第二話 「Dark Memory」
有馬は目が覚めた。いつの間にか寝ていたようだ。周りは何故か歪んでいて歩きにくい。麻薬の副作用なのだろう。そういい聞かせて。有馬はまたそのまま目を閉じた。しかし、有馬は妙なことに気づく。私はさっき麻薬を吸ったばかりだ。
時計を見ても15分しか経っていない。
"こんなに早く副作用が出るものなのか?"
意識もはっきりするが、リラックスしてた感覚が消えた。だが歪んだ世界は治らないままでいて何だか身震いがしてきた。有馬は歪んだ世界でさまよっていると、後ろから気配を感じた。振り返っても誰もいない。
「誰?私に何の用?」
私の声が響くだけで返事はない。気のせいだったのだろうか。その場に体育座りをして膝に顎をのせた。一体何が起こっているんだろう。あまりにもこの世界は不自然過ぎる。タンスが斜めに伸びていたり、鏡が捻れていたり、そして壁が青い。不思議な感覚だ。私はそのまま俯いた。
そうかわかった。これは夢か。覚めればきっともとに戻るだろう。
そう解釈して頬をおもい切り叩こうとしたその時。
「夢から覚めるのはまだ早いですよ。私の話を聞いて頂けませんか?」
「え?」
声のした方を向くとそこにはシルクハットを被った少年がいた。灰色の髪、赤い目そして一番のチャーミングポイントは、その右腕だ。右腕だけないのだ。私はその子に近づいて頭を撫でようとした。
「私は子供じゃないですよ。勘違いして頂きたくないですね。」
「あ、ごめんね。」
どうやらそれが少し不服だったようだ。
私はこの部屋に何が起こってるのか彼に尋ねてみた。
「ねえ、あなたは何者?この部屋は何?」
彼は俯いて少し考えこちらに向いた。
「私は島猫。時間を司る神です。この部屋は貴方の歪んだ心を指しています。」
つまり私はこんなに歪んでいたのかと。私に何か提示しているようにも思えた。
島猫は私に近づいて肩に触れた
「貴方は人生に失望してるように思いまして。少し過去を覗かせていただきました。お辛かったでしょう。南さんの事は残念でしたね。」
彼は哀しげに言った。南の名前はもう二度と聞くことのない。死刑囚の名前だ。
彼女は私のせいで・・・。
「そこで私は考えたんです。貴方をその絶望から救おうと、いや!貴方の人をまるごと変えようと。」
私は立ち上がって彼を見つめた。それが本当なら、彼女を救うことが出来る。でも私は・・・。あの悲劇は変えられない運命なのだ。どちらかが捕まりどちらかが生きる事になる。
”私が捕まる。”
それはもう決まっていた。彼女が捕まる分けには・・・。
「お願い。過去に戻して!!彼女を・・・。南を救いたい!!」
彼は少しニヤッとして私に触れた。
「いいでしょう。ですが一つこれは大事なことです。先程のように頬を強く叩けば、現実に戻ってこれます。過去を変えられたときにはこれを利用して戻ってきてくださいね。」
私は目を瞑りあの闇の記憶に戻っていった。