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十九 世代間戦争

 メガラニカの国力は飛躍的に成長していた。


 産業用のドームが八基建設され、電子機器を主体とした生産が活発化し、農業用の効率的なドームが十四基誕生し、自給自足に加えて農産物の輸出も進む。


 世界中から若者が次々に集い、人口は二千万を超える。


 GNPは世界第二〇位にまで上昇し、毎年の経済成長率は二桁を下回ることはなかった。


 こうしたメガラニカの躍進の裏には、パラケルススの支援があった。




 若さという帰属意識により設立した新国家メガラニカと、世界に対して巨大な影響力を誇るパラケルススが手を組んだという事実を、他の先進各国が苦々しく思うことは自然な成り行きである。


 各国はメガラニカに対して不当な関税をかけ、資源の供給を制約することにより、国力の増大を押しとどめようと画策したが、パラケルススが別ルートでメガラニカの輸出入を手助けしてしまう。パラケルススには頭が上がらぬ各国指導者は、より直接的な形でメガラニカへの圧力を強めていった。軍事力の派遣である。南極大陸はその周辺を世界中の軍艦が取り囲み、メガラニカ関係の船籍はかたっぱしから拿捕されるという事態に陥る。パラケルススの手配により、一部の物資は通貨することができたが、メガラニカは世界で孤立を深めていた。


「力には力を」


 首都『オィンガス』では毎日のように、国民によるデモ行進が行われた。


 国民は各国政府の対応を批判し、弱腰の政府を糾弾した。


 こうした国民の声に押され、遂にメガラニカ首脳部は軍隊を設立することを宣言する。自衛の為と称し、陸海空軍を驚くべきスピードで組織した。この裏にも当然のように、パラケルススの力が働いている。各国の武器商人を通じて兵器を調達し、有能な指導者を引き抜き効果的な訓練も施された。




 若者だけで構成される組織であることから、メガラニカの軍は歴史上で見ても類稀な血の気の多い好戦的な特徴を持っていた。


 軍部は政治上の折衝など顧みず、瞬く間に暴走した。


 海上を封鎖していた各国の艦隊に対して、宣戦布告なしに砲撃を開始する。


 各国の指揮官は、本国に対して交戦の許可を得るなどその初動が遅れてしまい、多くの船が沈められる結果に至る。国際法も無視したメガラニカ軍は、撃沈した船の乗組員を救うこともせず、ただ殺戮を繰り返した。与えられた玩具で遊ばずにはいられない子供たちは勢いづき、連戦連勝を続ける。そして包囲は解かれた。しかし、大人たちもただ黙って撤退したわけではない。先にメガラニカに攻撃させたことにより、非の打ちどころのない大義名分を得た各国政府は、メガラニカへと攻め込むことができるようになったのだ。




 こうして、史上初の世代国家メガラニカは、史上初となる世代間戦争へ突入した。



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