ナポリタン
振られた私の
初めてのご飯はナポリタン
フォークを乱雑に
ぐるんぐるんと回せ
ひと目をはばからず
ずるんずるんと吸引する
もはや
誰を気にする必要があろう
口が赤にまみれても
恥じらいなどあるものか
ざくざくと噛み切るピーマン
ぬしぬしと刻むベーコン
じゃきじゃきと砕くタマネギ
わがままに
傲慢に
体から噴き出す濃いケチャップ
ひたすら
阿修羅の如く仁王の如く
食らう一人の昼下がり
やがて
皿の底が見えてくる
私はようやく我に返る
珈琲をすする
ミルクをふんだんに混ぜて
残された赤い皿に
私はあの日の口紅を見た