お仕事の斡旋
登場する人物、団体、製品名、その他固有名称はすべて空想・架空のもので、現実の企業、団体、個人とまったく関わりはありません。
「すみません。話が最初に戻るんですが、いったい私に何が起こったんでしょう」
「前置きが長くて悪いね、じゃ説明するよ。
まず異世界ってのが存在している。そこにも僕と同じような神様的なモノが居て同じような世界を運営している。管理者間にも横の繋がりがあってね。
僕の知り合いが管理する世界の住人が、あの高校の教室に『穴』を開けて高校生数十人を異世界召喚の形で魂だけ攫って行ったんだよ」
「えーっと。魂って何でしょう」
「知的生命体の核になるのが魂、ゴーストって呼ぶ人もいたね。」
「そんなもの、存在しないってのが科学の常識だと思うんですが?」
「おかしいと思わない?君は電子回路とか理解してるよね。人間の脳の構造、生化学的な機能で、どうやったら膨大な記憶を保持することができる?生化学程度の処理速度で、どうやって膨大な画像処理を高速に実現できると思う?
なにか『別のモノ』が介在しないとムリでしょ。それを補完するものがゴースト。ゴーストが宿らないとAIは実現しないって誰か言ってなかったっけ?」
なんか蜘蛛型ロボットが出てきそうな話になってきた…
「なんかオカルト的なんですが。オカルトって非科学の最たるものだと思うのですが」
「進歩した科学は魔術・オカルトと見分けが付かないって言うでしょ」
まあそうなんですが。
「今回の爆発事故の件はそれとして、私がここに居るのはなぜなんでしょう」
「話がそれちゃったね。
まず、神様的なモノは知的生命体の信心を集めたいわけだ、多ければ多いほど良い。それに到達するのは、圧倒的な人口をまかなえる『科学』が都合が良いって事。これは僕の世界で非常にうまく行っている。ゴーストの質も高く神力も大きい。
今回召喚してゴースト掻っ攫って行った異世界も同じようにやろうとしてたんだけど『魔素』とか言うウィルス的なものが紛れ込んじゃって、魔法有り、スキル有りのゲームみたいな世界になっているんだ。
こうなると魔法でカバーできることが多く『科学』的進歩は起きない。魔物なんて変質したモノが蔓延って人が死ぬから人口は増えないし神力は集まらない。こっちの中世暗黒時代みたいなのが、かれこれ5000年ぐらい続いてるらしい。
その上『女神』なんてものが自然発生して一大宗教を構成しちゃてるらしい。
さらに魔物駆除の戦力をよその世界から掻っ攫って行く。せっかく育てた膨大な神力をためた大事な僕の信者をだよ。許せんよね」
「大まかな話は理解したと思いますが、なぜ私はここに居るのでしょう」
「今回の召喚、というか強奪は、高校生40人以上を殺害。その原資となる神力は殺した高校生半分のゴーストを生贄にして行ってるんだよ。自分の懐を痛めず、他人の、いや僕の財布の金使って、ひどいでしょ」
「ごもっともなんですが、いまだに私がここに居る理由が…」
「あちらの世界の管理者に頼まれてるのよ。何とかしてくれと。そこで君だ、ちょうど良いところにいたので、君に異世界に行ってもらい、色々やってもらおうと…
いや、丁度良い所に居たし老い先短いロートルだから捨てて良いかなって…」
「いや、それわたしの仕事じゃ無いですよね。すみませんが帰していただけないかと…」
「あれっ?帰るの。やめたほうがいいよー
高校で爆発が起こって40人以上死んでるよね。そこに大きな箱を運び込んだ業者の男。爆発現場の真下で作業してた不審者」
言われてみればその通り。テロ実行犯確定だ、コレは。
「僕は親切心で君を救ってあげたと言って過言は無い!」
あー詰んでる。
「分かりました。ご厚意に甘えさせていただき、よろしくお願いいたします」
「それじゃ、向こうに行ってくれるということで、片道切符になるけどヨロシク」