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初恋を教えて

「良かったんですか?」

「ハァッ、ハァッ、何がよ。」

ライブを終えた電波にゅーすアカリが、肩で息をしながら戻ってくる。

「大トリを、新人に譲ってしまって。」

「良くないよ、私だってトリで出たかった。」


「でもね?」

「それよりも、それよりも皆の前でクズナマイに歌って欲しかったんだよ。」

手をぎゅっと握る。

「・・・私は、あなたを大舞台で歌わせたい。次こそは、あなたの番ですからね。」

「ありがとう、マネちゃん。」

準備が出来たクズナマイが走ってくる。

「皆さん、本当にすみませんでした。」

深く頭を下げる。

「ほんっと、ありえないから。」

アカリは、わざと嫌みな声を出す。

「最高のステージで、チャラにしてあげる。」

「はい!」


「クズナマイさん、準備オーケイです!」

「配信、乗せます!」







うわぁ、すごいコメント数。

さすが、アカリちゃんのとこのライブだなぁ。

《くる?》

《くるか!?》

《きたーーーーーーーー!!》

『みんな、お待たせしてごめんなさい!!』

《待ってたぞー!!》《新人枠?》

《これがアカリちゃんの言ってたアンコールステージ・・・》

《魔物村の人だ!!!》《ボブ・ディランの人!!wktk》


きっと、アカリちゃんがうまく場をつないでくれていたんだ。

それに、応えなければ。


《歌楽しみー!!》《あの動画の曲歌うのか!?》


この人たちの気持ちに、応えなければ。


『ちょっとだけトラブルがあって、順番が変わってしまいました・・・ほんとは、アカリちゃんの前にやらせもらう予定だったの。』


《かまへんかまへん》《アンコールステージええやん!》

《おさげかわいい》

『精一杯、歌うから。気持ち伝わるといいな。聞いてください。』


『初恋を教えて』




イントロのメロディー。

ここ、好き。

すごくかわいくて、ウキウキする。

わかるなぁ、こんな気持ちになってた。




『♪春の風が吹いたら』


『♪あなたに、会いに行きたい。』


『♪夏の風が吹いたら』


『♪あなたに、会いに行きたい。』

私の生きてきた道には、ずっとお兄ちゃんがいた。


『♪てっぺんの星を見上げたら』

でも、ここからは私一人で歩いて行かなくちゃ。


『♪あなたの顔が浮かぶから。』

あなたの顔が、浮かぶから。


『♪るらら、るらら、』

もう振り返らない。


『♪風に乗せたメロディは』

結婚おめでとう、お兄ちゃん。


『♪あなたの元に届くかな』

でも、







でも、やっぱり


私さみしいよ、お兄ちゃん。







クズナマイは歌うのをやめてしまった。




顔に手を当てている。

3Dだから、わかってしまう。




クズナマイは、泣いている。










《どうした?》

《マイちゃん!!》

《泣いてる?》

コメント欄も困惑している。



「アカリさん、彼女はやはりだめです。」


「もう少しだけ待って、もう少しだけ!」


「(ダメじゃないよ、みんないるよ、だから)」




「みんなで乗り越えよう、マイちゃん。」















《(500円)頑張れ!》




音が止まる。


《(500円)頑張れ!》


《(500円)頑張れ!》


《(500円)負けんな!!》


《(500円)え、何、こういう流れ?》


《(500円)よっしゃがんばれ、クズナマイ!》


《(500円)ウララララララララ!》


《(500円)春巻き!》


《(500円)アホな抱擁犯!》


《(500円)頑張れ!》


《(500円)アンチに負けんな!》


《(500円)アンチコメあったの?》




・・・音が止まり、ゆっくりとクズナマイは顔をあげる。

コメント欄は



《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》




500円のスーパーチャットで真っ赤に染まっていた。




クズナマイは目を拭う。


「音源、もう一回最初から。」


「え、アカリさん、だってこの娘はもう、」


「何やってんの?早く!!」







『ごめんね、ごめん。ちょっと、ぐっときちゃった。』


『今度はちゃんと歌うね。』


『みんなのために、歌うね!』




可愛らしいイントロが、少し寂しくもあるメロディが、今度は力強く鳴り響く。





『♪春の風が吹いたら』


『♪あなたに、会いに行きたい。』

《この曲めっちゃすこ》

《わかる》

《それ》


『♪夏の風が吹いたら』


『♪あなたに、会いに行きたい。』

《だれ作った曲?》

《のびる曲じゃないな(でもすこ)》

《俺たちで愛でていこうや》


『♪てっぺんの星を見上げたら』


『♪あなたの顔が浮かぶから。』

《俺の顔!!!》

《いーや、俺だね》

《みんなにしとこうぜ》


『♪るらら、るらら、』


『♪風に乗せたメロディは』


『♪あなたの元に届くかな』

《届いてる!!》

《今届いた!!》







間奏のメロディで誰もが理解した。

これは、失恋の曲なのだと。




『♪るらら、るらら』


『♪風に乗せたメロディが』


『♪あなたの元に届いたら』


『♪開けずに捨ててほしい。』


『♪初恋の代わりに』




『♪そっと・・・忘れてほしい。』




『♪初恋の代わりに』







クズナマイの初恋は、終わった。




《888888888888888888888》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)泣いた》《全俺がないた》《マイちゃーん!!》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《ありがとう、これで救われる》《語彙力ないなったやばい。》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《魔物村から、よく頑張ったなぁ。》《すごすぎて語彙力やばい》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《わたしも、もう一度こんな風に歌えるかな。》《クーズナ!クーズナ!!》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《マーイちゃん!マーイちゃん!》

《どっちで呼べばいいの?》《どっちでもええやんええやん!!》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》

《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》《(500円)》




『ありがとう、ございました。』




でも、それは彼女のはじまり。

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