プロローグ
この作品は、物語が進むにつれて残酷な描写、性的な描写が増えていきます(主に流血表現)。
なお、登場人物の皆が間一髪で助かるという保証もありません。
そういった描写、物語の苦手な方は、拙作を読まないことをおすすめします。
夕暮れ時、坂道を上る、三人の人影。少年二人に少女一人。彼らはちょうど遊びに行った帰りで、この内真ん中に立っている長めの金髪の男子の家に向かう途中だ。
「んで俺は言ったわけよ。「向こう百年、恋人保証付きだ」ってな」
「はーいはい、ごっつぉさん」
「もぉ、恥ずかしいからやめてよお」
黒い短髪の男子が呆れ気味に、茶髪のセミロングの女子が恥ずかしそうに顔を俯かせて、それぞれ言葉を返す。よく見れば、金髪の彼と茶髪の彼女は手を繋いで歩いている。
「春樹ののろけ話は話の構成がうますぎて、胸焼け起こしそうなんだよ。あー、これについての反論は要らん」
「んー、けどやっぱ、お前も彼女できればわかるぞ? ほんとに好きな相手なら、自慢したくてたまんねぇから」
「さぁな、年齢イコール彼女いない歴の俺には、さっぱりだ」
「それが顔が悪いからじゃなくて、単に女に興味がないからってのが、なんとも悲しいな」
そう言われた黒髪の彼は、確かに容姿は悪くない。背は百八十センチの長身で、無駄のない引き締まった筋肉と、落ち着いた雰囲気を見せるクールな顔立ち。ともすれば、若くして百戦錬磨の風合いすら醸し出す彼は、どちらかと言わずともモテる方だ。
対する春樹と呼ばれた少年は、身長百七十五センチ、体格はひょろりと細く、目は常に好奇心に満ちたような輝きを持ち、笑顔の似合う、というより常に笑顔。ピアスを右耳の耳たぶに一つ、左耳の耳たぶに二つと軟骨に一つ空けており、着崩した麻のシャツが癪に触らないほど着こなしている。いわゆるチャラいと言う部類に入るがやつだが、ムカつかないどころか、そうするのもアホらしいほどのイケメンだ。
「だよねー。こんなイケメン二人のそばにいたら、私見た目フツーだから恨まれるよ」
「なぁに言ってんだよ。晴は十二分に可愛いから、嫉妬するのもアホらしいだろうよ。な、軍侍」
「まあ、確かにな。普通に可愛いの部類に入るだろう」
そう言われた彼女――晴は、確かに可愛い。身長は百六十センチほど、体格は少し細め。ぱっちり開いた大きな二重、しかし顔のパーツは小さく、小動物的愛嬌を感じる。胸は大きくもなく小さすぎず、女性的な体格になっている。この、完璧すぎない可愛さが実は女子にも人気があり、彼女と付き合っている春樹は、実は男より女の嫉妬の目が痛かったりする。
「そういえばよ、春樹。件の小説はどうなった?」
「ん? あー、あれね。いや実はさ、異世界に飛ぶときにどう飛ばすかで迷ったっきり、まったく進まねぇんだ」
「それ、進んでないってことじゃん」
「晴ぅ? そーゆーのは言っちゃダメなんだよ?」
「ま、九重が言わなくとも俺が言ったがな」
「四面楚歌!?」
「「それは違う」」
両サイドからないないと手を振られながら、がっくり肩を落とす春樹。そうやって他愛もない話をしながら帰路につく、はずだった。
不意に、眼前に黒い球体が現れる。効果音をつけるなら、もわっと言う感じで。
「おい、春樹」
「ああ、こいつはやべぇ」
「え、何、何? これ何?」
「こいつは、ネタとしていただき!」
「そっちかい!」
ガシッ、とガッツポーズを決めた春樹に、軍侍が目敏く突っ込みを入れる。
「まあ、やべぇ展開なのは確かやね」
「とにかく、逃げるぞ」
といって振り向いた軍侍は、驚愕する。
「道が……ない」
軍侍に遅れて振り返った二人もまた、絶句していた。不意に、何かを背後に感じ取った軍侍が振り向く。
「――みんな、横に飛――」
軍侍の警告を掻き消し、キュオン、と間の抜けた音を最後に、彼らは気を失った。