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グメージシュンの神判  作者: damin_butterfly
1/2

プロローグ.Day2

王道異世界バトルモノのつもりです。

よろしければ、お楽しみください。

2020年 関西某所


Day2



3:23 a.m.



タバコ臭い助手席から、窓に滴る雨粒を眺めていた。

断続したワイパーの所作に、俺は意識をはっきりさせていく。


しばらく眠ってしまっていたようだ。


隣でハンドルをとる親父の横顔には一筋の汗が流れていた。



3:44 a.m.



車は深い山道に入っていた。


「親父、ここは...」


未だに伝えられていない目的地を尋ねようとしたとき、前方の暗闇に人影が映った。その人影は不動明王のように、あるいは傲慢な政治家のように、こちらと対面していた。

一抹の悪寒が走った。しかし、このままの運転では轢き殺してしまうだろう。


「おい、親父!」


俺は親父に呼びかけたが、それに対して親父は舌打ちで返し、さらにスピードを上げた。俺はとっさに運転を止めさせようとしたが、シートベルトの束縛がそれを許さなかった。


慌てて見返したときには人影はもう目の前にあった。

一瞬のうちにその人物の容貌が目に飛び込んでくる。

男だった。

その雄大な体躯はとにかく圧倒的で、その切れ長の眼は極めて攻撃的だった。


俺が殺人の罪を意識した瞬間、男の姿が消えた。


そして、強烈な打撃音の後、浮遊と落下の感覚を同時に味わった。

車の側面に回り込んだ男が俺たちの車を蹴り上げたのだ。

吹っ飛ばされた車の天井が地に着き、衝撃が収まったとき、ようやくそれを理解した。


逆さになった視界を振り回し、親父の姿を確認する。


親父は血まみれになりながら、シートベルトを外していた。

支えるものが失われ、親父は自重によって天井に落とされた。

そして、小さいうめき声を上げてこちらに近づいてくる。


割れ落ちたルームミラーに目をやると、親父の向こう側からあの男がゆっくり歩いてくるのが分かった。


「おや...じ...」


背後に迫る脅威を伝えるために口を動かそうとするが、酷い耳鳴りでうまく言葉にできない。


親父は仰向けになると、懐から朽ちた棒状のものを取り出し、俺の手に握らせた。

どうやら小刀のようだ。


さらに親父は血塗れた手で俺の頭を撫で、ぶつぶつと何かを唱え始める。

すると、小刀と小刀を持つ俺の指が突然光り始めた。

それは、橙色の炎。

熱いというよりは温かかった。


親父の呪文らしき言葉に従って、炎は俺の腕から胸、そして身体全体を包み込んでいく。


詠唱はすぐに終わった。

身体のすべてが炎に覆われているのが分かる。


困惑と不安の意味を込めて、親父の眼をまっすぐ見た。

親父は答えるように笑って言った。


「生きろ。」


最も容易で最も困難なその使命は、重く優しく俺にのしかかった。


しかし、目下の脅威を忘れてはならない。

俺は思い出したかのようにあの男の方へ目を向けた。


そこには腕があった。

砕け散って、窓ガラスのなくなったサイドドアから腕が侵入し、親父の脚をつかんでいた。


(やめろ...)


抵抗を口に出そうとするが、身体を包む炎が能動感覚のすべてを否定してくる。

何もすることができない。

瞬きさえも、呼吸さえも。


限られた視界に映るのは、親父の頭とあの男の下半身だけだった。

耳鳴りの外で問答が交わされるが、内容を理解することも、聞き取ることもできない。


あの男の片足が上がる。


(え...)


踏み抜かれた。


親父の頭のどこかだったものが、俺の頬まで飛び散ってきた。


(あ...)


視界が消えていく。

思考が収縮していく。


(あぁぁ...)


俺が最後に見たものは、かがんでこちらを覗き込もうとするあの男の顎だった。

俺の瞼の底にかすかに入り込んだその唇は、不愉快な皺をつくっていた。


あの男は笑っていた...







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