第43話 ダンジョンに再挑戦しよう
【異世界生活 13日目 13:30】
日課の剣道道場を終え、少し休憩してからもう一度ダンジョンに挑む。今日のメンバーも前回と同じ、俺、明日乃、一角、麗美さん、琉生の5人だ。
ちなみに琉生と鈴さんが熊肉を食べて得た経験値や軽作業の経験値、剣道道場の経験値でレベルが上がった。
流司 レベル10 レンジャー見習い 剣士見習い
明日乃 レベル10 神官見習い 聖魔法使い見習い 剣士見習い
一角 レベル10 狩人見習い 剣士見習い
麗美 レベル10 医師 剣士 治癒魔法使い見習い
真望 レベル7 剣士見習い
鈴 レベル9 鍛冶師見習い 剣士見習い
琉生 レベル10 テイマー見習い
現在のパーティのレベルはこんな感じだ。それと、麗美さんが経験値20ポイントちょっとでレベル11になる。一つ上の魔法も使えるようになるらしいので楽しみだ。
とりあえず、ダンジョンに入り、1階を普通にクリア。1回通ったし、ウッドゴーレム(ウサギ)もレベルは5と格下感は拭えない。
一応、前回とは逆に左手を壁に当てて別ルートを進んだところ、宝箱っぽい木箱をゲット、もしかしてと思い、ボス部屋入る前に全部の通路を回ってみるともう一つ木箱をゲット。基本、1階の通路に木箱が2個とボス部屋に1個、って感じかな? まあ、中身は粗悪な青銅の斧なので、まあ、無理して拾う必要もなさそうだが。
とりあえず、拾って持ち帰り、鈴さんに槍に作り替えてもらおう。
基本的に1階層にウッドゴーレムは50体? 数えながら倒したらそんな感じだった。1体6の経験値がもらえるので1階で全てのウッドゴーレムを倒すと300の経験値と最後の1匹はレベル7なので6追加して306の経験値がもらえるようだ。
とりあえず、1階は明日乃と琉生の養殖的な要素があるので、2人に積極的にとどめを刺させながら進んだ感じだ。
そして、麗美さんがレベル11になった。
「麗美さん、レベル11おめでとう。どんな感じ?」
俺は気になって聞いてみる。まあ、鑑定すればステータスは分かるんだけど、社交辞令だ。
「そうね、神様のおっしゃっていたとおり、治癒魔法っていうのが覚えられるようになったわ。ただし、初級魔法っていう1ランク上の魔法みたいだから、1回使うとマナを300、お祈りポイントも300必要みたいね」
麗美さんがそう言う。
「なんだそりゃ? 消費するポイントが、お祈りポイントはともかく、マナの方は30倍に増えた? ぼったくりじゃないか?」
俺はそれを聞いて驚く。
「初期魔法は有用な魔法が多いので高コストになります。また、敵もレベル11になると、倒した時にもらえる経験値が5倍になるので、それに対応して魔法にかかるマナは急激に増えます」
秘書子さんがそう言う。
俺は呆れるように笑い、みんなも少し呆れる。
「ゲームだったら、弱い敵を魔法で焼き払ったりしないようにする対策かな? 少ししか経験値もらえないレベル10以下の敵に魔法使うのが損な感じになるでしょ?」
明日乃が色々考えてそういう結論を出す。
「ゲームバランスみたいなのを考えてるって事か? 神様、遊び気分じゃないのか?」
俺はさらに呆れる。
「しかも、私がレベル11になる時、凄く経験値が必要だったけど、レベル12になるにも今までの5倍の経験値が必要みたいだね」
