中編 その1
その翌日――。
僕は「うわぁぁぁ……!」と言いながらベッドから飛び起きる。
「はぁ、はぁ……今のは夢か……」
僕がさっきまで見ていた夢は実に恐ろしいものだった。
なぜならば、その夢は女子生徒達からの告白をすべて受けてしまい、彼女らから「最終的に誰とつき合うの!?」と言われたところで今に至る。
僕は「この夢が正夢じゃないといいんだけど……」と思いながら速やかに支度を終え、ラケットが入った袋を肩にかけ、朝練のため学校へ向かった。
それはまさかの展開だったとは知らずに――。
◇◆◇
朝練が終わり、教室に着いた時、僕に対してクラスメイトからの熱い視線を受けた。
僕はおそらくあのことだろうと思いながら、自席に通学鞄を置く。
「お、おはよう」
「「おはよう!」」
同性からは何か疑われているような感じの視線で、女子はヤキモチを妬いたような感じで少しだけ嫌だった。
「突然だが……」
「ん?」
「秋桜寺、お前はチョコ何個もらったんだよ?」
その質問は毎年問われるものであり、今の僕にとっては1番答えたくない質問。
今年は素直に答えよう。
来年は他の高校に受験する者もいそうだから、呑気にバレンタインどころではなさそうだ。
しかし、僕が通っている学校は中高一貫校だからほとんどの同級生は持ち上がりだからそうでもないが。
「仕方ないなぁ……僕は30個くらいだよ」
「すげー」
「いいなー」
「母ちゃんからもらったのは含まれてないよな」
「ははっ……も、もちろんだよ!」
「じゃあ、告白された回数は?」
「……うっ……」
それがまさかの展開だった。
もしかしたら、これはクラスの女子からの告白の返事どころか僕の「バレンタイン暴露会」みたいなことになっているではないか!?
教室には当たり前のように女子がいる。
もちろん昨日、僕に告白してきた木野の姿もあり、顔を真っ赤にしながら、その様子を見ていた。
「あれだけチョコをもらったんだから何人かに告白くらいはされてるんじゃないか?」
「た、確かに僕は何人かは告白されたよ!? そ、それは今、この場で答えないとならないことなのか?」
これは違うかもしれないが、プライバシーの侵害だ!
僕はしどろもどろになりながら、クラスの男子に問いかける。
「い、嫌なら答えなくていいんだぞ?」
「じゃあ、シークレットで頼む」
「分かったよー」
「了解!」
『嫌なら答えなくていい』という言葉は僕や彼女らにとって、救いの言葉だった。
しかし、彼らにとっては1番重要なことなのかは分からないが――。
僕が素直に告白された人数を答えていたら、木野はどんな表情をしていたのだろう?
おそらく彼女は「秋桜寺くんって、たくさんの人に告白されたんだ……告白しなければよかった」と後悔するかもしれない。
あとから「告白はなかったことにして」と言われたら、僕が傷つく。
なぜかって?
それは昨日のことがきっかけで彼女のことが少しずつではあるが、好きになり始めていたから――。
2017/04/23 本投稿
2017/05/05 サブタイトル修正