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RG50E  作者: HARIMA
70/86

70 砕けたプライド。

「で………アンタら、ヤッたのか?」


「はあ?」


ショッピングモール内での"女の闘い”は続いていた。


想定外な"しぶとさ”を見せる美葉に、愛華は業を煮やし。

一軍女子としてのプライド(くだらない)が、常に相手に対するマウンティングを行なわせる。


美葉は。

これでどうだ!?と言わんばかりのニヤケ顔の愛華の、場違いで間抜けとも言える"質問”の意図がわからないでもないが、敢えて呆れ顔で尋ねる。


「ヤッた…………って?

何を?」


「トボケんな!!

まあ………陰キャなんかにゃチト、シビアだったか」


愛華は嘲笑ってみせる。


そんな下品な話題を勝手にフッかけておいて勝手にウケている、目の前の"自称一軍リーダー”を美葉は哀れにすら感じ始めていた。

クラスでは校則スレスレのメイクやネイルで自分を盛り付け、ウソ臭い武勇伝、聞いてもいないのに声高な自己アピール。

他人をマウントすることでしか自身の価値を見出だせない輩に…………


「…………もう、やめよう。

こんな大勢の人の居るところで。

恥ずかしいよ」


そんな美葉の忠告も聞こえないかのように、愛華は追い打ちをかけるつもりで叫ぶ。


「どうせ、ソッチは付き合ってるって自分で勝手にモーソーしてるだけだろ!?

ハハハッ

コッチは、陀威也のヤツ、毎日毎日ヤらせろヤらせろってウゼェくらいだっての!!

ま………オンナとして魅力の有るか?無いか?って、一目瞭然さ」


ドヤ顔で見下ろす愛華。


ふと………美葉は思い起こした。


これまで烈貴は、自分に対し"ヤらせろ”などと要求など一度もしてきてないし、アピールもしていない。

ただただ………それまで自分にとってコンプレックスだった部分を褒めちぎり、気に入ってくれ、愛でてくれている。

ありのままの自分を「可愛い」「好きだ」と優しく抱き締めてくれる…………

常に、一緒に気持ち良くなれることを考え、してくれている…………

生まれて初めて、異性の愛情というものを感じさせてもらっている。


改めて美葉は、幸せを覚え。

思わず笑みが溢れた。



その笑みが、愛華には自分に対する嘲笑に見えた。

途端に険しい表情となり、唇を噛み締める。


「………テメェ………どんだけ人をディスれば気ィ済むんだよッ!?」


愛華がなりふり構わず、美葉に掴みかかろうとした時。



「美葉ちゃん!」



振り向くと………そこには。

ヘルメットを脱いだ額に汗を光らせ。

黄色い一輪の花、アキノキリンソウを差し出す烈貴の笑顔があった。


「…………先輩ッ!!」


愛華を振りほどき、美葉は烈貴に抱きついた。


両瞼から、涙が溢れた。


「………先輩………先輩!

良かった………無事に帰って来て」



花を持ったまま、美葉を抱き締め微笑む烈貴。


「言ってたろ?

大丈夫だって」



呆然とする愛華。


「…………陀威也…………陀威也…は?」


「ああ、カレなら。

山を降りきる手前で擦れ違ったよ」


愛華は、思わずベンチに座り込む。


対して、花を受け取り。

烈貴の腕の中でウットリ顔の美葉。



…………負けた。

敗北だ………!


悔しさと、陀威也の不甲斐なさへの怒りが愛華に込み上げて来た。


(アイツめ………恥をかかせやがって!!

捨ててやる………もう、今日限りで他人だッ!!)


その場を立ち去ろうとする愛華。



「………あれ?

どこ行くの?」


引き止める烈貴に、愛華は背中を向けたまま呟く。


「…………スタバの件は、アイツにたかれよ。

ウチは帰る」


「待てよ!」


鋭い声をかける烈貴。


「君のカレシだろ?

勝負のことも、スタバで奢る件も、どうだっていい。

…………帰って来るの、待ってやるのが普通だろ?」



キッと振り返り、険しい目を向ける愛華。


「………あんな奴、最初からカレシでも何でもない。

勝手にウチにまとわりついてたキショい野郎さ。

関係無い!」



今度は美葉が声を上げる。


「ヒドい……………あなた。

男の子のこと、何だと思ってるの!?」


「う………うっせェなッ!!」


追い詰められ、我を忘れてベンチを蹴飛ばし、地団駄踏む愛華。


プライドなど、とうに砕け散っていた。





その頃………


展望台に向かう峠道の、木陰になっているヘアピン・コーナーで。

一台の黒いマジェスティが、大破した状態でガードレール手前に倒れていた。


陀威也の姿は………無かった。



続く


〈砕けたプライド・完〉

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