麗美さんが残念そうにそう言う。
気になってステータスを確認させてもらうと、確かに次のレベルになる為には600ポイント以上経験値が必要みたいだ。
「弱い敵ばっかり倒してもレベル上がらないよ。強い敵を倒しに行こうね。って感じの対策かな? まさにゲームだね。まあ、バランスは良さそうだけど」
とうとう、明日乃まで呆れだす。
「とりあえず、麗美さんには悪いけど、みんなレベル11になることを考えてとどめを刺す人を決めよう。優先は、回復魔法が使える予定の明日乃と槍の使い方がまだ慣れていない琉生かな?」
俺はそう言う。
「そういえば、魔法はどんな感じ? 回復魔法も気になるし、他に魔法覚えられた?」
明日乃が興味津々に聞く。
「ええっと、回復魔法はマナを300消費して、仲間のHPを30回復させるだって。割が合わないわね」
麗美さんがそう言ってがっかりする。
「そうなると、回復魔法を使うときはお祈りポイント使う感じかな? それとも経験値取得の効率が上がるとマナで使った方がお得になるのかな? 他に魔法は?」
明日乃が色々悩みながらそう答え、さらに質問する。
「あとは、攻撃魔法かな? 『氷の矢』と『水弾』? 名前のまんまね。しかも水弾は攻撃力ほとんどないみたい。火を消す効果みたいな? 使うなら氷の方かな?」
麗美さんがそう言う。
まあ、確かに、水をぶっかけられてダメージが与えられるか言うと微妙だよな。相当な水量か威力がないとな。
「あとは、獣化スキルとして能力獣化?『猫の歩み』? 素早さが上がる魔法みたいね、後は壁を利用した立体攻撃ができたり、足音が小さくなったり? 隠密行動? なんか猫っぽい動きができるようになるみたい。10分だけ」
麗美さんがそう付け足す。
「300円で10分ステータス強化か。微妙だな。マナ300だったら大損レベルだ」
俺はそう言う。
「ああ、獣化スキルはお祈りポイントじゃ使えないみたい。使えるのはマナだけっぽいわ」
麗美さんが俺のつぶやきに答える。
それって、結構使えないんじゃ?
「そうだね。微妙だね。よっぽど困ったときとか強い敵に出会った時用かな? しかも使うならお祈りポイントでは使えないのはつらいね」
明日乃もそう言う。
「あと、獣化義装? なんだろうこれ? 獣化のスキル欄にさらに新しいのが加わってる」
麗美さんがそう言って、スキルウインドウの説明を熱心に読み始める。
「ちょっと面白そうなスキルね。マナが着ぐるみみたいになって獣の姿をした鎧になるみたい? 鎧代わりにダメージを9割引き受けてくれるらしいわ。その代わり破壊されるごとにマナを吸われるみたいだけど」
麗美さんがそう言うと一角が興味を持ち、麗美さんのスキルウインドウをのぞき見し始める。
「なんか面白そうだな。ゲームや漫画で言うところのパワードスーツ? それとも正義の味方の変身スーツか? 少しだけステータスも上がるみたいだしな」
一角が麗美さんのスキルウインドウの解説をのぞき見し、読んで少し興奮する。
「マナが貯まったら1回使ってみるのもいいかもね。ちなみにこれも10分制限ありね。」
麗美さんも少し楽しそうにそう言う。
1回300ポイントは高すぎるな。もっとレベルが上がってからのスキルかな?
