表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋と雨、微熱

 人からすれば何てことないけど、自分だけは見過ごせない。そんな感情は誰にでもあると思う。


 少女は床に落ちたフルーツを見下ろしながら、歯ブラシと歯間ブラシを取った。


 歳の離れた弟が描き、切り抜いたサクランボ・ブドウ・イチゴ・サクランボが、セロテープで繋がれている。

 歯磨き粉の匂いを嗅ぎながら、それを足でどかそうとして、親指に絡みつくテープ。まずは一点。


 眠気の取れない顔に汲んだ水をかけると、飛沫が洗面台にかかって、拭き取り辛い側面にまで広がった。二点。


 月のものが影響したのか少し熱っぽい。節々が痛む気がして、鏡を見たら目が充血していた。三点。


 着替えてから、冷蔵庫を開ける。朝ごはんがわりの野菜ジュースを飲もうとしたらきれていた。四点。


 外に出ると、朝まで降り続いた雨で、道路には水たまりができていた。いつもの通学路を歩く。湿気が髪をもたつかせる。五点……


 小さな失点でも、五つ集まれば、もはやそれはキレてもいい案件だろう。


そんな時用の自分ルールを想起する。不機嫌な時こそ優雅な音楽を聴かねばならない。別の次元から自分を見つめ直すのだ。


 スマホにイヤホンを刺す。その感触で一点。

 白いコードを一つづつさす。少し前に知らずに消えたアプリの代わりに、適当な単語で動画検索すると、導かれた動画サイトを再生した。


 この動画は当たりだ。二点。


 坂を下りてくる子供が水たまりを思い切り踏んだ。隣の子供と大きく笑う。三点。


 雲間からさす光に、水たまりがシャープに浮き上がる。焦点を合わせる、覗き込んだ自分の顔は、見下みくだすように傲慢だった。


「そんな目で見るなよ」とまつ毛が揺れる。四点。


 抗議の代わりに鏡面を踏むと、


「わっ」


 と坂下君が驚いた。よし、これでプラマイゼロだ。追いかけてくる坂下君の声を置き去りにしながら、何となく気づく。

 微熱のせいか最後のは二点だったな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] わたしも最後のは、100点でもいいと思いましたっ♪ 思わず音符♪で〆 逆転満塁ホームラン\(^O^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