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大英雄の息子の日常冒険譚  作者: いかぽん
エピソード2 薬草採取

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第16話 寝相が悪い先輩

 ケヴィンが冒険者になってから、初めての野宿をした朝。


 毛布一枚での眠りに少しの寒さを覚えながら、少年はゆっくりと目を覚ます。


「んぅ……」


「おはようケヴィン! よく眠れたか?」


「んあ、ワウさん……おはようございます……」


 まぶたを開いたケヴィンの目の前には、狼耳の銀髪美少女の姿があった。


 狼牙族の少女はケヴィンの前にしゃがみ込んで、嬉しそうにニコニコと少年を見つめている。


「ふわぁああああっ……!」


 ケヴィンは包まっていた毛布から抜け出すと、大きなあくびとともに伸びをする。

 早朝の冷たくてさわやかな空気が、少年の肺に入ってきた。


 ケヴィンは寝ぼけ眼の状態から徐々に覚醒しつつ、浮かんできた疑問を口にする。


「……ていうかワウさん、なんで俺のこと見てたんですか……?」


「ケヴィンの寝顔がかわいかったからだぞ! 天使みたいだった!」


「…………。……それ、男子に言うことじゃない気がしますよ」


「そうか? オスでも寝顔がかわいいはよく聞くぞ。それよりケヴィン、朝食の準備だ」


「あ、はい」


 ケヴィンは起きて、活動を始める。

 見ればジャスミンも起きていて、焚火に追加の薪をくべるなどしていた。


 盗賊のお姉さんは、からっとした笑顔をケヴィンに向けてくる。


「おはよーケヴィン。どうやった、冒険者になって初めての野宿は?」


「えっと……毛布一枚で寝ると、少し寒いですね」


「あー、まぁな。冒険者パーティの中には、テントを担いで持ち運んでるとこもあるな。力持ちがおらんと、ちょいしんどいけど」


「じゃあ俺、その荷物持ちやりましょうか? 鍛えてますからそのぐらい余裕ですし、さらなる体力をつける鍛錬にもなりますし」


「あははっ、どんだけ鍛えたら気が済むんよ少年は。でもそれもいいかもしれんね。街に戻ったら検討しよか。──したらケヴィンは、ルシアを起こしてくれるか? その子、意外とお寝坊さんなんよ」


「あ、はい。分かりました」


 言われて見れば、魔導士のルシアは確かに、いまだにすぅすぅと眠っていた。


 ケヴィンはルシアのもとでしゃがみ込んで、毛布の上から少女をゆすり起こす。


「ルシアさん、朝ですよ。起きてください」


「んー……むにゃむにゃ……あと五分……」


 だがルシアは毛布をきゅっと抱きしめて、芋虫のように丸くなってしまう。

 断固として起きないぞという姿勢だ。


 なるほど、確かに寝起きが悪いなと思いつつ、少年はさらに強くゆすり起こす。


「ほらルシアさん、起きてください」


「んぅー……うるさいなぁ……まだ寝るのぉ……」


「そんなこと言ってないで。ルシアさん、ルシアさんってば」


「むぅ、うるさいぞ……そんなうるさいやつはぁ、こうしてやる……」


「わっ……!」


 ケヴィンは寝ぼけた少女に手首をつかまれ、ぐいと引っ張られた。

 まったく予想外の出来事に、少年は思わず少女の上に倒れ込んでしまう。


「えへー……キミも一緒に寝ればいいよ……うにゅう……」


「なっ……えっ……!?」


 しかも寝ぼけたルシアは、両腕でぎゅっとケヴィンに抱きついてきた。

 少年はただただ混乱するしかない。


「あー、言っとくけど寝相も悪いからなその子……って、ありゃりゃ。すごいことになってんね」


「寝相が悪いなんてもんじゃないですよ!」


 じたばたと暴れるケヴィンを見て、ジャスミンはケラケラと笑っていた。




「……面目次第もございません」


 朝食の場で、魔導士の少女は恥ずかしそうに顔を赤らめていた。


 彼女曰く、気を許した相手だけの場だと寝ているときでもガードが外れて、ときどきひどい癖が出てしまうのだそうだ。

 不思議とモンスターの襲撃時だけは、すぐに起きられるらしいが。


「ま、ええやん。少年も役得やったやろ?」


「それはそうですけど……って、何を言わせるんですか!」


「あはははっ、ケヴィンは正直者でかわいいな」


「仲間同士で仲良くするのはいいことだぞ。だからワウもケヴィンに抱きついていいか?」


「だ、ダメです!」


「……ルシアはいいけど、ワウはダメなのか? ワウはケヴィンに嫌われてるのか? ぐすんっ」


「ち、違います! そういうことじゃなくて……!」


「じゃあケヴィン、うちは? うちはどう?」


「ジャスミンさんまで乗っからないでください!」


「ううっ……全部、私が悪いんですぅ……しくしく……」


 そんな賑やかな朝食も終えて、冒険者たちは野営の場から出立する。


 ここから先は、歌声山の登山になる。

 冒険者たちは気を引き締めなおして、山頂への道を登り始めた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 早朝の冷たくてさわやかな空気が、少年の胃に入ってきた。 朝、冷たい空気の中深呼吸すると、空気は胃ではなく、肺に入ると思います。
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