「鎧? パワードスーツ? 良く分からないが、死ににくくなるって事だよな?」
俺は二人の解説であまり良く分からなかったので適当に答える。
「まあ、そんな感じね。マナでバリアを張る感覚で着ぐるみを着るみたいな感じ? 外部義装、内部義装、軽装偽装? 獣化義装の中にも色々あるみたい?」
麗美さんがスキル解説を読んでくれるがますますわからない。
「あと、この間の流司みたいに1日ぶっ倒れることはないみたいだな。緊急スキル『獣化解放』とは違うようだ。まあ、『能力獣化』も『獣化義装』もあれを弱くして、副作用を減らした感じか?」
一角が麗美さんのスキル解説を読みながら俺を冷やかすようにそう言う。
たしかに『獣化解放』が発動したときはヤバかったもんな。1日以上、筋肉痛と吐き気や頭痛で動けなくなったし。『獣化解放』を弱くしたやつと覚えておこう。
「まあ、聞いても良く分からないから、必要になったら使ってみてよ。見て見ないとわからないし」
俺はこれ以上聞いても良く分からなそうなので、そう話を締めくくる。すぐに必要になるスキルじゃなさそうだしな。
「それと、攻撃魔法の方はどうしても急いで敵の数を減らしたいときはいいかもね。必中ではないみたいだけど、当てたいところに向かって飛ばせるらしいわ」
麗美さんが一生懸命解説を読んでそう教えてくれる。
「まあ、本当にヤバそうな時はお祈りポイント使っちゃっていいからね。300円ならまあ、我慢できる範囲だし、マナで魔法使うより断然いいし」
俺はそう言って麗美さんにいざというときは魔法を使ってもいいと許可し、みんなも頷く。
「ただし、使いすぎはダメだよ?」
最後に明日乃が念を押す。
そんな感じで麗美さんが初級魔法という、今までの生活魔法より少しランクアップした魔法をいくつか覚えることができるようになったようだ。回復魔法もあるとありがたいしな。獣化スキルはよくわからなかったが。
そして、2階にも挑戦する。
前回よりも善戦はできたが、やはり、俺、一角、琉生が足をひっぱり、明日乃は前衛として立つのも難しい状況だ。やはり敵が4体になったところで苦戦しだす。
なんとか、先に進むが、ボス前の4体複数組みの挟み撃ち攻撃。前と後ろから4体ずつ3組が順番に襲ってくる。
「みんな、後ろを優先に倒すぞ」
俺はそう言う。今回は退路確保優先で戦闘をする。
みんな、前から来る敵は無視して、後ろから追ってくる2組にこちらから先制攻撃をかける。
昨日と同じポジション、前衛の麗美さん、一角、琉生、俺が横に並び、明日乃が後衛で麗美さんをフォローする感じだ。
そして、ギリギリの戦闘をしていると、
「くそっ、やられた」
一角が声を上げる。
「大丈夫か? 一角?」
俺は一角の方を向く。
「こいつら、爪で攻撃しながら、噛みつき攻撃もするぞ」
そう言って左腕に噛みつかれている一角。
HPがじわじわと減っていく。噛まれると経時ダメージのようだ。
一角は槍を床に置き、腰に着けた小さなナイフに持ち替え、噛みついているウサギ型のウッドゴーレムの弱点、額の核にナイフを突き刺す。
このナイフは、午前中、鈴さんが槍のついでに作ってくれた青銅製のウサギの爪を材料にしたナイフだ。爪を砥石で砥いで柄をつけただけのシンプルなもので、爪自体が小さいのでペーパーナイフとかカッターナイフみたいな小ささだが、近距離での攻撃には槍より有効だったようだ。
一角のHPは1にはならなかったが経時攻撃で12ポイントダウン、残り8ポイントだ。結構ダメージを受けてしまったようだ。
「流司クン、最後の1匹、温存しておいて」
麗美さんが琉生の相手していたウッドゴーレムを処理し、そう言う。俺は瞬時に理解し、対峙しているウッドゴーレム(爪ウサギ)を牽制しつつ、維持する。
「神よ回復の力をお貸したまえ。ヒール」
麗美さんがそう言い、一角の体が光り出す。
「おお、なんか凄いな。HPも回復したし、痛みも腫れも飛んだぞ」
一角がそう言う。
HPで吸収しきれないダメージの部分も回復魔法で回復してくれるようだ。赤く脹れていた一角の腕の噛まれた部分が正常にもどったらしい。
「いいわよ、流司クン」
回復が済んだようで俺にそう声をかける麗美さん。
「琉生、とどめを」
