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RG50E  作者: HARIMA
15/47

⑮美葉の気持ち。

「先輩!

大丈夫ですか!?」


烈貴の顔を見るなり、気遣う美葉。


日曜日、休日部活の朝。

美葉はピンクのジャージ姿で登校する。




金曜日の放課後、音楽室へ入ると。

そこに烈貴の姿は無かった…………

聞けば、体調を崩したという。


それは美葉にとって、入部後初めてのことだった。

いつも隣りに居てくれた、先輩が居ない。

ただ、それだけのことが。

その日だけかも知れないことが。


どんなに寂しいことなのか…………


美葉の胸を切なく、締めつけていた。


空白の土曜日は、烈貴への想いで満たされた。


今ごろ、どうしてるんだろう………

まだ身体は、シンドいのかな………


夜、布団に入っても。

それが頭から抜けることは無かった。


一人の男の子のことを想って、切なくなる………そんな経験は美葉にとって初めてのことだった。

それまで、まわりに居た男子達を美葉は

「女子と比べるとガキだなぁ」

と、まともに取り合わなかった。

漫画やネットで恋愛物の話を観ても、美葉には「向こう側の他人事」に感じ。

入り切ることも出来なかった。

その感覚は、美葉が中学を卒業し、今の高校へ入るまで決して変わることは無かった。


だが。

入学式もそこそこに向かった音楽室で、美葉は自分にとっての"王子様”と出逢うことになる。

それが烈貴だった。


"王子様”は、特にアイドルのようなカッコいいイケメンでもなければ、誰もが尊敬の眼差しを向ける秀才でも無かった。

むしろパッと見、頼りなさそうで。

演奏スキルも、自分の居た中学の生徒の方が遥かに上に感じた。


だが………

優しかった。


それは、烈貴が自分へ向ける言葉の端々。

表情………特に、笑顔。

楽器を取り扱う手付き。

皆への態度…………

全てに滲み出ていた。


初めて音楽室を訪れた時を思い出す。

この高校の吹奏楽部のレベルの低さを、美葉は正直ディスっていた。

強豪校の呼び名を欲しいままにする、自分の出身中学の名を出せば、皆ひれ伏すと思い上がっていた。

だが………当然と言えば当然、在校生部員の反発を食らった。

あの………長身で冷たい美人顔の三年生・莉奈が、怒りを露わにしながら迫った時は正直


(しまった!)


と背筋の凍る思いがした。

莉奈の態度が、そのまま部員達の総意にさえ感じ、身動きも出来ずにいた。


そこへ。

「こんな頼もしい新人が入って来てくれて、嬉しい」

と間に立ってくれたのが烈貴だった。

それだけではなかった。

自分の原因で暴行を受けるはずだったのを、危険を省みず、文字通り盾になってくれた………


リアルで、こんな素敵な王子様と出逢えるなんて。

美葉は思っても見なかったのであった。


烈貴が救急車で運ばれた、その晩。

美葉は夜明けまで泣き明かした…………




「金曜日?

ああ、もう大丈夫。

大したこと無かったんだけど、心配かけてゴメンね」


前日、父親とともに海へツーリングに出かけ。

気持ちの吹っ切れた烈貴は、爽やかな顔をしていた。


笑顔に戻った美葉の瞳に、薄っすらと涙が浮かんでいたのを。

烈貴は気付かなかった。


(…………好き。

私は、高橋先輩が好き!)


美葉は、自分の気持ちをシッカリと確かめた。



続く


〈美葉の気持ち・完〉

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