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「今日は初日だしこれくらいにして帰るか」
「そうですね」
よかったー。
やっと解放されるのか。
「明日からも基本的に放課後は毎日ここに集合ね」
ですよねー。
これからはこれが毎日続くのか…
ある意味楽しい高校生活になりそうだな。
べ、別に全くこれっぽっちも嬉しくなんかないんだからね。…いやマジで。
「じゃあ戸締りはよろしく。アディオス、アデュー、また明日~」
先輩は高速で談話室を出ていってしまった。
「え?先輩!……」
どうやら僕の声は届かなかったようだ。
談話室に1人取り残されたような状態になってしまった。
「マジかー」
さっきまでが異様に騒がしかったせいか、心なしか少し物悲しく感じる。
「てか戸締りってどうするの?」
やっぱり定番で、鍵を職員室に返せばいいのかな?
まぁなんにせよ、職員室に行けばわかるか。
というわけで、僕は窓を閉めて、電気を消して、鍵を閉めた。
「そう言えば職員室ってどこ?……まぁ探すか」
さほど時間がかからず、職員室は見つかった。
それもそうだ。
職員室なんて大抵は一階にあるし、それに大きいから目立つし。
「よし」
身だしなみを整えて職員室のトビラに手をかけようとした時、トビラが開いた。
扉をまたいで職員室の中にいたのは、少し長めの黒髪の女の人だった。
おそらく先生だろう。
見た目からして歳は30前後くらいだろうか?
「ん? 一年生が入学式からこんな時間まで残って何かあったの?」
どうして一年生と分かったのだろうと思ったが、学年によって徽章の色が違うのを思い出した。
「えっと、鍵を返しに来たんですけど」
「そうか。それなら私が返しておいておこう」
「あ、ありがとうございます」
そう言って、僕は談話室の鍵を先生に渡した。
先生は鍵を確認するためか、少し鍵を見ていたが、ふと顔を上げた。
「君、ここで会ったのも何かの縁だし、あっちで少し話さないか?」
「まぁいいですけど…」
なんかちょっと変わった人なのかな?
でも今日散々、柊先輩に振り回されたので、今更これくらいではどうってことない。
先生に連れられて案内されたのは、テーブルとソファがある職員室の一角だった。
今日が入学式だったからか、職員室には先生達の姿はちらほらとしか見受けられない。
先生と向かい合うように座った。
「「………」」
え? 何この空気。何か喋らないといけない感じ?
「え、えっと千葉悠真です。 よろしくお願いします」
「…私は楠本成美。担当は国語だ。これから色々あるかもしれないがよろしく」
楠本先生?
どこかで聞いたような名前だな。
一年生の学年会の先生にいたのかな? と今日あったことを思い出していると、柊先輩との会話にたどり着いた。
マジか? マジなのか?
この人は、あの楠本先生なのか?
でもそんなに多い苗字じゃないし、多分そうなんだろうな。
「あの、先生ってあんまり学校来てなかったんですか?」
なるべく軽い感じで聞いた。
「まぁちょっと色々あってな。それにしてもよく知ってるな」
「ちょっと知り合いから聞いて」
流石に休んでた理由は聞かない方がいいだろう。
それより顧問のことは話したほうがいいのだろうか?
まぁ今話そうが話さまいが、遅かれ早かれ知ることにはなるのだろうけど。
「知り合いというのは、2年の柊志保という生徒のことか?」
あれ? もしかしてこの人すでに知っちゃってる感じ?
「そうです…知ってるんですか? 柊先輩のこと」
柊先輩は知らないって言ってたような気がするけど
「会ったこともない」
ですよねー
先輩も同じこと言ってたような気がする。
「それで、これなんだが」
そう言って、楠本先生はポケットから一枚の紙を出し、それを広げてテーブルに置いた。
これかー
やっぱり知ってたか。
テーブルに置かれた紙は、先ほど先輩が生徒会室で書いた部活設立の申請書だった。
顧問欄には大きい字で『楠本先生』と、おそらく柊先輩の字で書かれていた。
そして、部員の欄には柊先輩と僕の名前が書かれていた。
「「………」」
あれ?
これってもしかして説教タイム突入?
入学そうそうこれかー。
とは言っても僕は全く悪くないぞ。
選べ!
・大人しく説教を聞く
・全てを先輩のせいにして