2.講義 Ⅱ
講義が止まらない。
▽ケイ▽
聞きなれない声で目が覚めた。
「やっと起きましたか?寝坊助さん。」
「ち、近い!!」
思わず飛び退いた、そんなに見なくてもいいだろ……
「朝食、出来ていますよ。」
「え、あぁ、すぐ行くよ。」
では、と言い残し、扉が閉まる。
…………はぁぁぁぁぁ
大きなため息。
「まったく、朝から心臓に悪い……」
ダイニングキッチンに向かうと白衣の男と白いワンピースの少女が既に席に着いている。二人とも白が好きなのだろうか。部屋にも白色が多い。
「おはよう、ケイ君」
「……」
「おはようございます。えっと……」
「あっ、そういえば自己紹介もまだだったね。遅れて申し訳ない。コメット・フロックハートだよ。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
硬い握手を交わすと、料理が冷めてしまいます。とラーラットに文句を言われ。食事を始める。
ハムエッグとスープ、そして米?かな?異世界でも食事に差はあまり出ないのだろうか。ん?フロックハート?
「お二人はご家族なんですか?」
「ん、そうだね……彼女は…義理の妹のようなものだよ。」
「義理の妹ですか?…」
目も髪も似てるから腹違いとかそういうのかもしれない。少し空気が重くなったし、いろいろシビアな事情があるのだろう。
「……」
「……」
「……」
食器の音だけが部屋に響き静寂が場を支配している。地雷を踏んでしまったようだ。強引に昨日の続きをしようかと思ったその時。
「拾って貰ったんです。」
「えっ……」
静寂を破ったのは意外にもラーラットだった。コメットも意外そうな顔をしている。
「昔、独りぼっちで、行き場のなかった私を拾って貰ったんです。それだけ……ですから。昨日の続き、してはいかがですか?」
「あ、ああ……そうするよ。ごめんな、変なこと聞いて。」
彼女は「いえ」とだけ言って席を立ってしまった。
「さぁ、僕達も残りを片付けて昨日の続きをしようか」
それから5分もせず食事を終え、リビングのソファに座る。
「さて、次は……ここの話をしよう。うん、君も空が無くて驚いただろう?昨日も話したけどここはシェルターだよ。地下のね。昔大きな隕石がいくつも落ちたんだ。それから約10年後、また頻繁に落ちるようになってね……それで、もともと地下にあった監獄をシェルターに改造して住んでるんだ。ここまでで質問は?」
「隕石の迎撃…みたいな事は出来ないんですか?」
「当初はそれでやり過ごす予定だったんだけどね。初めのがちょっと大き過ぎたかな。皆怖かったんだよ。大きい奴の完全破壊は難しい、削ったり逸らすくらいなら問題無いけど、それでもどこかに落ちちゃうからね。それに小さいのも多すぎて迎撃しきれない可能性があるんだ。他には?」
「監獄ってどういうことですか?」
「ここは元々能力者を管理するために作られたんだ。実はね、超能力者なんてものが出てきたのは隕石衝突後なんだ。」
「えっ」
てっきりこの世界に元々あるものだと思っていたが……
「はは、能力者が初めからいればこんな文明にはなっていないよ。シェルターが落ち着いてきた最近ね。やっと、超能力の原理の解明に踏み出したんだ。今頃、研究者達はそれに夢中じゃないかな?彼らは不思議が嫌いだからね。まぁ僕もだけど。」
「不思議が嫌い?そういう事が好きで研究しているんじゃ無いんですか?」
「好きだよ。でもね、それ以上に嫌いなんだ。嫌いだから無くしてしまおうとするんだよ。まぁ、解釈の違いってやつだ。」
彼はふらりと立ち上がり、窓を開ける。ラーラットは皿を洗っているようだ。
「話が逸れてしまったね。悪い癖だ。そう……監獄についてだったね。」
彼は窓から離れると歩きながら話を始める。なんだか理科の先生みたいだ。
「うん、あまり気持ちの良い話とは言えないけどね。隕石衝突後、しばらくすると能力者が現れ始めた。基本的に人は自分とは違うものが嫌いだからね。そう、差別の対象になったよ。その逆、能力者が加害者となるケースも多かった。そこで、各国政府が作ったのが【能力者特区】と名前のついた監獄だよ。そこに能力者を放り込んだ。まぁ、妥当な判断じゃないかな……無意味な迫害からは遠ざけられるし、能力者が一般人に危害を加える事は無い。」
立ち止まり、真剣な眼差しでこちらを見つめる。
「自治を認める、なんて体の良い事を言ってね。彼らは詰めるだけ詰めて放置したよ。そんな世界がどうなるかわかるかい?無秩序な暴力が全てを支配する世界。まさにそんな世界だよ。そんな世界に詰め込まれた子供たちはどうやって生きてきたんだろうね……」
△ △
少年に語りかける。その声に孕むのは慈愛か、あるいは……
ここまで読んでくださった読者の皆様。ありがとうございます。カワウソです。お話がもう少し続きます。主人公の無双は今しばらくお待ちください。
次回は明日か明後日になると思います。




