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その2~いい迷惑(中)~

今、自分は窮地に立たされている。

なぜかって?


女の子が送られてきたからだ!!!!




蟹だと思ったら

人だった

その2~いい迷惑~



確かに、最初は返品の電話を入れて、業者に送り返そうと思った。しかし、良く考えたらそんな人を平気で送ってくる様な企業がまともに相手してくれるとは思えない。そういや、そもそも送り主の住所すら書いてなかったような……。


駐車場に到着。

デニムの右のポケットから車のカギを取出し、扉の鍵穴に挿入し捻る。

無事にロックが解除されたのを音で確認し、扉を開け、運転席にドッカと腰かける。

次はエンジンをかける。

ハンドルの横の鍵穴に先程のようにカギを差し込み、エンジン点火……のハズだった。

なんとカギを捻り、僅かな振動と共に前方よりブコッという不気味な効果音が聞こえてきた後、全くウンともスンとも言わなくなってしまったのである。

不味い。この間にアノ女の子に逃げられてしまっては、ココまで来た意味が無くなってしまうどころか、警察と一夜を過ごすハメになる!!

震える手を抑えつつ、車外に出、ボンネットを開ける。

驚いたことに、エンジンに何の異常も無い。その他機器を目視で検査したが、これまた異常が見つからなかった。

エンジンにはおそらく点火出来た。振動も起こってたし。なのでバッテリー切れが原因ということは考えられない。思い当たる節があるとすれば……あ!


「ガソリン、入れるの忘れてた」

昨日会社から帰ってくる時に給油ランプが光ってたのをすっかり忘れていた。最寄のガソリンスタンドでちゃんと給油してから帰れば良かった。

そんな自分の不甲斐無さにため息が漏れた。


しかし、その溜息を「待ってました!」とばかりに待ち望んでいた男が草むらから様子を窺っていたのである。

友人の「稲田」である。


「カワリン!久しぶり」

タイミングも読まずに堂々と草むらから飛び出し、挙句の果てには散々使うなと言ってきたあだ名を何の躊躇いも無く使う。あいつは昔からそういう男だった。しかも、片手にはご丁寧にもガソリンの入った缶を持っていた。


「そのカワリンっていうの、やめてくんないか?」

「いやいや、やめられんよ。俺たち、無二の親友だろ?」

「そんな覚えは一切ない」

「なに照れてんだよ!……それでカワリン、ココで何してんの?」

既にその時には給油口の前でスタンバイしていた。

「ガソリンがなくて車が動かない。以上!」

「お望み道理に!」

待ち焦がれていたかのように、急いで給油口の蓋を開け、ガソリンを注ぎ込む。

「何の器具も使わなくて、大丈夫なのか」

「大丈夫だ、問題ない」

そう言いながら、脇からガソリンが流れ出ている。

「全然大丈夫じゃねージャン!!!」

「後で拭く」

ボロボロの半ズボンから取り出された、どう見てもハンカチのようなもので脇を必死に拭いている。

「良いよ、自分で拭いとくから」

何だか見てられなくなったので、後ろのトランクから雑巾を取り出す。

「いいや、俺が責任を持って拭く!だって、オマエんちに泊めてもらうんだから、これぐらいやんなきゃ割に合わないだろ?」


今、奴は何て言った?

ウチに泊めてくれ?今の状況では到底無理だ。

てかアイツ、アパートに住んでたんじゃないのか?


「お前、家どうした?」

「借金しすぎて家賃払えなくなった」

以前、大学時代にも塵も積もれば山となるでは無いが、高額の借金を今まで苦労して貯めた自分の貯金を叩いて弁済したというのに、アイツは性懲りも無しに自分にお金を一銭も返さず、それどころかまた借金を抱えるという愚かなことになっている。只、アイツには昔の借りが有るので、一概に見放すことはなかなか出来ない。

「じゃあ、車中泊なら許してやる」

「いやいや、ガソリンあんま無いし、外寒いし……凍え死んだらオマエ責任取ってくれんのか?」

確かに季節は既に冬だ。車中泊には辛い季節かもしれない。

だが、部屋に入ることになるとしたら、今のイレギュラーな状態をまずは理解して頂くことが先決だ。

「分かった。だけど、部屋入ってもさ、絶対に驚くんじゃないぞ。絶対だかんな」

「承知した。オマエの物品管理能力の低さは筋金入りだからな」

いや、そういう次元の話では無いが。


何だか納得いかないが、成行きで稲田を渋々引き取ることになった。


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