第1章~10年前~響谷part
遅くなりました!すいませんm(̠̠)m
お詫びとして明日も投稿させていただきます…
2020年、とある日とある港の倉庫の前、そこだけが周囲と空気が違い異質だった。周囲が殺気立っているのに対してそこだけの空気がのほほんとし過ぎていたからだ。
そこに座って、いや、寝ていた。長嵜響谷だ。人々が続々と集まる中、ホームレスで住所不定である響谷は、寝床である倉庫前で寝ていた。しかし彼がこの時間にここにいるのは偶然ではない彼は彼なりの独自の情報網を持っていた。そして彼は数日前からここにいたのだ。彼が欲しているのは、力。権力だろうと腕力だろうとなんでもいい。彼は今までホームレスだなんだといって自分たちを迫害したものへの仕返しがしたかっただけだ。その力を得るための手段として彼が選んだのがここであった。ただそれだけである。
これだけの暴動が起きていても彼は眠っていた、ホームレスとして少しでも寝れる時は寝ておく。彼の習性であった。そのため、船から降りてきた男のよく通る声を聞いても全くおきなかった。もちろん人々が不満の声を上げているときも全くおきる気配は無かった。しかし彼は結果的にはおきることになった。彼の耳に届いたのは、銃声。
彼は昔、目の前で実際に発砲されたのを見ている。彼の本能がその音を出すものは自分を傷つけるものだ。と、把握していた。そして彼の本能がそれを忘れるわけが無かった。
彼は銃声が聞こえた瞬間、跳ね起きていたそして人々が男に対しての質問をし、男が答えたときには既に、状況を見極めていた。
「ああ、あの方たちの説明を忘れていました。今回人選の手伝いをしてくださる、このあたりの自警団の方々ですよ。」
「自警団?」
「ええ、さすがに人数が多すぎますし、この程度で死ぬ人間に薬は渡せませんよ。なので減ってもらいます。」
「減ってもらいますだと?」
「ええ、そうですよ。あ、ちなみにこの船に乗れば安全ですので、ここまで頑張ってくださいね。」
そう言うと、男は背を向けて立ち去ってしまった。
「頑張ってください、だと?」
「人の命をなんだと思ってるんだ!!」
人々の中でそんな声が上がる中、状況判断の早い数人はすでに状況を判断し走り出していた。
響谷は一瞬、自警団に攻撃してやろうかとも考えたが、銃を持っている相手に向かっていくのはあまりにも分が悪いということを自分の持ち物を見て判断した。せめて自分の手に小型銃があれば反撃は可能だったが、ホームレスの彼はそんなものを持っているわけが無い。まあ彼の持ち物はおいておくとして、彼の一瞬の迷いが彼の命を危機にさらし、彼の選択の余地をなくした。1テンポ遅れてのスタートとなった響谷は、銃弾の雨の中に居た、しかし、そんな中、彼の頭の中にあったのは、育ての親のホームレスの言葉だった。
「響谷、銃弾っていう物はね、動いていたほうがあたり辛いんだよ。」
それは真実なようで動き回る響谷に、銃弾はなかなか当たらなかった。しかし直撃を避けられている、というだけで、彼は既に、銃弾によるかすり傷だらけだった。
それでも命中を避け、人よりも早く船に渡る橋につけたのは、彼の育ての親であるホームレスが彼に教えた最低限身を守るための知識と、彼の防衛本能のおかげだった
彼は船の入り口に立つと振り向いた。そして、銃弾に倒れていく人々を見ながらつぶやいた。
「お前らみたいな弱者はそこでくたばるがいい、ここから先、俺は生き延びて真の強者になってやるよ。絶対にな。」
響谷は船の中へ踏み込んだ。




