その5~ちきゅうさいごのひ~
来ました。
ハルマゲドンか何かが、世紀末にやってきて地球滅びるとか、よく特番組んでテレビでやってたよな。
それがまさに、今来ようとしている。
蟹だと思ったら
人だった
その5~ちきゅうさいごのひ~
さっきから屋上から物凄い、老人が痰を吐くようなすさまじく不快なノイズが聞こえてくる。
こんな時に限ってあの二人は外出中。真田の方は、アイドルを目指し、稲田が何処からか稼いでくる金を使い、アイドルスクールの研究生になった。あんなのが本当にアイドルに成れるのか?自分は頭の上に疑問符が立ち込み過ぎて頭が体に沈みそうだ。
無意識に点けていたテレビで、何かやっている。
アナウンサーたち、いやスタッフたちも、喉が千切れそうな断末魔を上げている。
一体全体何が起こったというのだ。
「遂に、アセンションが訪れる日が来たのです」
街頭では、そんな戯言を言っている宗教団体があったような。今も道という道を練り歩き、そう宣言し続けている。アセンションとは、彼ら曰く、この地球に何が大きな変化が訪れるという意味らしい。だからって、具体的に何が起こるかは漠然としたまんまだが。まあ、自分が憶測するに、地球滅亡とかじゃないだろうか。
先程から、外が騒がしい。どうやら屋上だけでなく、野外全体が叫びを発しているようだ。祭りか何か行われているんじゃないと自己解決を図るが、今の季節は生憎冬であり、祭りをやるような季節ではない。では、一体この騒がしさは一体何なのか?もしかすると、テレビのニュース速報を見た住人達が、それに驚き逃げ惑っているのではないのだろうか。
自分は恐る恐る家から飛び出し、外の様子を窺う。するとアパートの前の道路を、目ん玉ひん剥いて鬼の形相をしたおばちゃんがまるでイノシシが狩人から追われるように猛スピードで走ってくる。そのおばちゃんは、必死に何か危機を自分たちに伝達しようと試みているようだが、残念ながら息が切れており、何を言っているかは全く分からない。こちらの予想の結論は未だ出ず。
とりあえず、ダメ元で真田と稲田に連絡を試みる。
ズボンの後ろポケットから携帯電話を取出し、まずは真田に電話を掛ける。
すると、「現在電話がつながりにくくなっています」というアナウンスが耳元のスピーカーから無常にも流れた。既に世間は狂乱模様を呈しており、通信局の処理容量がオーバーしているということだろう。
そんなパニック状態に陥っている最中、真田は何をしていたかというと……
「1,2!1,2!……もっと足上げて!!!」
熱心なコーチが何故か世界で一番セクシーな準備体操を教授していた。