プロローグ
初めての投稿です。色々おかしい所もありましょうが、生暖かい目で見逃してやってください。
なろう小説を多数拝読し、自分にも書けるか?とやってみましたが、無理ですね。才能ありません。
なお登場する人物、団体、製品名、その他固有名称はすべて空想・架空のもので、現実の企業、団体、個人とまったく関わりはありません。
私の仕事はカスタマ・エンジニア。CEと横文字で書くと聞こえは良いが、まあ機械とかパソコンとかの修理工ってことだ。家電の世界だとサービス・エンジニアと呼ばれるが、パソコンやネットワークがらみの仕事なんでCEと呼ばれている。
客先で作業する関係上、名の有る企業でないと仕事は請けられない。単純労働と思われているので単価も安い。自ずと受注した会社は作業全体を下請けに丸投げだ。受けた下請けも下へとパス、それを拾う玉拾い、じゃなかった私のような個人事業主が実作業を受ける。請負に最低賃金なんて縛りはない。当然のように上から中抜き、中抜きで削り取られた末端の委託費は、時給換算300円なんて事になる。
やれ社蓄だ非正規雇用で先がないとかぼやいている諸君、君たちは一応「法」が守ってくれてるんだよ。下には下がある…
この仕事に就く前は、そこそこの会社でSEとかPMとか呼ばれる企業戦士、花形IT業種の最先端で開発業務をやっていた。まあ人付き合いとか年齢的な状況でドロップアウト。派遣で働いていたこともあるが、今では日雇いに等しい個人事業主。初老も通り越して、どっぷり高齢者の領域。
今回請け負ったのは学校に設置したリース品のパソコン保守。動かなくなったパソコンを持ってきたヤツと置き換える単純なお仕事だ。運び込んだヤツを設置して、USBから環境やアプリをリカバリーするんだが、とても頭脳労働には見えない。
出先によってはスーツにネクタイなんだが、ネットワーク配線で床下に潜ったりもするんで、今日は作業着である。ワイシャツ・ネクタイの上に作業着、工事現場スタイルだね。ヘルメットはないが、つま先に鉄板入りの安全靴は履いている。
こんな格好だから「引越し作業員」と勘違いされる。やってることは車からダンボール持ってきて開梱・設置、古いPC搬出してるだけに見える。外見が悪い。おまけに動作確認中はサボってる風にしか見えない。
「おい、そこの君!レイアウト変更するから棚と机を運んどいて」
怒鳴られた。まあ承りますよ。拒絶すると上の会社に文句言われて仕事干されるから
さて、仕事を進めるとしよう。私立高校の共用パソコン保守とやらなんだが、この手はワンタッチで初期状態に戻る便利物が多く、動かない時はハード交換で対応する。
学生諸君がハッカー気取りで色々いじってくれるんですよ。物理的に抜いた、壊したは当たり前、システムファイル消す、ネットワーク設定いじる、ディスクをフォーマットする、得体の知れないソフトを入れる…
本来「サルでも直せる」はずの簡単復旧システムが起動しないわけ。この手は故障の切り分けがきっちりできるエンジニアが来ないと修復できんのよ。
引越し業者にしか見えないが、それなりの知識と技能を持った頭脳労働職、それが場末のCEさんこと私なんだ。
ぼやくのもやめよう。暗くなる。
起動しなヤツがあるとかの修理依頼だったけど、BIOSパスワードとか設定されてるヤツが数台。対応は簡単、ハードリセットしてリカバーすればよい。校舎の2階まで交換用PC持ち込んだんだけど無駄骨になった。依頼元としてはコストが減って美味しいだろうけど、こっちは労力掛けても、お賃金は変わらない。時間ばかり過ぎて行く。
そんな作業も完了し、帰り支度を始めていると、頭上からドンという爆音。
「うをっ」
教室中央の照明やら天板やらがバリバリ音を立てて崩れてきた。天井が円の中央が膨らむように下がってきて、破片がボロボロ堕ちてくる。とにかく逃げる。出口付近にいたのが幸い、引き戸を開け廊下に出た。
見ると教室の天井というか上の階の床が円形に崩れ抜けた。コンクリートの天井、いや床がこんな形で壊れるのは構造的におかしい。よく分からんが無事に逃げられたのか?
呆然としていると、天井に開いた穴から色んなものが落ち込んでくる。机や椅子、コンクリートだった瓦礫のようなもの、煙のように巻き上がる砂埃、上から椅子や机に混じって人の手足や胴体、頭がバラバラ堕ちてきた。むせ返る鉄の匂い、悲鳴と叫び声。野次馬が廊下に出てきた。
「あぁ、こりゃダメだ。今日の作業費、出るのか?」
いや、逃げないとやばい。校舎を出るため階段へ走ろう、と思ったら足元が光った。思うまもなく意識が暗転する…