フォローに来ていた琉生に俺はそう言い、俺がウッドゴーレムを適当に突き刺しまくり、隙を突いて琉生が額の核を槍で貫く。
「急いで、次行くわよ」
麗美さんがそう言って、後ろの2組目にも先制攻撃をかける。
運よく、前の1組は追ってはこないようだ。
2戦目、琉生も一角がやられたような攻撃をされる。
すばやさ特化のウサギ型ウッドゴーレムが、琉生の足元を狙い、爪で攻撃し、防御しようとしたところをフェイント、そこから飛びつき、腕に噛みつく。
これは運よく麗美さんが間に合い、麗美さんがすぐにとどめを刺す。それでもダメージは5ポイントだ。
最後にそのまま麗美さんが俺の相手していたウサギ型ウッドゴーレムを横から槍で突き刺し、跳ね飛ばし、壁にぶつかったところを、俺がとどめを刺す。
「とりあえず、逃げよう。ダメージ受け過ぎだ」
俺はそう言うとみんなも頷き、前で様子を見ているウッドゴーレムを無視して撤退する。敵は追ってこないようだ。
とりあえず、敵が3体ずつしか襲ってこられないエリアまで戻り、
「今日も帰る? やっぱり、麗美さん以外、すばやさ特化に対応できていない。せめて俺と一角がレベル11にならないとこの階はクリアできないかも?」
俺はそう言って相談する。
少なくとも俺は、奴らと同じ素早さ高めのステータスだから、レベルが一つ上がるだけでも素早さで奴らを越えられて、槍操作の稚拙さを補えると思うし、一角も少しでも素早さが上がれば、元々の槍の扱いのうまさで対応できると思う。
2人ともあともう少しって気がするのだ。
まあ、もちろん、琉生もレベルが上がれば対等以上に戦える気はする。ただ、琉生は、次のレベルに上がるまでの経験値が多すぎるのと、剣道道場を始めて間もないし、元々、人と戦うような運動をしていない。まあ、俺もバスケ部だから直接戦うスポーツではないのだが。多少は足しにはなっている気はする。
「そうね、一度帰ってまた明日かしらね。そして、明日は流司クンと一角ちゃんのレベルをあげながら進む感じかな? で、2人のレベルが上がったらこの階のボスと戦えるかな?」
麗美さんがそう言う。
「なんか、足引っ張ってごめんね」
俺は麗美さんに謝る。
「仕方ないわよ。流司クンは戦うことに慣れていない、一角ちゃんは素早さ特化に対応できていない。それだけ。戦っていれば何とかなるわよ」
麗美さんはそう言って笑う。
「私はどうしようもないみたいなんですけど」
明日乃が申し訳なさそうに言う。
「明日乃ちゃんには回復魔法と防御魔法、聖魔法って言う奴を期待しているわ。私には防御魔法は使えないみたいだし」
麗美さんはそう言って明日乃を励ます。
俺もなんか、明日乃の聖魔法というのにかなり期待をしている。
「じゃあ、帰ろうか。琉生、回復魔法かけてもらうか?」
俺は琉生のダメージが気になって聞いてみる。
「大丈夫だよ。昨日よりダメージ少ないし、また寝れば回復するレベルだし」
琉生はそう言って回復魔法を辞退する。
まあ、1回300円のお祈りポイントは確かにあまり使いたくないけどな。
そうして、今回は2階のボス部屋手前での撤退となってしまった。
しかもまだ、2階という。5階をクリアするのはかなり骨が折れるかもしれない。じっくりと攻めよう。
前回同様、北のエントランスまで戻り、階段を上がり、長い廊下を抜けて、出入り口のある南のエントランスへ行く。そして、無念の撤退。ダンジョンから出る。
今日の戦利品
小さいウサギの毛皮 37枚
ニンジン 18本
キャベツ1/8 15個
ウサギの肉 16個
粗悪な青銅の斧 4本
青銅のウサギの爪 10本
うーん、そろそろウサギの肉を食べないと腐りそうだな。
【異世界生活 13日目 16:00】
ダンジョンから出ると、少し日が傾きかけている。
「そう言えば、琉生の物を腐らせる魔法をかけておいた麻の茎がそろそろいいんじゃないか? 帰りに回収して帰ろう」
俺はみんなにそう言う。
「そうだね。で、今日も茎を切り倒して魔法かけとけば明後日にはまたいい感じに茎が腐っていると思うよ」
琉生がそう言う。
「まだいるのか?」
俺は麻の茎叩きを思い出しうんざりする。
「真望ちゃんの話だと、洋服を全員分作るのにも全然足りないし、服ができたら、布のリュックサックとかテントとか作りたいって言ってたね。だからまだまだ麻の茎は必要かな? それに麻糸にしちゃえば腐るものでもないし、置いておけるしあって損はしないんじゃない?」
