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その4~最近話題のアレ~

「死にたがり屋~死にたがり屋~死にたがり屋~……君は~~~~!」

最近話題の「JST13」。どうも日本は自殺が好きらしい。




蟹だと思ったら

人だった

その4~最近話題のアレ~



「で、職は見つけたのか?」

テレビを寝っ転がりながら見ている真田に軽いジャブを繰り出す。

「いや」

「一応言っとくが、お前らが職を見つけるまで住まわせるって約束で、毎日ハロワ行って職探してこなきゃ追い出すって誓約書書かせたはずだが」

自分の懐から、紙を取り出す。

第一、稲田はちゃんと毎日ハロワに通っている。こいつと来たら、一日中テレビの前を陣取り、お菓子をボリボリ食って一日を浪費している。従兄妹といえども、何という差。

「わかった!わかったから。でも、こっちも職を選ぶ権利はあるでしょ」

気だるく話しつつ、真田はテーブルにあるせんべいに手をかける。

「確かに。だが、お前が仕事選んでばっかりだと、いつまでたっても仕事にありつけないぞ」

「あ。ひとついいの思いついた」

そう言って、テレビ画面を指さした。

そこには、今を時めく鬱系アイドル「JST13」が、「ジュカイとアラナワ」というなんとも不気味な歌を歌っていた。歌っているセットのバックが樹海、そして天井からぶら下っている無数の荒縄。悪意あるセットとしか言いようがない。しかし、これはあくまでも「設定」だそうだ。死にかけている美女たちに、ファンたちが手を差し伸べて「救ってあげたい」という心理を引き出す効果があると、どっかの専門家がエラそうに語ってたっけか。

「私、あれになりたい!!」

何を今更夢見てんだ。そもそもお前はもう成人しちゃってんじゃん。そんな奴は、アイドルにゃあなれん。せめて中高生だろ。

「無理だ。今更アイドル目指してどうする。目指そうとしても只痛々しいだけだぞ」

「いいじゃん!一生に一度位、テレビ出てみたいじゃん!!!」

自分の足元まで、シャクトリムシのように動いてにじり寄ってくる。

「はあ……普通に街頭インタビューみたいのでいいじゃんか」

「それじゃダメ!もっと、私という存在をアッピール出来なきゃ意味がない!」

自己顕示欲の塊、とでも言っておこう。いくら必死に説得しても、真田は降りることは無く、流れで、書類だけ試しに、「JST13」の芸能プロダクションに送ってみることにした。


翌日。

芸能プロダクションから電話が掛かってきた。

「是非来てくれ」との返答であった。

……夢でも見ているのか?


その話を聞いて、真田は床を飛び跳ねて全身で喜びを表現した。

服はどうしようと聞かれたが、生憎自分は服のセンスは無いに等しいので、巷にいるような女の子を思い浮かべながら、派手にならず、かといって地味にならない、ある意味中途半端なモノを勧めた。


「じゃ、行って来い」

自分はドレスアップ(と言ってもファストファッションだが)した真田を玄関まで見送り、眩しい位の笑顔を浮かべ、凛とした姿勢で出陣していった。

てか、カツラ(最近はウィッグとか言うらしいが)着けてまで見栄を張りたいのか。……まあ、女の子だから仕方ないのかな。


そして、帰還。

真田の顔は、行きはあんなに輝かしい笑みを浮かべていたのに、何があったのか、死んだ魚のような目になっていた。

どう考えてもこいつ、落ちたな。

「どうだった」

ダメ元で尋ねてみる。

「月100万」

「は?」

「アイドルにはなれるみたいだけど、なるには研修みたいなのを受けなきゃならないみたい。それに月100万かかるんだってさ!」

吐き捨てるように真田はつぶやく。

「それさ、詐欺じゃないの?」

「詐欺じゃない!」

「てか、ホントにこの子入れたいと思ったら、金とか出させないんじゃない?」

その言葉に、真田はハッとする。

「そっか……、そうだよね。私、才能無いんだ」

才能じゃないくて容姿です。

「そんなことない!お前には立派な才能が一つだけある!!」

とりあえず、フォローに入る。

「何?」

「ダンボールに入る程、体が柔らかい」


「それは才能って言わないの!!!!」

真田は怒り心頭。

その後、自分はタコ殴りにされ、縄で縛られた。


<終>


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