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RG50E  作者: HARIMA
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⑳夏の予感。

………7月に入っていた。


白いカッターシャツと、ブラウスの出で立ちが目に馴染んで来た季節。


コンクール出場まで一ヶ月を切り、吹奏楽部の練習メニューも曲の通しをメインとした、言わば全体の流れの中で課題をチェックして行く内容へ移行している。


入って最初の週末は、コンクール本番を想定し、市民ホールを借りた全体演奏練習を行うことになった。


市民ホールは、高校から車で8分程の市内中心部にある。

烈貴達の部では楽器のみを学校所有のマイクロバスで運び、部員達は徒歩で20分程でホールへと向かうが。

烈貴らバイク通、自転車通の面々は、それらを使って向かっても良い。



RG50Eという原付バイクが現行モデルだった昭和の昔では、バイク通学の高校生徒も多く。

男子はギア付きのスポーツ&レジャーモデル。

女子はスカートのまま乗れる、当時各メーカーから発売されていたバラエティ豊かなスクーターが愛用されていた。

莉奈の乗るトライも、その頃の一台である。


しかし現在は。

かつてバイク通学の距離だった範囲では、親の車で送迎……というのが主となり、烈貴のような生徒は全校でも2、3名に留まっている。

そうした話題となると、烈貴の父・正和お決まりの「俺の頃は……今の奴らは……」談義が始まるので烈貴は極力、そうした話を家では避けているのであった。


令和の世では。

若者の興味の傾向としてはスマートフォンのオンライン・ゲーム等、インドアに重きを置き。

バイクはおろか、車さえも

"単なる移動手段”

に過ぎないとし。

走りそのものを楽しみ、相棒として所有する喜びを持つ………等というのは過去のことであるのが概ねの見方だ。

バイク通学率の低下も、そうした世相を反映しているとも言える。


体力的に過酷なのは運動部員達に留まらず、コンクールを直前に控えた吹奏楽部員も同様である。

そうした部員達のコンディションを案じ、顧問の渡辺はホール練習翌日の日曜日をオフとした。


「あんまり遊び過ぎんなよ(笑)」


土曜日の午後、そう言って渡辺は部員達を帰すのだった。


「………美葉ちゃん、海って行く?」


ホールを後にし、一旦学校へと戻り。

皆で楽器をマイクロバスから下ろし、音楽室へ戻した後。

駐輪場へと向かう途中、烈貴は美葉に尋ねた。


烈貴と並んで歩いていた美葉は、この突然の問いに………ポカンとしている。

烈貴は、質問の仕方間違えたかな?と多少恥ずかしくなり頭を掻く。


美葉は答える。


「あ………そうですね〜、小学校の時に家族で海水浴行ったきりだから。

もう、三年は行ってないかな?」


「………そ、そうなんだ」


烈貴は、次に言う言葉を探した。


「あ………あのさ。

明日って………ひま?」


立ち止まる、美葉。


もう既に………先輩が自分に何を言いたいのか、何を求めているのか?

初恋と同時に、恋愛脳となっている美葉には理解出来た。

紅潮する顔に笑みを浮かべ、烈貴に応える。


「………ハイ……大丈夫です!」


美葉の反応に、ホッとしたのか嬉しいのか分からない笑顔を見せる烈貴。


「じゃ、一緒に……海行かない?」


「ハイ!

行っても、いいんですけど………」


何やら俯きながら口籠る美葉に、烈貴は少し不安を感じたが。


「………水着、持ってないから。

私、泳いだりは出来ない………ですけど、いいですか?」


顔を上げた美葉は、照れ笑いをしている。


烈貴のハートを………

そんな美葉の姿が、撃ち抜いていた。



続く


〈夏の予感・完〉

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