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思い出巡り

作者: アオニシキ

 テレビのニュースもつまらなくなってボヤっと見ていた青年のスマホに電話がかかって来た。青年はこの人はちょうど今忙しいはずなのに大丈夫かなぁ? と思った。スマホに移った名前の人はつまらないニュースをにぎわせているその人だったから。


「私たちの高校の部室に集合。思い出巡りに付き合ってほしい。これは強制で一分後に転移させる。靴を持ってきなさい」


 電話をとったらそれだけ告げて電話は繋がりっぱなしになる。青年は変わらないなと思いながら玄関から素直に靴を持ち出した。前後も何が始まるのかも分からない時はとりあえず彼女に従っておくことにする、それは青年のかつてのスタンスだった。


「急ですねぇ。いえ全然いいんですけどね。今も靴を出してますし。上履きとか入りませんか」


「なら早くしてほしい。あと上履きはいらない」


「そうですか。ならこちらは準備出来ました」


 青年がそう言ったとたん青年はその場からフッと消え去った。テレビも自然と消えていた。




 青年の前にはすらっとしたスレンダー美女が立っていた。ロングヘアを後ろで一つにまとめている。不機嫌なのかぶすっとしている。知らない人から見たら何がそんなに気に入らないのか理解に苦しむだろう。服装は涼し気なシャツである。


「なんとなく学生時代を思い出しますね」


 そんな声をかけるのにためらいそうな美女に対して青年は穏やかに話しかける。青年にとっては彼女が不思議な技術で自分を急な移動をさせるのも、不機嫌になった理由もわからない彼女に話しかけるのも、慣れたものなのだ。


 むしろ懐かしいなぁ、と場違いにも思う程度である。青年は割とマイペースだった。


「そうね。目的が思い出巡りだしせっかくだからあの頃みたいに呼んで」


「えぇ? まあ、いいですけど……先輩? でいいですかね」


「うん。懐かしい」


 ふわりと彼女の表情が和らいだ。こんなことを言うのだから疲れてるんだろなぁ、と青年はボンヤリと思った。そうしていたら彼女は校舎の玄関口に向かっていた。早くいくわよ、とわずかに頬を染めながら速足で進む。その後ろを本当に懐かしいなぁ、と思いながら追いかける青年だった。




玄関を抜けてすぐの場所に自動販売機がある。かつて学生が体育や部活後にお金を落とした機械も今は販売中と光ることもなく、販促を高らかに歌う事もなく、ただそこにたたずんでいた。


 彼女はその自販機をじっと見ていた。いや睨んでいたという方が正しいだろう、それほどにきつく見つめていた。


「十円貸しましょうか?」


 そこに青年はあまりにも場違いなことを言った。この自販機は動いていないのに、もはや商業も行き詰った空間であまりにも日常めいていた。


 だが、それでいいのだ。彼女の目的は『思い出巡り』なのだから。


「なつかしいな。……返すのは明日でいいか?」


「そうですね。ではまた明日ここで」


「「フッ、ハハハ」」


 かつて二人で行ったやり取り。少し端折っていたり配役は逆だったりしているが確かに覚えている。青年は彼女にこのやり取りの裏側を仲良くなってからカミングアウトされ驚いた二人の出会いの記憶である。それを今ここで再現したのが無性におかしかったのだ。


 始まりに相応しく、終わりとしてもなんだかおかしい。


「よかった。先輩が楽しそうで。……つぎは部室ですか?」


「ああ。そこで色々話そう」


 そう言って部室までやって来た二人。ボロボロの張り紙をさすって扉を引いて懐かしい空間がそこにあった。窓から真っ赤な光が差し込んでまるで昼に夕方がやって来たようで、おかしい。


「ようこそ」


「とんでもない場所ですね」


 どこか楽しそうな先輩に続いてあの頃と同じ言葉を繰り出す。忘れていてもおかしくないのにこの場に来ると芝居の台本でも見ているかのようにスラスラと言うべき言葉が浮かんでくる。先輩とやりたいことが一致しているだけなのだろうが、それがやけに懐かしくも可笑しかった。


