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12歳の御莫迦  作者: はるやこやな
1/1

11歳の霊能力者




市立豊村(とよむら)小学校の始業の鐘が鳴る。


「ひろしー」

「はーい」

「まこー」

「はいっ!」

「ゆうきー……」


6年4組の教室では、担任が教卓の横に立ち、生徒たちの出席を取り始めた。

しかし、ある生徒の名前のところで、キツめながらも美人な女教師の顔がゆがみ、舌打ちをする。

「おい、若葉(わかば)! 紅葉(もみじ)! (あい)のヤツはどうした! 来てないじゃないかっ」

教師としてはやや乱暴な口調で、教師は2人の生徒を名指しで呼ぶが、若葉と呼ばれた眼鏡をかけた少女は、それに冷静な様子で応える。

「ランちゃん先生。私たちが迎えにいったとき、愛ちゃんは、あと30分寝てから来るといってました。そういったのが7時35分頃で、今が8時20分ということは、愛ちゃんがゆっくり歩いて登校してきたとしても、あと10分もすれば来ると思います。身支度にも、たいして時間はかからないだろうから」

マイペースにもほどがある言い分に、ランちゃん先生と呼ばれた女教師の額に青筋が浮かんだ。

呼ばれたもう1人の少年である紅葉は、肩をすくませながらも静観を決め込んだ。金髪碧眼(へきがん)で、本来ならばまるでお人形さんみたーい! と形容されるほどの端正な顔を青くして引きつらせている。僕は関係ない……僕は関係ない……と、脳内で呪文のように唱えながら。



一方、話の渦中にある橋本(はしもと) (あい)はといえば、両親に背中を押されて、やっと自宅を出て学校への道を歩みはじめたところだった。

「眠いなー。なんで人間って、寝ながら歩けないんだろ」

とぼとぼと寝ぼけ眼をこすりながら歩く少女は、すでに遅刻しているいもかかわらず、まったく慌てた様子はない。

「髪の毛結べなかったなぁ。学校いったら紅葉に結んでもらお。あいつ男のわりに器用だし」

新学期から愛のいるクラスに転校してきた、双子の片割れの顔を思い浮かべながら歩いていると、前方の木の下に人影があることに気づいた。


しかし愛はそれに気が付かないふりをして通り過ぎた。

あれは人ではない。


昨日まではあんなところにいなかったから、おそらく地縛霊ではなく、浮遊霊だ。

はっきりとした人の姿はしていないから、人間に()りついたりはできないだろうけれど、かといって無害なタイプでもない。

ついてくんなよと思った矢先、背中にゾッと悪寒が走る。

「うわ、最悪」

一瞬、自宅に引き返そうかと迷ったけれど、今日の給食はカレーだったと思い出す。まあこの程度の霊なら放課後まで放っておいても大丈夫かと、愛は歩みを再開した。



「……一応聞いておこうか。なんで遅刻した?」

教室に着くなり、鬼の形相のランちゃん先生に出迎えられる。

ほかの生徒たちはといえば、去年から恒例となっている愛とランちゃん先生のやり取りを、どこか楽しそうに眺めていた。先月転校してきたばかりの、若葉と紅葉を除いて。

愛はケロッと応える。

「いやぁー。学校くる途中に浮遊霊がいてさー。なんか気に入られちゃったみたいで、ずっとついてくるんだよねー」

「…………それで?」

「そのせいで体が重いわけよ。だからさ……今日は怒らないで?」

きゅるんと上目遣いで、答えになっていない答えを返す愛に、先生は怒りを通り越して呆れた。

「……わかったわかった。またお母さんに学校に来てもらおうな。3人でよく話し合おうじゃないか」

「えぇー……またママ呼ぶの? ほんとにランちゃんは、うちのママのこと好きだなぁ」

暢気な愛の言葉に、しぼんでいた先生の怒りが再度爆発した。

「お前が呼ばせてんだろうがぁ!! 次で何度目だコラァ!!」

ゴゥン!、と、固い拳骨が愛の頭の上に落ちた。

それを見ていた4組の生徒たちから、大爆笑が沸き起こる。

「ランちゃん先生こえぇー!」

「元レディースだって愛ちゃんいってたよ」

「なに? レディースって?」

「愛ちゃん痛そー……」


2人のやり取りを囃し立てる生徒たちの中で、若葉と紅葉の双子だけが、愛の背後に人ならざるものを見ていた。


タイトルは12歳の(おバカ)と読みます。

さっそくおバカ炸裂な愛ちゃんをよろしく(^_-)-☆

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