技能判断
登場する人物、団体、製品名、その他固有名称はすべて空想・架空のもので、現実の企業、団体、個人とまったく関わりはありません。
王女様の前に列を作る。ひいふうみ・・20人と言っていたが、確かに20人いる。ほとんど男子、女子は5名のようだ。おっとさっきのヲタ君、なにやら「ステータス」だとか「メニュー」だとかを力こぶしいっぱい握り締め小声で唱えている。そんなのありませんって。
王女様の前に大きな水の入った盥、先頭のイケメン君が盥のふちに手を掛けて念じてる風。王女様が紙を取り出し水面に浮かべると、あら不思議、紙の上に何か出てきた。遠くて見えない。
「この文字はこの世界のものではないので、お読みいただけますか?」
王女様がイケメン君に聞く。
「剣聖とあります。剣術ランク5、体術ランク5と書かれています」
「おおっ。素晴らしいです。国最強の近衛師団長でさえ剣術のランクは3止まりなのです」
照れるイケメン君。後ろの女子が指でツンツンしてる。リア充、爆発しろ
技能判断が続く。火魔術とか水とか風とか派手な魔術系の技能を持った子が多いみたいだ。肉体系の剣術、格闘術とかは少ないのか、ほとんどが魔術系。女の子は聖魔術とか治療魔術ってパターン通り。
判定用紙を手に手に、通知表受け取った気分なのか、ワイワイ、ガヤガヤと楽しそう。俺のランクが高いとか、雷撃魔術持ちは俺だけだとか…
「空間収納がある!」と喜んでる子、横から爺さんに「それは全員持っとるよ」と言われて凹んでる。
「鑑定持ちは居ないのか?」とイケメン君。爺さんに「そんな技能はありゃせんよ」と。
この世界にはアカシックレコードなんてものは無いらしい。大規模データベースとその検索技術。『鑑定能力』ってのは、最近流行のビッグデータ関連技術なんだろう。
ちなみヲタ君は
「忍術でろ、忍術でろ・・・」
なんて唱えてたけど、出たのは「土魔術」。土遁の術でも、まあがんばってヨロシク
さて、最後の私の番だ
盥に手を置き念じる。水面に浮いた紙には
「計測、計算、粒子操作」
と出た。おー究極のチートだ。
「これはなんですの?読めませんが」
王女様、今まで読めない振りしてたんですね。普通の技能の日本語なら読める。読めないふりは「正しく申告するか」「嘘をつかないか」の確認だったと。カワイイ顔して怖っ
さてやっと私の発言機会がやってき…
「これは、計測、計算、粒子操作ですねー」
横からイケメン君。そりゃないよ。
「して、その能力はいかなるものなんじゃ?」
魔道師の爺さんが聞いてきた。
説明しようとすると、また横からイケメン君が
「説明が下に書いてありますね。
計測はものの大きさ重さなどを正確に知る。
計算はすばやく正確に計算する。
粒子操作は麦と砂粒を分離する、など
と書かれてます」
と答えてしまった。まあそう書いてはあるが
「なんじゃ、商人の技能ではないか。これじゃ戦場には立てん。スカじゃのう」
「使えねー。見た目どおりのゴミ人間ってこったなー」
男子が騒いでる。みんな笑ってるが、これはチートなんだよチート。
「無限収納も無いのか。戦士なら必ず持つ技能も無いとなると、商人としても使えん。どうしようもないのー」
魔道師爺さん、ひどいね。まあいいけど
「先ほどからおぬしを見るに、他の戦士の大きな魔力量と比較して気のせいかと思うておうたが、まったく魔力を感じんのだがどういうことだ?
そこの水晶に触れてみろ」
言われたとおり、示された水晶玉に右手で触れる。何も起こらない。ということも無く、手の平に「パッシッ」とか「ピシッ」とか電撃みたいな感触がある。なんだろう?これのおかげで、なんかびくびくしながら水晶に手を出してるように見える。
「水晶がまったく光らんということは魔力がまったく無いということじゃが?女神様の祝福はどうなっとるんじゃ」
そんなものありませんが
「来てしまったものは仕方が無いの。無駄飯食わすわけにもいかんので、文官の下働きでもしてもらうとしよう」
おっと私の意見はどこにも無いようです。ここまで一切発言してないですが、私のターンはどこ?
兵士の一人がやってきて手を掴む
「こっちだ」
兵士に引っ張られて部屋から出された。どこに連れて行かれるのやら…
「それでは他の皆様は魔力量の測定後、本日よりお泊りいただくお部屋にご案内します」
そんな王女様の声が聞こえた