牢屋にて
登場する人物、団体、製品名、その他固有名称はすべて空想・架空のもので、現実の企業、団体、個人とまったく関わりはありません。
兵士に連れられ城の地下へ階段を降りる。ツーンとした匂い、アンモニア臭が漂ってる。今日のお宿は鉄格子の中らしい。
「入れ」
「私、なんか悪い事したんでしょうか」
聞き返すと
「お前の存在自体が悪」
理不尽な。有る意味正解なんだけど
「お前がこの城で働けるよう、いろいろ気を回してやったんだぞ。それを何だ、この能無し。どこへ行っても無能を晒す。所詮、召喚者なぞ奴隷以下、家畜の身分って事だな」
あれで気を回してたんだ、殺して良いとか言ってましたけど
「とりあえず、城で見たこと聞いたことは一切口外するな。これは当たり前のことだ。そのくらいなら守れるだろう」
「はい、ここでの見聞は死ぬまで一切しゃべりません」
「よろしい」
そう言うと兵士は帰って行った。
牢屋といえど看守はいないようだ。特に監視は無い。私以外のお客さんもいないようだ。さて、技能の検証といきましょう。
まず【計算】。これは表計算が頭の中にある、というより頭がスパコンの計算力になった感じ。計算がすばやくできないと収集データが処理ができない。集めるティコ・ブライエと解析するヨハネス・ケプラーの関係だね。科学の進歩に数学は必要、科学チートにスパコン並みの計算能力は必須となる。残りの2つの技能と比べると地味なんだけど、計算がないと、他の技能が機能しない。数学は科学の召使、なんて言葉があるように。そして数学は科学の女王。
お次は【計測】。すべてのものが数値情報なり解析結果として認識できる。科学の進歩は、計測技術、計測機器の開発と精度向上の歴史なんだよ。この計測が最初からすべて高精度で可能になる、コレだけでチートの極み。
さらに、ラノベでおなじみ「ステータス」だが、これも計測値として知ることができる。計測で地獄耳も可能。赤外線を感知して暗視ゴーグル代わりに、サーモグラフィーや蝙蝠のように音波で物を見ること、電波を出せたらレーダーになるんだが、これはまだムリ。ガスクロマトグラフィーみたいなこともできるので食品の成分検査や毒の混入も検出可能。
最後に【粒子操作】。これは本当にオカルト・ファンタジーの極み。これが可能であれば、科学を馬鹿にするのもいい加減にしろ、と多方からお叱りを受けるだろう。対象の粒子とは、麦粒・砂粒なんてレベルじゃない。分子、原子はもちろん、素粒子からクォークまでいじれる「らしい」。
電子をいじるとなんでもできる。ほとんどの物質は電子で結合している。コレをいじると、物は形を維持できない。
操作自体は組み立てにも使える。分子構造さえ知っていれば必要な素材、たとえば、綿埃とアンモニアから綿火薬を合成できる。ガソリンを炭素と水素だけで合成できてしまう。何でも作れるが無から作るのはムリ、何かしらの材料は必要となる。
合成に必要なエネルギーは…ファンタジーなのでどっかからやってくる。出所は知らん、たぶん神力だろう。無から生み出せない、といった端から膨大なエネルギーを不思議な場所から調達してるあたり、とってもファンタジー仕様。保存則どこに行った。
光も粒子的性質があるので、こいつを操作し自身の体をよけて通すと、なんと光学迷彩が実現する。まあゆがんで見えるけどね。光学迷彩を纏ってる間、自分から外が見えないという欠点があるが…、音波ソナーで対応できるか確認しよう。将来的に拡散中性子ビーム砲とかやって見たい。
さて、スキルが確認できたところで、依頼された案件を片付けますか、下請け派遣労働者ですし…