「今更だが、とんでもない場所呼ばわりはひどいだろう。泣きそうになったぞ」


「それはすみません。でも、ここは本当に変わらないですね」


「そうだな。遊園地の半券まで同じだぞ」


「うっわぁ……観覧車に乗る時間はさすがにないですよ?」


「分かっている。本当にジェットコースターは苦手なんだ」


「全くそうは見せないから、みんな意地になってましたねぇ」


 かつてあったことを、なぞって、記憶を巡らせて、メリーゴーランドのようだ。


 地球の終わりがすぐそこに来ているのにおかしなことをする先輩だなぁ。なんて思いながら鍵の神経衰弱をもてあそぶ。これは入部試験だったか、当然ながらおぼろげな記憶もある。


「先輩。もう大丈夫ですか? お別れできそうですか?」


 そんな時間が切り離されているような部室に真っ赤な光が差し込んで、現実は確かにそこまでやってきていた。先輩はこんな場所にとどまってはいけない人だと分かっていて、それでも先輩の寂しそうな声を聞いて励ましたくなって甘やかした自分が言える事じゃないけどと、青年は窓を指す。


 彼女が予測して、現実になりかけている地球の危機はすぐそこにやってきていた。人類が全滅するのを避けるために先輩は複数の次元を渡って人間を逃がす機械を作った。彼女はそこに乗り込むべき人物なのだ。


 そこに乗り込む人間に彼は選ばれなかった。それだけだ。


「お別れか。……出来るわけないだろう!」


 諦めていた青年と違い彼女は諦めきれなかったようで血でも吐きそうなほどにそう絶叫した。


「あの場所には私を思う人なんかいない。あの場所には私を便利に思う奴か、恐れる奴か下心を持つ人間しかいないんだよ! そんな場所で助けようなんて気持ちになれるわけがない!」


「私が、私が危機を予測したのはお前のためだ! お前が居ないなら意味なんてない。お前が救えないならそれに価値はない。思い出を見ながら消えて行った方がいくらかマシだ!」


「なのに、なんでお前はあの時と変わらないんだよ! 学生の頃みたいに私が寂しそうって分かるんだよ! 私がつらい時に思い出で励ましてくれるんだよ! そんなだから私はっ! お前から離れれないんだよっ……!」


 息も絶え絶えになるほど叫んで、先輩は泣いていた。青年はどこか諦めた顔で、ついて行けなくてごめんなぁ、と言いながら背中をさすっていた。


 地球の終わりはそこまでやってきていたが、脱出の機械を動かせる博士は動けなかった。博士の最愛の夫は、かつての後輩は、全て分かっていたように彼女をその場所に運んだ。転移の仕組みも学生時代からその身で体験していてなんとなく知っているからこそできた力技だった。


 文句を言う民衆だらけの地球に彼女を残したくなくて、そんな民衆に彼女の思い出を壊されたくなくて彼はいろいろな物を諦めて、最愛の彼女を乗せたのだった。


 ごめんなぁ、と空に溶けた彼の悲しみを理解できる彼女は空に消えていった。



先輩

さまざまなものを発明した天才。それにとどまらず地球の危機的状況に気付き、どうしようもないところまで危険が迫っていると知るや否や宇宙に飛び出す機械を作りあげた。

本質的にさみしがりや。頭がいいので相手の心をほぼ正確に読むことができる。それゆえ一人ぼっちの心境だった。それを悟らせることはしないクール系。


主人公 名無し

マイペースな男。結構な割合でボヤっとしてる。割と素直にいう事を聞く。

先輩の事は気にしていて寂しそうにしているなぁー、大丈夫かなぁー。とぼんやり思ってた。

彼が気にしているのは先輩だけなのでそういう意味でも素直(自覚無し)




いろいろと取っ散らかったなぁ。一時間半でなかなか書けない。リハビリしないと。

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