召喚
登場する人物、団体、製品名、その他固有名称はすべて空想・架空のもので、現実の企業、団体、個人とまったく関わりはありません。
大きな部屋にいる。部屋の床・中央に直径1メートルぐらいの円盤が埋め込まれている。円盤には何やら模様のようなものが描かれており、ぼんやりと光っている。魔方陣だろうか?
あたりには記憶にある制服の高校生が20人ほど、円盤を囲むよう立ち並ぶ。さっきまでいた高校の生徒だろう。
壁際に少し高くなった台状の部分がある。その上に豪華なドレスを着た若い女性が立っている。ティアラで髪を飾ってるようだ。その脇には、たいそうな髭を生やしローブを着た偉そうな老人、同じような服装の男が数人杖を持って立っている、たぶんファンタジーの魔法使いとか魔道士とかだろうか?
それを守るようにフルプレートを着込み槍を携えた兵士が数人、壁際には同じ様な兵士が十数人、こちらを囲んでいる。
これはラノベで有名な「クラス召喚」というヤツなんだろうか。そこに爺の域に両足突っ込んだ私がいる。場違いにもほどがある。こちらを見る目が痛い。
「召喚に応じていただきました皆様、真にありがとうございます」
なんか始まった。ドレスの娘が話を切り出す、まあ聞いてみるか。
「私はこの国の第三王女でございます。女神様の呼びかけに応じて頂きました皆様方には最大の感謝を申し上げます。この度は私の国をお救いいただきたく、儀式を行い召喚した次第です」
イケメン男子がなにか言い出した
「ここはどこだ。俺たちは教室にいたはずだ。なぜこんな場所にいる」
おやっ?転移前に女神様とやらからレクチャー受けてるんじゃないの?人の話を聞かない系かな。まあ気が動転してるって感じか。
偉そううな老人が、王女を庇う様に前に出て話し出す
「宮廷筆頭魔導師であるわしから説明させていただこう
この国は今、魔物と呼ばれる脅威にさらされておる。魔物と対抗し戦えるものが少ない。女神様にお願いし、その助けとなる戦士を異世界から呼び出す召喚の儀を執り行った。その結果、呼び出しに応じて現れたのがおぬしらということじゃ」
「それは異世界から人を拉致して戦わせるって事じゃないのか?拉致誘拐は犯罪だぞ!」
おっと威勢のいいヤツが騒いでるが
「わしらは、女神様にお願いし、おぬしらに来てもらっただけじゃが?
女神様が嫌がる人間を遣すとは思えんのだが、そのほう召喚を拒絶したのかの」
おっ威勢のいい兄ちゃん、黙って下向いたぞ。
どうやら女神様の異世界召喚レクチャーには異世界へ行く行かないの選択権があったらしい。女神様には会ってないが、まあ私自身も選択肢で異世界転移を選んだのだが…半分強制だったことは、しょうがない。
拉致誘拐発言は今後の待遇を良くするためのマウント取りなんだろう。
ラノベ読んだことがあるなら、このあたりでやれ「勇者」だ「魔王の復活」だって話が出るんだろうが、女神様とやらからレクチャー受けてるなら、そんな話は出ない。
この召喚は、人類の生活圏を魔物と呼ばれる敵性生物から防衛する戦力補充って事だ。これはレクチャー受けたから知ってる。
「本当に日本に帰れるんですよね」
髪をポニーにまとめたお嬢さんが質問した。
「召喚・送還に使う魔方陣は魔力を貯めるため20年に1度しか使えん。送還は20年後となる。送還と召喚とは対で行い、ここで召喚した者たちを返し、同数の者を新たに呼び出す形になる。
こちらの世界とおぬしらが暮らしていた世界とは時間の流れが異なると聞く。こちらで齢を重ねても送還されると経過した年は元通り、召喚前に暮らしていたそのままの状態で戻ると聞いておる。
長い長い夢を見た、という感じで元の生活に戻るとの事よ」
「それが嘘じゃないとなぜ分かるの」
粘るねえ。お嬢さんの再質問だ。こんな状況で嘘も真もないだろうに。
「わしはの。女神様のお告げを信じておる。それ以外に信じられるものはない。疑ってもしようがない事よ」
「戦いたくないってのは有りなのか?」
ヲタっぽい小太り君が質問した。彼ならヒャッハーとか言いながら俺Tsueeeeしそうなんだがなー。
「戦士といっても色々じゃ。前線で大火力を出す輩もおるが、後方支援も大事じゃ。医療回復系や兵站支援、生産系などの役割もある。立派な仕事じゃよ。ただし遊んで暮らしたい、というのは困るのう。最初は支援できるが、国としてもカツカツの状況じゃ。自分の食い扶持は自分で稼いでもらうことになろう。
軍に属し、20年後の召喚の儀まで生き残り、立派にお役目を終えて元の世界に戻るよう心がけて欲しい物よの。
何よりも、生き残ることが重要じゃ。おぬしらが生き残らん限り、次の召喚ができんからの。
戦いたくなくば、それでかまわんよ。ただ女神様の祝福を受けたおぬしらは、この世界の者と比べ、すべてにおいて強い。もったいないのう。後方の農村でひっそり20年待つのもかまわんが、この世界、おぬしらの世界と比べて娯楽がないからの。暇で死ぬかも知れんぞ、フォッフォッフォ
さての。それではおぬしらには適正判断と魔力判断を受けてもらうが、良いかの」
おっテンプレっぽい展開をご老人が言い出した。
第三王女様が兵士に水の入った盥の様なものと水晶玉だろうか?丸いガラス玉のようなものとそれを置く机のようなものを持ってこさせる。机の上の盥を置き前に出た。
「女神様の召喚に応じていただいた方々は、特別な技能と称号、それに加え膨大な魔力が与えられます。
まずは皆様の技能を確認していただき、次に称号と魔力量の検査を行っていただきます」
筆頭魔道師の爺が、こちらをキッと睨んで何か言ってきた
「ところでのう。そこの毛色の違う貴様、おぬしは何なんじゃ?戦士召喚は、若く戦えるものを招くものなんじゃが」
おっと注目されてしまった。こまった。どうしよう・・・
「その人、学校に来ていた業者の人です」
メガネに編みこんだ髪、委員長風の女の子に解説いただいた、真にありがたい。にっこり会釈したら
「きもっ!」
うっ・・・
「業者とは何じゃ?」
これは私めが説明を・・・と思ったら横槍が
「学校にパソコンとかを運び入れてた作業員でしょ」
自分、何もしゃべれないんですが
「荷物運びの人足ですか?なぜそのような卑しいものがこの場に」
おっと、王女様それはないですよ
「わしと歳も変わらんじゃじゃろう。20年後生き残っておるのか?戦士召喚は20人のはず、現れたのは21人。異物が紛れ込んだのじゃろうか?まあ、いいじゃろ。使えるものなら猫の手でも、と言うしの」
ヒドイ!