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その6~グレートなオポチュニティ~

おはようです。

今朝もいい天気です。


蟹だと思ったら

人だった

その6



今日も性懲りも無しに、求人票を眺める二人。

新聞のチラシ、求人のサイト、2ちゃんねるなど、あらゆる情報源を駆使し、探し続ける、

だが、二人が満足のいく仕事が無いと言い張るのだ。これだけ調べているんだ、一つくらいは目ぼしいものがみつかるはずだろう。

「近頃は国際化が進んでるからな……、英語が出来ないと雇ってくれないんだよな」

稲田が悪態をつく。そりゃそうだ、総合商社のページしか見てないもんな。

「やっぱり蟹のふりして生きてくのが一番だったのかな?」

真田は段ボールから出てきてしまったことを悔やんでいる。

「いやいやいや、いくらなんでもそれは無理だろ」

自分はシンク台を先日買った激落ちくんで、必死に溜まった汚れを磨いていた。

「そういえば私って、どうやって配達されたのかな?」

「いや、俺に聞かれても」

「記憶がないのよね。なんで段ボールに入ったのかとか、その周辺の記憶がないんだよね」

つまり記憶喪失。そう言いたいのだろう。

だが、稲田のことははっきり覚えているので、仮死剤かなにかで眠らされていたと考えるのが筋だろう。

「まあ、自分はただ、『天国市場』で蟹セットを頼んだだけですが、何か?」

「もしかしたら、その会社がアヤシイんじゃないか?」

唐突に、嬉々と稲田が会話に割り込む。

「だって、商品取り扱ってるところが梱包とかしてるんじゃないの?」

「確かにそうかもしれないが、大体は直送とかじゃないかな」

「いやいやいや、それは無い。最低でもチェックはするだろ」

いつまで経っても結論は出そうに無かったので、直接『天国市場』内のサイトから調べてみることにした。


『天国市場』。今や日本のオンラインショッピングの雄ともいわれるサイトだ。『天国市場』には数多くの店舗が出店し、そこで商売を行う。色々な企業が店を開いているということで、取り扱う商品の種類は豊富だ。

「へ~!こんなサイト、あったんだ」

真田は目を輝かして、『天国市場』を閲覧している。マウスとキーボードが、目にも止まらぬ速さで動き、タップし続けられる。

そして、あるサイトに辿り着く。

「お!『天国市場』が求人やってるよ~」

真田が、冷蔵庫から取り出した腐りかけのヨーグルトを手づかみで食べている稲田に呼びかける。稲田は食べていることがバレると思ったのか、おもむろに冷蔵庫に隠す。

「ま、マジ?」

「ほんと。ほら、見てみて!」

真田が指差すところには、さわやかな職場風景や社長のありがたいお言葉が掲載されていた。

「さて、どんな職種を募集しているのかな……、あれ?」

真田がページを閲覧しているうちに、あることに気づく。

「『グレートなオポチュニティ』って、何?」

「は?日本語でおk」

「なんか、職種紹介で『レアなエクスペリメントをゲット出来るグレートなオポチュニティです』って真顔で書かれてる」

自分も気になったので、そのページを覗く。

そこには、日本語なのか英語なのかよく分からない独自の言語が展開される、不思議な世界が広がっていた。

「なんだ、これは?」

「きっと英語かぶれの人が書いたんだよ」

なぜ、ルー語みたいにわざわざ書く必要があったのか?恰好をつけたかったのか?真意は書いた本人に聞いてみないと分からないので、何ともいえないが、日本語のページなんだから、普通に日本語で書いていいんじゃないか?とは思ったが、何か意図があるのだろうと結論付けた。

「とりあえず、全文読んでみるか」


『トゥデイ、ジャパンではデフレーションがエスカレーションしてイング。リアルなシンキングがキャンなヤングマンがトゥモローをメイキングをドゥするのです。さあ、ユーのドリームに向かってネバーエンディングストーリー!』


「何が言いたいんだ?」

稲田は、鼻をほじりながらなめた口をきいている。

「最後なんか映画の名前だぞ」

「私じゃ、ここ、就職出来ない……」

大丈夫。就職出来るとは思っていない。

「今の求人はみんなこんな感じなのか?」

自分が、不意に切り出す。

「え~と、う~ん、みんな、こんな感じってわけじゃないけど、そういう会社は増えてるよ」

「グローバル化、グローバル化っていっても、何も社内の言語をルー語にしろとはだれも言ってないだろ」

そうか。最近国際化が叫ばれているから、社内の言語を英語に統一し始めているのか。これからは英語も喋れなければ、日本の企業への就職も難しいということか。

「じゃあ、お前らも、就職できるように、今日から日本語禁止な」

「「え~~~~!!」」

その言葉に二人は、床に腹這いになり対抗する。

「オウッ、オウッ」

「オウッ~オウオウ」

「お前ら、オットセイのふりしても無駄だぞ」

「「In English, please?」」

「別に自分は日本語で良いだろ!!!!!!」


今日も就活には何も進展も無かった。

真田の謎が深まるばかりであった。






もちろんこの作品内の人物・施設・固有名詞はフィクションです。現実のものと一切関係ありませんのであしからず。

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