ、干し肉は今欲し始めたばかりだけどな」
一角がそう言う。言われた通り、半日ほど海水につけて一夜干しのかごに並べて干してくれたようだ。
「オレも手伝った」
レオが明日乃に頑張ったアピールをする。
「そっか、レオはいい子だね」
明日乃はそう言ってレオの頭を撫でる。ツンデレ卒業してデレデレじゃないか。
「そっちも成果はあったみたいだな」
一角は俺たちの荷物を見てそう言う。
「一角ちゃん、綺麗な湧き水見つけてきたよ。そのそばに泉もあって、水浴びもできるから、明日とか一緒に水浴び行こう」
そう言って水を入れた水筒を渡す。
「多分、湧き水だし、時間もそう経ってないし、竹とか笹って殺菌作用があるって聞いたことがあるから大丈夫だと思うが、一応鑑定して、飲めるか確認してから飲めよ」
俺は一角にそう注意すると、一角が水筒に鑑定スキルを使う。
「大丈夫そうだな」
一角がそう言って竹の水筒に口をつける
竹を切ってふしの片方に穴を開け、木片で栓をするだけのシンプルな水筒だがこぼれずにしっかり水を運べたようだ。
「美味いな。久しぶりっていうのもあるんだろうけど、やっぱり喉が渇いた時は、普通に水が一番美味いな」
そう言って満足そうに水を飲む一角。
「食べられる野草とかキノコもあったし、タケノコも見つけたんだよ」
明日乃が嬉しそうにそう言って今日の戦利品を広げる。
タケノコは明日乃が偶然、頭を出しかけたタケノコに躓いて見つけたという奇跡の1本だ。
もう少しゆっくり探せば見つかるかもしれないが、秘書子さん曰く、頭がすっかり出てしまったタケノコは固く美味しくないらしいので地面に埋まっているタケノコを探す必要があるそうだ。コツがいるらしいのでまあ、時間があるときに挑戦しよう。
「で、この後どうするんだ?」
一角が俺にそう聞くので、
「一角は引き続き塩づくりをしてくれ。俺と明日乃はとってきた粘土で土器づくりを挑戦しようと思う。多分、作ってもすぐ焼いたりとかはできないだろうし、今のうちに作って乾かしておきたいしな」
俺はそう言い、俺と明日乃は、なたや石斧、粘土、そして護身用に持っていった木の槍などを地面に置き、
「明日乃、土器の作り方とかわかるか?」
俺は明日乃に聞く。まあ、ダメだったら秘書子さんに聞けばいいし、2人から聞けばよりいい物ができるだろう。
「うーん、子供のころに読んだ本に土器の作り方が書いてあった気がするからいけると思うよ」
明日乃がそう答える。
子供の頃に読んだ本とかって、よく覚えているな。俺は純粋に感心する。
「ちなみに、乾燥させるのに日陰で干して2~3週間かかるからね」
明日乃がそう言う。
「マジか? 一晩くらい干せば焼けるのかと思っていたよ」
俺はがっかりする。
「あ、それと、川砂が必要って書いてあった気がする。焼くときに割れにくくするために砂を粘土と同じ量くらい入れるみたいな」
明日乃が本に書いてあったことをそのまま思い出すようにそう言う。
「そうなのか? 早く言ってくれれば、粘土のあった地層の下が砂の地層っぽかったからそれ使えばよかったな」
俺はがっかりする。
そして、日が落ちるまでもう少しありそうだったので、俺ひとりで急いで取りに行って急いで帰ってくる感じで砂と追加で粘土も取ってくる。
時間はもう17時近い。日も沈み始め、あたりは暗くなってきた。
「りゅう君、おかえり。ご飯食べたら、土器作ってみる?」
明日乃が迎えてくれる。
「そうだな。乾かすのに2週間もかかるなら早い方がいいしな」
俺はそう言い、夕食後3人で土器づくりをすることになった。
俺が砂を取りに行っている間、明日乃が夕ご飯を作ってくれていたみたいで、ネギっぽい山菜とにらというかニンニクの芽っぽい山菜、きのこ、そして水で戻した干し肉を、中華鍋を使って海水で茹で、ネギにら塩スープみたいな物を作ってくれたようだ。
ご飯の代わりは焼きバナナと。
一角は俺が、何かに使えないかと一応持ち帰った、水筒を作った時に出た端材を石包丁で加工してお箸やナイフを作ってくれたらしい。
竹のおかげで結構、生活レベルが上がったな。
水分少なめの、スープというより野菜炒め?
まあ、野菜炒めだろうと、スープだろうと、久しぶりの野菜っぽい食事なので美味かった。
タケノコも丸焼きにして塩をつけて食べたら美味かった。
「なんか、久しぶりに野菜を食べている気がして、美味しかったよ」
俺は明日乃にそう言う。
「美味しかったね。これも、一角ちゃんが1日頑張って塩を作ってくれたからもあるんだよ」
そう言う明日乃。確かに塩味がしっかりついていて美味かった。海水だけではこの味は出なかっただろう。
「美味しかったけど、焼きバナナが主食じゃなくてご飯を主食に食べたかったな」
俺はそう言ってご飯の味を思い出す。まあ、バナナと言ってもジャガイモみたいな味なので主食としても問題なないんだけどな。
「そうだねえ、真っ白いご飯食べたいね」
明日乃もそう言い懐かしそうな顔をする。
まずい、日本の事思い出させちゃったかな? 帰れる見込みはほぼないみたいだし、日本の事を思い出すような発言は避けた方がいいかもな。俺は反省する。
「ちょっと休憩したら土器を作ってみようよ」
変な空気を跳ね飛ばすように明日乃がそういう。
「そうだな。作ってみるか」
俺も気を取り直してそう返事する。
それじゃあ、気合入れて土器をつくりますか。
次話に続く。
誤字脱字報告いつも助かります。
ブックマーク2名様、☆5を1名様ありがとうございます。やる気が出ます。




