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その3~いい迷惑(後)~

着いてしまった。

女の子を追放するどころか、厄介者を拾ってきてしまった。

やれやれだぜ……


蟹だと思ったら

人だった

その3



玄関に到着。

「絶対に、何見ても驚くなよ?」

自分は稲田の両肩を鷲掴みにし、必死に目で危険性を訴えた。

しかし、稲田はそんなものには見向きもせず、その辺をウロウロしている猫を呼び寄せ、顎を撫でていた。猫があまりに可愛い鳴き声を出すものだから、自分も思わずウットリしてしまった。

「猫、じゃなくて、女の子が今家に……」

女の子という単語に稲田は機敏に反応する。

「お前、オレに黙って不純異性交遊とは、許さん!!」

稲田は、興奮し自分の胸倉を掴んでくる。

「落ち着け!ちゃんと紹介してあげるから、許せ」

その言葉に納得した稲田は、不気味な薄笑いを浮かべ、鍵穴を指差し早く開けろと催促する。

自分は、何だか腑に落ちないモノを胸に抱え、渋々鍵を開ける。


扉が開くと、図々しくも真っ先に部屋に飛び込む。

そこには、テーブルの上で正座している女の子が冷蔵庫を睨み付ける、不思議な光景が広がっていた。

すると女の子の顔を見るや否や、稲田が突如発狂し始めた。それも、自分の予想の遥か上のことだった。

「ああああ、ミ、ミヨチン!!!!!!久しぶり」

「ミ、ミヨチン?」

全く現在の状況が把握出来ない。

「もしかして、マー君?超久しぶり!!」

あろうことか、女の子は稲田に駆け寄り、抱きつく。

稲田。オマエは過去に一体何をやらかしたんだ?よもや犯罪に手を染めてるんじゃあるまいな。

「ちょっと待った。お前らどういう関係なんだ?ヤバい経路で知り合ったんなら、速攻追い出す」

すると、二人は互いに肩を組み、微笑みながら、

「オレ達、従兄妹なんだ」

「え?そんな、証拠も無いのに信じられるか」

「あるよ!証拠なら」

すると、稲田は家系図をポケットから取り出した。

「ほら見てごらん!ちゃんと従兄妹ってなってるだろ」

「まずさ、それ以前に、この子の名前知らないからさ」

稲田は、目を見開き、女の子を凝視する。

「前から言ってるだろう?ちゃんと初対面の人には名を名乗るって」

「ごめん」

女の子は稲田に深々とお辞儀、続いて自分に向けてお辞儀をし、こう告げた。

「ワタクシ、真田美好と申します。以後お見知りおきを」

真田は、スカートが無い代わりに長い髪の毛を持ち上げて、お嬢様風挨拶を完了した。

するとつかさず稲田が、

「ダメだろ!髪の毛はちゃんと75cm上げろって何回言ったら分かってくれるんだ」

いや、突っ込むべき所はそこじゃないでしょ。

「まあ、二人が従兄妹だとして、これからどうするんだよ」

「もちろん、ここで暮らす!!」

二人、即答。

「だったら!ちゃんと金出せよ。ここの家賃結構高いんだしさ」

「いやいや、オレ達働く気無いから」

二人寝転ぶ。

「だったら出てってもらう!働かざる者食うべからずっていうだろ」

「じゃあ、見つけといて」

もう我慢の限界だ。

「いい加減にしろ!!!!!!!!!!!!!」

思わず叫んでしまった。すると、彼らから声は発せられず、代わりにドアの向こうから大家の声が。

「うっせー!!!黙れ!今ねえんじだっとおっもってんであ?」

相変わらずの酔い加減。舌が全然回ってない。

自分は部屋を飛び出し、すいません、と深々と何度も何度もお辞儀をした。

「けんどうりゃくいたら、けろすかんあ!おべーとけ!!!」

無事、大家を追い返すことができた。ふう。


「で、どうすんの」

「……ちゃんと働きます」


こうして、二人の就職活動が始まった。


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