明日乃がそう言う。
「テントか。確かに日帰りで探索しているうちはいいけど泊りがけになったらテントがあると便利だよな」
俺は布製のテントを想像してちょっと欲しくなる。防水対策はどうするのか気になるが。
「じゃあ、麻の群生地に向かいましょ。私もそこで乾燥魔法かけちゃえば、麻の茎の重さも減らせるでしょ?」
麗美さんがそう言う。
そうだな。麗美さんがいれば乾いた麻の茎になるから少し重さが軽減されるな。
そんな話をして、とりあえず、ダンジョンのある丘を降り、川を少し下って麻の群生地に向かう。
アドバイサー女神様の秘書子さんに麻の具合を確認してもらい、問題なさそうなので泥を川の水で洗ってから麗美さんの乾燥魔法をかけてもらう。
そしてその間他のメンバーは麻の茎をナイフで切り倒し、土に寝かせて、そこに琉生の物を腐らせる魔法をかけてもらう。お祈りポイントの大判振る舞いだな。
琉生の土魔法を5回で500ポイント、麗美さんの水魔法を7回で700ポイント。結構使ってしまった。ぶっちゃけ、濡れたまま持って帰って1日乾かしてから魔法かけてもらった方が良かったかも?
お祈りポイントを確認すると残高が1700まで減ってしまった。
「今日はちょっと、お祈りポイント使いすぎたね」
明日乃がそう言って心配そうな顔をする。
「まあ、昨日、今日と色々貰ったし、ノコギリとか高いものお願いしちゃったからな」
俺はそう言って笑う。
「少し節約しないとね。何かあった時に困るかもしれないし」
明日乃がそう言う。
「そうだな。残高は30000ポイントくらいをキープしておきたいな。まあ、秘書子さんにこの前、聞いたら、貯められる上限99999らしいからあまり貯め過ぎても無駄になるし」
俺はそう言う。
「流司クン、無駄話していると真っ暗になっちゃうよ? 明日乃ちゃんに光魔法使ってもらって、さらに無駄遣いする気?」
麗美さんが冷やかすようにそう言う。
「それはマズいな。急いで帰ろう」
俺はそう言って、麻の茎を担いで帰路に着く。
竹も持って帰りたかったんだが、さすがに麻の茎とダンジョンのドロップアイテム、一緒には無理か。
俺はそんなことを考えながら竹林をスルーする。
【異世界生活 13日目 18:00】
「ただいま。麻の茎を回収に行ったら、帰るのが遅くなっちゃったよ」
俺は、留守番の真望と鈴さんとレオそう言って、拠点で合流する。
真望が嬉しそうに麻の茎を受け取り、物置に運んでいく。ついでにウサギの皮も嬉しそうに受け取っている。
「早めに帰ってきてツリーハウス作り手伝って欲しかったんだけどな」
鈴さんがそう言って俺達を冷やかす。
「ごめんごめん。で、進捗はどんな感じ?」
俺はそう言って今日の状況を聞く。
「そっちこそ、ダンジョン攻略うまくいった?」
鈴さんがそう言って笑う。
「うーん、今日もダメだった。レベル不足とステータスの相性の悪さで苦戦している感じだよ。明日もレベル上げして、明日こそ2階のボスを攻略って感じかな?」
俺は鈴さんに今日の結果を報告する。
そしてついでに、今日の戦利品の青銅の斧や青銅のウサギの爪を渡す。
「今日もたくさんあるわね」
鈴さんがちょっとうんざりする。
「まあ、槍は今回の分で充分かな?5人分と予備を2~3本? これだけあれば一応足りるし、ウサギの爪製のナイフはダンジョン組の人数分は揃っているから、後は鈴さんの分と予備が2~3個あればいいかな?」
俺はそう言う。
「あとは、将来的に、矢の鏃の材料にしてくれ」
一角がそう言う。
「この青銅の爪を鏃にするには金床と金槌が必要かな? あと、火箸、金属を掴むハサミも必要か。金槌は変幻自在の武器でなんとかなるとして、金床と火箸はね。また15000ポイントコースっぽい」
鈴さんがそう言ってがっかりする。
「金床はどう考えても武器じゃないだろ?」
俺はそう突っ込みを入れる。
「まあ、溶かしたら武器になるだろ? ってことかな」
鈴さんがそう言って笑う。
神様の基準、適当すぎるだろ。
そして、実際に交換レートをみたところ、金床は40000ポイントもかかることが分かった。
金床を溶かしたら剣1本できちゃうって事だからか?
