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アタリショック

あの激動のVtuberフェスから、一か月ほど経った。

クズナマイは、相変わらず配信を続けている。

吹っ切れたのかもしれない。以前よりも可愛らしい毒が増えた。

私とのweb会議も、ライブ前を最後にしていない。

仕方ないことだろう。




「クズナマイは、正式にうちの事務所のVtuberに転生する。」




電波にゅーすアカリが言うには。

この間のライブの出来事は、ぶっちゃけ出禁レベル。

しかし、あの中断から500円便乗スパチャの嵐、歌いなおしのクオリティの異常なまでの高さなどから、事務所の社長がドラマ性をビンビンに感じ取り、正式な決定を迎えたとのことだ。

他のVTuberはといえば、途中までは正直「何アイツ」だったそうなのだが、ことの成り行きを話したところ同調(泣き出す者まで)してくれたそうで、人間関係もとりあず当面は問題がなさそうだった。






さて、今日はといえば。

クズナマイのゲーム配信がある日だ。なんの変哲もない。

しかし、アカリから「今日見ないと○す。」とまで言われてしまったので、見ることにする。『処す』じゃないところが怖すぎる・・・。


配信タイトルは・・・『問題レトロゲーを攻略!※注意あり』

なんだこりゃ。

いつもの配信とはちょっと違いそうな雰囲気だが・・・何があるというのか。




『こんばんは!クズナマイ、です!今日はー、このアタリ2600というハード、みんな知ってる?このハードのETをやっていくよ!』


なんだこりゃ。

配信を見てもよくわからんな。

卒業発表までもう日もないだろうに、何をしとるんだこの娘は。

《しらねぇー!》《出た!問題タイトル!!》《どうやって配信してんのこれ》

多分、彼女の弟だろう。

『今日は、息抜きみたいなものだから、スパチャは出来なくなってまーす。それじゃ、やっていくね。』

ETというにはあんまりな四角い塊がちょこちょこと行ったり来たりしている。

何を見せられているんだ、という気分になる。


《なにwwwwこれwwww》

《放送事故じゃんwwww》

《クwwwソwwwゲーwwww》


クズナマイも、今日はおしゃべりが少ない。

というか、ほぼしゃべってない。

ほんとに、なんなんだこの配信。




『ありがとう。』

そう思っていると、ポツリとクズナマイがつぶやく。


『ありがとう、ありがとう』


コメント欄もざわめく。

《何この状況?》《謎www》

《まさにアタリショック》




まさにアタリショック・・・







そうか、そういうことだったのか。

『ありがとう、ありがとう。ありがとうございました。』


『ほんとに、ありがとう、あなたがいなければ、ここまで来れなかった』


『歩き出すことが、できなかった。』

『ありがとう。』




これは、クズナマイと私だけがわかるメッセージ。




「わたしこそ、ありがとう。クズナマイ。」

誰にも聞こえないつぶやきを返す。




《あなたって誰?》

《ありがとう!!》

《ありがとな!!》

《お礼いう流れ?謎wwwww》

《ありがとう!!》

《ありがとう!》

《ありがとね!!》

《ありがとうございました!!》




この次の配信で、クズナマイはリスナーに卒業を告げた。

前向きな卒業、ということで悲しそうなコメントもちらほらあったが、好意的に受け取られたようだ。そもそも企業勢のような何万人のチャンネル登録があったわけでもない。

彼女は進んでいくようだ。







さて、私はといえば。

久しぶりに朝早く起きて、久しぶりにスーツを引っ張り出し、久しぶりに髭を剃った。こうして髪までセットすれば、無職には見えないから見た目から入るのは大事だ。

働かざる者食うべからず。食うためには、働かなくてはならない。

これから職探しだ。人生はまだまだ長い。

嫌なことがあれば、配信を見よう。

大好きな配信を。

そこには、私が生きる意味がある。

大好きなVTuberの次の企画まで頑張ろう、次のライブまでやってやろう。

配信を見るために早く帰ろう。


そして、大いに笑おう。




いろんなツテはあるがこの就職難、はたして。

まずは、

ハロー、ハロワーク。

なんてな。


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