幕間 ——雷霆の獣——
雷の神であった。
金色と白色の体毛を鋭利な刃物の如く逆立たせ、周囲に煌々と屈折する閃光を撒き散らす。近付けば、その身を痺れさせ、肉が炭となるまで焼き焦す。
雷の神は、ズンと重みのある踏み抜きを一歩。
バチバチと音は、容赦なく耳を貫く。
草木も眠る夜の刻限。
今宵は新月。分厚き雲よって空が覆い尽くされ、視界も定まらぬ程の大粒の雨が降り、木々を靡かせる暴風が吹き荒れる。最悪の天気。嵐。最早傘など役に立ちはしない。
世界は漆黒に包まれ、灯りをともす篝火すら見当たらなかった。
けれども、灯りは十分にある。
雷の神が宿す雷の輝きが、漆黒に染め上げられる夜を照らすからだ。
あまりにも神々しい輝き。
しかし、あまりにも荒々しいその姿。
大地を切り裂く爪を立て、鋭き牙を噛み合わせ、その瞳はギラリと爛々と輝く。
恐ろしき荒神であった。
見惚れる大神であった。
神は嵐を引き連れ、轟く雷鳴と共に姿を現す。天から稲妻が放たれれば、それを足場として宙を疾走し、咆哮を上げれば百を超える稲妻が地上へと撃ちおろされる。
まごうことなき、厄災を引き寄せる神である。
否、厄災そのものである。
吠えよ————。
叫べよ————。
自らの収まりが訪れるその時まで、いずれも世界を破壊尽くし、下等を蹂躙せよ。
嵐過ぎ去ろうとも、厄災が姿を消そうとも……。
雷鳴の轟きは、残響は……、
消えはしない。
消せはしない。
————救済の術、かみなりと雨乞いの巻。
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