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後編(最終話)

 そして、迎えたホワイトデー当日。


 昨夜は緊張していつも以上に眠りが浅かった。

 机の目立つ位置に置いておいた木野へのバレンタインデーのお返しとして用意したラッピングされた譜面入れとボールペン。


「これを渡さないと始まらない」


 僕はそう心に決め、学校に行く準備を始める。


 彼女に告白の返事とお返しを渡すために――――。



 ◇◆◇



 部活の朝練が終わり、教室に入ろうとした時、僕の心臓が飛び跳ねそうになった。


「あれ? 秋桜寺(しゅうおうじ)くん、おはよう」

「お、おはよう」

「なんか顔が真っ赤だよ?」

「そ、そうかな……」

「まぁいっか。今日も頑張ろうね!」

「ああ。ありがとう」

「とんでもないよ」


 木野が僕がきたことを察して、教室の扉を開けて待っていてくれた。

 あれ? 僕、彼女に何か言い忘れている? と思ったので、1つずつ整理してみる。

 整理(それ)をしているうちに、僕が忘れていたことを思い出した。


 僕が木野に「今日の放課後、教室(ここ)で待っています」と――。


 その一言が言えたら、次のステップに進められたと思ったが、休み時間とかしか話せないからなぁ……。

 せめて、隣の席だったら隙間をみて話しかけられたのにと後悔するしかなかった。



 ◇◆◇



 2限目の休み時間に僕はロッカーに行くため、彼女のところに寄ってみる。

 しかし、彼女は何人かのクラスメイトと楽しそうに談笑をしていた。


「あ、木野。ちょっといいかな?」

「ん? いいよ」


 僕はようやく木野に話しかけることができ、階段の近くに誘導する。


「何か私に言いたいことがあるから呼び出したんだよね?」

「そうだよ。えーっと……今日の放課後、教室で待ってるから……!」

「今日の放課後ね! 分かったよ」


 彼女は今日の放課後に僕が何をするかは分からない。

 木野にとってはドッキリサプライズだと僕は推測する。


「忘れるなよ!」

「分かってる!」

「じゃあ、放課後な!」

「うん」


 普段は僕も彼女も部活をやっていて忙しいのに、この時だけは青春しているのではないかと感じられた。



 ◇◆◇



 あれから、あっという間に放課後に入ってしまった。

 6限目は体育だったので、体育館から教室までの距離がかなりある。

 僕は急いで教室に戻り、彼女が教室に戻ってくるのを待っていた。


「秋桜寺くん、ごめんね。待ったかな?」

「いやいや全然。あのバレンタインはチョコと手紙みたいなの入れたよな? 凄く嬉しかった」

「ミニカード読んでくれたんだね。ありがとう」

「お礼を言うのは僕の方だよ? チョコ、美味しかった。ありがとな」

「美味しかっただなんて……嬉しい」

「一応伝えたくてさ……」

「何だろう?」

「あの……告白の返事だけど……こんな僕ですが、よろしくお願いします! なので、これを受け取ってください!」


 僕は木野にバレンタインのお返しの袋を差し出した。

 すると、カサッと音を立てて彼女の手に渡った感覚がある。


「本当!? 秋桜寺くん、こんな私で私でいいの?」

「ああ」

「本当にありがとう!」

「僕も木野のことが気になっていたし、好きになりかけていたからな」

「ちょっと照れるな」

「こ、これが僕の答えだから」

「そうだね、よろしくね!」

「こちらこそ」


 こうして、僕は彼女に告白の返事とバレンタインデーのお返しを渡すことができた。

 中学校生活もあと約1年くらいだけど、彼女との時間を大切にしていきたいと思う。


 告白の返事はすべて正解ではない。誤解だってある。

 そのため、僕は正解だと思ったらこう言おうと思う。


 「これが僕の答えです」と――――。

2017/05/05 本投稿

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