金槌は15000ポイント、火箸は25000ポイントだった。鉄を使っている量と構造の複雑さ? 基準がよく分からない。
「で、ツリーハウス作りの方は一人じゃやれることが限られるから、とりあえず、竹を寸法に合わせて切れるだけ切ったから、明日はそれを組む作業かな? まあ、もっと切らないと家にはならないけどね」
鈴さんがそう言う。
「あと、レオとアオに協力してもらって、炭を焼いたよ。貝を焼いて生石灰を作るにしても、鍛冶を始めるにしても木炭は必要だからね。レオとアオに炭の作り方教えたから量産もできるかな? 薪も集めてきてくれるし。というか、眷属達は凄いね。仕事熱心だし、真面目だし、私も欲しくなっちゃった」
鈴さんがそう言う。
一角が何故か自慢げな顔をする。意味不明だ。
一角に続いて、麗美さん、鈴さんまでフライングで眷属召喚しそうなメンバーが増えてしまった。
「あんまり、レオやアオを働かせ過ぎないでよ? ブラック企業じゃないんだから」
俺はそう言って呆れる。
あいつら、言わないと休まなそうだしな。
「レオが過労死する前に、他の眷属も集めてあげないとね」
麗美さんが不吉な事を言う。
「まあ、効率を上げる為にも人手は必要だもんな。あと、眷属をちゃんと定着させる為に必要な変幻自在の武器自体も欲しいし、やっぱり他の島の魔物を倒してダンジョン攻略は急がないとダメか」
俺はそう言って今後の事も考える。
眷属は呼びっぱなしにはできない。対応した精霊の武器を手に入れないと、1年で仮契約解除の消滅が待っているのだ。
「とりあえずは、この島のダンジョンを攻略しないとね」
明日乃がそう言って笑う。
そうだな、ちょっと焦り過ぎたかもしれない。
「私の方は、麻の繊維を取り出す作業で1日終わっちゃったわね。やっぱり、麻糸作りは人手が必要よね。明日もよろしくね。とりあえず、明日も午前中が作業?」
真望がそう言う。
「そうだな。特に急ぐ作業はないけど、鈴さんに槍は作って欲しいかな? 明日乃の分の青銅の槍がまだだし、予備の槍も欲しいからな。明日も午前作業で午後からダンジョンかな?」
俺はそう真望に言う。
「というか、俺達がレベルアップ終わったら、真望も鈴さんもダンジョンに入ってレベルップしてもらうからね。スパルタだよ、スパルタ」
俺はそう言って真望と鈴さんを脅す。
まあ、仲間をバランスよくレベル上げないと色々と効率落ちそうだしな。
そんな感じで情報交換をして、明日乃が夕食を作り出すので、それを待つ間、軽く、麻の茎叩きをして待つ。
それと、明日乃の話では、干し肉がそろそろなくなるらしい。熊肉があと1食分、猪肉があと4食分とのこと明後日には食べつくしてしまうそうだ。
とうとう、ダンジョンで拾ったウサギ肉に手を出すことになった。
「明日、作業の時間に、私が魚でも取りに行くか? いくとしたら魔法で水中眼鏡代わりができる私と麗美さんかな?」
一角がそう言う。
「お祈りポイントが貯まったら、水中眼鏡も頼んでもいいんじゃないか? プラスチックとかゴムはなさそうだけどな」
俺はそう言う。
「水中眼鏡もそこそこ高いから、頻度から考えると魔法でもいい気がしてきたんだよな。魔法は10分100円だしな」
一角がそう言う。
水中眼鏡の材料を集めて、数千ポイント払って神様に作ってもらうのとどっちが得かって話だよな。
ダンジョンにこだわり過ぎて、毎食ウサギ肉になっても飽きそうだし、明日は魚獲りも必要かな?
