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無職と底辺

この作品を、毎日を懸命に生きるすべてのVTuberとリスナーに捧げます。

私は無職である。

名はある。猫ではないから。

ついこの間まで定職についていたものの、とある理由で解雇されたのだ。


全く、最悪だ。

就職活動をする気にもならない。

幸いにして、身を粉にして働いてきたもので、貯金だけは死ぬほどある。

並みの芸能人よりあるのではないだろうか。

そんなわけで、今私は怠惰に惰眠を貪り、動画配信サイトで生配信を見ながら時間を無駄にしているところだ。


諸君はVtuberをご存知だろうか?

配信者の動きをカメラでキャプチャーし、それに合わせて動く二次元のイラスト、つまりはガワだ。

これがお喋りやら、ゲームをしながらお喋りだをするわけなのだが、現実世界にすっかり疲れてしまった私には妙に合ってしまい、最近では大手事務所から個人まで、幅広く見るようになった。

今日はそうだな、個人で他に視聴者がいないような娘を見たい気分だ。

私は適当な語句を入れて動画配信サイトを検索する。

すると、現在配信中の娘が目に止まる。


名前は、「クズナマイ」。


頭には伝説のVtuberであるキズナアイが浮かぶ。

今どき伝説のvの名前をもじる奴があるか、と心のなかで突っ込みをいれ、その配信をクリックする。

『わぁ、わぁ、わぁ!いらっしゃいませです!!』

クズナマイ、見た目は茶色い髪にリボンが乗っかって、青いノースリーブのジャケットを来ている。まるでホロライブのときのそらだ。名前はキズナアイ、見た目はときのそら、この娘、大丈夫なんだろうか?


『さて、雑談をはじめていきたいと思います!え~と・・・』

まだ何もはじまっていなかったらしい。

とりあえず私は炭酸水を冷蔵庫に取りに行くことにし、少しだけ席を離れた後、パソコンの前に戻ってくる。


すると、彼女の「ガワ」はぷらぷらと横に揺れているだけで、「えっと、えーっとぉ・・・」と、何だかまごついている。

雑談の配信ではなかったのか?

私は困惑していると、みるみる視聴者数が減っていくことに気がつく。

『あ!待って、待って!』

何を待つのか。時間は有限だ。皆忙しい。時間を無駄にしないように、面白くない配信を切っただけのことだろう。

最も、時間を無駄にしている私には、これもよい暇潰しになるのだが。

とうとう、視聴者数は私一人になってしまったようだ。

ガワは相変わらず笑顔でピョコピョコと揺れている。

しかし、様子がおかしい。

何だかズビズビ聞こえてくる。

ついには、嗚咽まで聞こえてくる。

笑顔のガワの裏側でガチ泣きをしているようだ。


私は困惑してしまう。

暇にあかして、なぜこんな地獄絵図を見せられなければならないのか。

私は気まぐれに、スーパーチャットで500円を送り、「頑張れ」とだけ、コメントをつける。

すると、彼女の嗚咽が止まる。

『わぁ!わぁ!アタリショックさん、ありがとうございます!』

パァッという音が聞こえてきそうなほど、彼女の声は明るくなる。

「どういたしまして。」

私も、彼女に聞こえない返事を返す。

『今日が、初スパチャです!!生まれてはじめての!良かったー!苦節1ヶ月、長い旅でした!』

1ヶ月もこの調子だったのか?

そんなのでよく1ヶ月も続いたな、と逆に感心してしまう。

『あのー・・・アタリショックさん、これも何かのご縁。あなたに聞きたいのですが』

私は「何でしょう?」とコメントする。

『やった!これで10コメント目です!!』

根性だけは間違いないようだ。

『あの、私、どうやったら伸びると思いますか?』

彼女から出てきた問いは、まさしく全配信者が思っていることであり、そもそも配信で絶対に話題にされないであろうことであった。

私は思わず仰け反る。


「それを私に聞くの!?」


我ながら、まるでアニメのようなリアクション。ソファの後ろの壁が見えた。

『お願いします~!私、Vtuberとしてやっていきたいんです~!』




今思えば、怪しい勧誘や詐欺の類いとも見える。

だが私は、暇潰しや気まぐれといったもので、彼女にアドバイスをすることにしたのだった。

これが、まさか私の一生を左右する出来事になるとは、このときの私は思いもしなかった。


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― 新着の感想 ―
クズナマイで最初に感じたのは倉木麻衣でした。言われてみればキズナアイですね
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