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三二 元帥と副官と世捨て人

 メガラニカの子供たちが主張するとおり、大人は狡猾で汚い存在なのだろうと、城島は自分自身も含めて冷笑するしかなかった。


 今彼は、太平洋に浮かぶメガラニカの航空母艦「ウェンディ」に軍用の大型ヘリで降り立つ。


 海は時化ており、甲板は波しぶきで濡れていた。


 ヘリから降りる瞬間、強い横風のせいもあり、城島は転びかけたが、力強い腕が彼の肩を掴み救った。


「あ、ありがとうございます」


 城島が礼を述べた相手は、連合軍を統べる立場の男、統括本部参謀総長のウベク元帥だった。


 二メートル近い長身とバランスのとれた筋肉質の体型は、会議室にいるよりも前線での指揮が似合うだろうというのが、城島がつい数時間前に出会った元帥の印象だった。


「ほらほら、さっさと行きましょう。ビショビショになっちゃいますよ」


 元帥に続いて児玉が甲板に立った。


 三人を降ろした連合国のヘリには、パイロットが一人残されているだけだった。エリカが提示した条約締結の条件に、城島とウベク元帥、そして元帥の副官一名という一項があった結果だ。児玉はウベク元帥の副官という肩書を急遽とりつけ、この停戦条約締結の場に加わることに成功していた。


 艦内に入ると、城島は見覚えのある少年中佐を認める。


「ご案内します」


 中佐は大人たちを労うこともなく、事務的に三人を先導して歩きだした。


「パラケルスス氏は、既に来られているのかね」


 低いが、不思議なほどよく響く声音で、ウベク元帥が尋ねたが、先を歩く中佐は答えることはなかった。


 中佐は艦長室と思われる重厚なドアの前で立ち止まると、おもむろに三人の大人たちの身体検査を開始した。


「君、失礼だとは思わないのかね。何か一言あってもいいだろ」


 元帥が問いただしても、中佐の表情は変わらない。彼らは大人たちが重視する礼節や儀礼などは、蔑むべき慣習であること考えていることを、城島は知っていた。彼らと血みどろの戦いを続けてきた元帥も、当然そのことは理解していただろう。しかし、指摘せずにはいられないというのは、元帥が口うるさい老人であるからなのか。冷静にそう分析している自分自信を、城島は不思議に感じていた。


「どうぞお入りください」


 念入りなボディチェックを終えた中佐は、機械的な表情のまま、三人を扉の中へ招き入れた。



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