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三 パラケルスス

 一人の人物から、世界の指導者に対して同時に電子メールが配信された。指導者たちの個人的なアドレスへの送信であったことから、当初は誰もが悪戯の類であると認識していたが、指導者たちがお互いに情報交換を進めることで、メールの信憑性が高まっていった。


 その内容は以下のとおり。




 私はパラケルスス。エリクシルの創造者である。


 老化という不条理を受け入れられぬ人々に対して、私はその秘術を伝える用意がある。


 南極点に君たち指導者が集い、私の要求を了承することがその条件となる。


 時は九月二四日正午。南極点の半径十キロ圏内は、君たち指導者以外の立ち入りを禁ず。


 集わぬ国への、エリクシルの供給はない。




 パラケルススとは、十六世紀のルネサンス期に活躍した著名な医師兼錬金術師の名前である。賢者の石を持っていたと伝えられている人物だった。


 メールの送信者が、このパラケルススを自らに当てはめていることは自明であった。


 そしてエリクシルとは、賢者の石と同一視される不老不死の秘薬の名称である。


 『ステイ』の効果は、このエリクシルを称しても相応しいものだと人々は認めるだろう。




 この時代においても、南極大陸は依然開拓が進んではいなかった。


 南極点においても小規模な観測設備が建てられているのみであり、その建物は複数国の所有という形となっていた。


 その場所に、パラケルススと名乗る人物が現れるということだろう。


 各国の指導者はすぐさま合同会議を開催し、その人物との話し合いを求めることで合意した。


 パラケルススがどのような条件を提示するのかは全く不明であったが、この世界はすでに『ステイ』なしでは成り立たぬところまで追い詰められていた。


 中には護衛を伴うことができないということで怖気づく首脳もいたが、総勢二百名で立ち向かうことができるということが、指導者たちを勢いづかせた。


 この人物を拘束し、『ステイ』の製法を吐きださせてやると息巻く欧州の大統領もいた。


 そして彼らは、二十機の軍用ヘリに相乗りし、指定された時間の二時間前に南極点へと到着した。軍用ヘリは、南極点で観測を続けていた研究者たちを乗せて飛び去った。



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