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酩酊者トナン

作者: ケリーバーン

都南探偵事務所は今日も閑散としていた。


探偵事務所とは名ばかりのワンフロアにて、都南秀三は座っている。

今日も明日も仕事など来るはずもなく、くすんだマイルドセブンを吹かすだけのどうしようもない毎日であった。


秀三はもう40も近い中年男性であった。

ボロボロのテレビに映る、下卑たワイドショーを眺めているだけで、発展性など皆無といっても良かった。


歳をとると、時間の感じ方が早くなる、秀三にとっては救いの種である。


これでも探偵歴は5年になる。


サボリーマン生活を10年少々つづけ、会社をリストラされると、

親の持ちビルの一室に居座り、探偵等と名乗った事が始まりだ。


親の遺産の多少の不動産収入がある為、ニートとして生活するのも悪くないと思ったのだが、

せめてもの社会的な意地を保つために、今日もこうやって座っているのである。


今までにこなした仕事は5年で5件ほど、

近所のおばさんの財布を探す事。

不倫相手を見つける(失敗)

データ入力の仕事

選挙活動のビラ貼り

テレフォンショッピングの代理対応


秀三はこのビルのワンフロアに小さな住居も持っている為、

適当な時間になると、事務所にやってくる。


コーヒーとタバコ、そしてつまらないテレビだけが秀三に付き合ってくれるのだ。


夜にもなると近所の汚い居酒屋に向かう。


決まって注文するのは、黒霧島ロック

これを漬物だけで、4,5杯飲むと、秀三の一日は終わる。


すなわち、呂律がまわらなくなり、記憶を洗い流してくれる。

すなわち酩酊するのであった。


そんな繰り返しの日々の中、探偵事務所に訪ねてくるものがあった。


「わたしが誰だかわからなくなってしまったの。」

年若い乙女が本当に困った顔をしてやってきた。


「なんだい、面倒事かい?」

秀三は生まれつきのめんどくさがりで、大変そうな事は断る事にしていた。


「人助けすらできない、探偵とは名ばかりの人間のクズね。」

ぼーっとした頭に、マイルドセブンを補充して、

今日もまたくだらない酒場に向かうのであった。

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