そんな雑談をしながら夕食が出来上がり、ウサギ鍋を食べることになった。
「ま、まあ、悪くないんじゃないか?」
一角が少し微妙な反応をする。
「海外じゃ、普通に食べられているし、日本でも、ウサギは鳥扱いで仏教の『四つ足を食う』という禁忌を避ける為に食べられていたらしいしね。本当かどうかは知らないけど。戦時中の食糧難にも役立ったらしいよ。毛皮も役に立つしね」
明日乃のウサギ肉うんちくが始まる。
まあ、現代の日本人には馴染みのない肉だよな。
とりあえず、味は脂身の少ないさっぱりした鶏肉って感じ? モモ肉なのにムネ肉みたいなサバサバした感じの味だ。安い鶏肉って感じの味がする。
そして、獣臭い。ちょっと癖があるな。
「まあ、ちょっと癖があるが、いつものネギもどき? 山菜と煮込むとそれほど気にならないしな」
俺はそうフォローする。
今日はウサギ肉とニンジンとキャベツを煮込んだ塩スープだ。それにネギと玉ねぎの中間みたいな山菜とハーブっぽい香草を入れて臭みを抑えているようだ。
「人参とキャベツは久しぶりな感じがして嬉しいわね」
麗美さんがフォローする。やはりウサギ肉の味と臭みが微妙らしい。
不味くはないが微妙。それがウサギ肉の評価だ。
「ちょっと、調理にコツが要りそうだけど、食べられないことはなさそうだよね。コンソメとか胡椒があればもう少し美味しいスープができそうなんだけどね。あと、脂もあまりのってないし、干し肉にもなりそうかな?」
明日乃がそう言う。
とりあえず、古くなりそうなウサギ肉は干し肉に、今日ドロップした分は早めに食べることにする。
日課のお祈りをして眠りにつく。
明日乃には、レオと見張りのとき、みんなが寝静まったころに、いつものように起こされて甘えられる。
明日は少し起きるのが遅くなるかもしれないな。
次話に続く。
ダンジョンはあまり続けて書くとマンネリ化するので解説無しのスキップ気味になる予定です。
誤字脱字報告いつもありがとうございます。改訂しても誤字脱字が残るとはw
【改訂部分】獣化スキルが追加されました。要は明日乃の結界の弱体化に対応する予定のスキルです。イメージ的にはマナで作ったリアル着ぐるみ。デフォルメされていない着ぐるみって感じです。ピッタリ密着したモフモフの着ぐるみで強化服みたいな効果があります。そして、HPのシステム同様、ダメージの10分の1は体で受けるのでちょっと痛いです。
外部義装はまんまきぐるみ、内部義装は鎧を着ている部分だけ鎧と服の間に義装が入る感じ、鎧を着た二足歩行の獣人って感じになります。鎧の防御力を活かすことができます。魔法を受けるときは外部義装の方が優れ、武器で戦うときは内部義装の方が優れる感じです。ぶっちゃけ、〇ァンパイア〇ンターのガ〇ンみたいな見かけです。
軽装義装はまんま、バッ〇マンや〇ャットウーマンな感じで趣味の世界ですw モフモフしていませんし、防御力は下がりますw
まあ、これを登場させるために琉生のリスのケモミミ設定は没になったわけです。リスのリアルきぐるみが戦うシーンはシュールすぎますからねw
あと、ダンジョン産の食料、ウサギ肉を食べ始まました。明日乃、共食いじゃん? って思いましたが、ケモミミは人間なのでセーフですw
昔、ジビエ料理でウサギ肉を食べたことがありますが、まあ、その時のウサギは養殖ウサギだったようであまり臭みはありませんでしたが、骨が多くて食べるところの少ないパサパサの鳥肉って感じでした味は鶏肉食べた方がいいかな? って感じの微妙な味と。
天然のウサギはさらに獣臭いらしいです。




