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リリ・ポーターによる『ざまぁ』実況解説をお送りします。

作者: 水素sui

誤字報告を頂きありがとうございます…!


さあさあ本日もやって参りましたパーティー会場。

煌びやかな場で豪奢な装いの集いとなる本日の名目は紳士淑女が通われる王立学園卒業式の場でございます。


会場に招かれましたわたくし、この場の実況を務めさせていただきますリリ・ポーターと申します。そして解説を務めますのは同じくリリ・ポーター。同一人物による同一進行にて死ぬ気で纏めて進ぜましょう。


本来この場は学園の生徒達や教師陣のみが許された場でありご親族の方々は別会場にて今後の事業計画や親交を深めるべく楽しまれているご様子です。


何故部外者である実況解説がこの場にと仰る?


いえいえとんでもない。招かれたということはリポーターを任された私リリ・ポーターも参加条件を満たした人間であるということです。なぜなら卒業生徒の一人でございますから。


自分の卒業を祝いつつ、今回複数のリポートを任せていただいた元放送部部長の私はまず一人目の依頼者を探しておりまして……ああーっと!!探す手間なく見つかりましたのは会場中央に居らせられるより煌びやかな装いをした赤いドレスの御仁です!!



「ナターシャ!僕はこの場で君との婚約を破棄する!!」


『なななぁんと!?会場全体に響き渡るよう声を発したのはゴネル・メンゴ侯爵令息だ!!彼は婚約者で伯爵令嬢で在らせられるナターシャ・ケンザン令嬢へ断罪の言葉を解き放つーーー!!!』


「な、なんだ……?」


「お気になさらず。わたくしが雇った実況解説の者です。この場の出来事を皆に報告してくれる者ですので、悪しからず」


「そう…か…?まあいい、貴様の悪業がこの場で公になるなら返って楽になるからな!後悔するがいい」




動揺を隠せない様子のゴネル令息だが、毅然と振る舞うナターシャ令嬢にその指を伸ばし指しているご様子。

人を指さしてはいけませんとは幼子ですら習う最低限のマナーを侯爵令息であろう人物が知らないとは驚きですね!


彼は断罪と銘打ちナターシャ嬢へ様々な悪業と言われるものを公開しているようですが、この件皆様は如何思うのでしょう?内容を深く聞いてみないと分かりかねますね!


何やら指した指をおろし始めましたが、マナー指摘に羞恥を抱いたご様子だ!



「……改めて。君はあまりにも人に厳しすぎる節がある!婚約者である私への敬意もなく、いつもマナーや勉学において口煩い上に、周りにもそれを強要しているだろう!君からの強要に心を痛める者もいただろう。よく辛そうにしている学友達を見かけたが、思い遣りというものはないのか?お前のように他者を見下し思い遣りのない者が婚約者など、私は受け入れられない!婚約破棄を言い渡す!」



なんということでしょう!マナーや勉学において他を圧倒する実力を持つナターシャ令嬢は確かに有名だが、強要していたということか!?


『これについては賛否両論別れるのでしょうか?わたくしもナターシャ嬢から指南を受けたことがあるので言えることですが、強要という言葉は不適切なものではないでしょうか?彼女は試験範囲となる勉強を独自にされた後、他者に教えることでより理解を深めていたご様子。周りの方々も彼女と共に勉学に励むことで成績を奮われたと伺いますが真実は如何に?』


「現に苦しそうな顔をしていたのは間違いがないだろう!それに彼女は理屈っぽく頭も硬いし教え方も下手だ!現に僕の成績はそこまで変わっていないのだからな」



なーるほどこれは皆様如何でしょう?

ナターシャ令嬢と言えば聡明で優秀な成績を保持する方。彼女の教え方は学園教師陣よりも、より砕いて分かりやすく相手に合わせた勉強法の指南するというものだ。

現に彼女と共に勉強した人達の中で成績が上がったという声は聞くものの、下がったり変わらなかったという声は聞いたことがない状況だ。


そもそも教え方が下手、という話もここに来て初の情報だ!ゴネル令息が理解出来なかった、という話の方が信ぴょう性は高そうですね!


ゴネル令息はどのように勉強をされていたのでしょう?噂では勉学にあまり良い話を聞いたことはありませんが、ひたすら練習問題を解いていたと言う話は聞きます。もしかしてそれもナターシャ嬢が作った練習問題なのではないでしょうか?そしてその上でそれすら理解出来ず、口頭注意を受けた際彼女に責任を押し付けているのでは!?


真相はいかに!



「……わたくしは、貴族として困っている者へ手を差し伸べたつもりでしてよ。助けを求められた方々に勉強をお教えする事はもちろんありましたわ。皆様優秀で飲み込みも早く、成績にも現れ感謝も頂きましたの。ゴネル様に至っては『内容は知らなくていい、出そうな物を纏めておけ』と仰るので用意しましたが。それでは良くないとお伝えすると機嫌が悪くなるのでそれ以上は特に」


『なんということでしょう…!勉強において内容を理解し解くのではなく上っ面だけの暗記型ということだ!正論を言われたことに対し機嫌が悪くなると言うのは自分本意の現れでしょうか!?思い遣りという言葉を使っていましたが自分本意の人間から出るにしてはあまりにも違和感を覚える言葉ですね!?』


「う、うるさい!僕は間違ってないだろ!!」



僕は間違っていないと仰りますがどうでしょう?


相手に対し思い遣りを持つということは、他人の気持ちを理解しようと努め寄り添う心のことを言います。相手の立場や状況を理解し、相手にあったやり方や考え方を供給するナターシャ嬢は思い遣りの塊のような人に見えますが……。


その点ゴネル令息は自分に合わせて行動してもらう事が当たり前という考えのようですね?自分が成績を奮わないのは教え方が悪いせい、誰が見ても良くないからとマナー指摘を受けても直すどころか厳しいといい、やることなすこと自分に合わせない相手が悪いと宣言した訳ですが!


言えることとすれば、ナターシャ嬢は婚約者という立場であって貴方のママでは無いですよということでしょうか!?


何やら顔を真っ赤に染めておられるゴネル令息ですが、相反して目の前のナターシャ嬢は美しく輝きを放ち凛とした姿勢を保たれておられる。なんと美しいのでしょう。



「…わたくしは婚約者として、出来る限りゴネル様の為になればと努力したつもりでした。ゴネル様の恥にならぬ様人並み以上に努力し、成績も保ち、交流も深めようとしましたが……あなたが仰られた通り、わたくしも自分を思い遣りたいと思います。自分を思い遣ってくれる人がいいと、そう思いますわ」


「……ナターシャ…」




今更なにかに気づいた様子のゴネル令息だが、ナターシャ嬢は彼を一瞥しただけの様子だ!

関係修復を図るのは難しい状況に見受けられるが、果たして二人の未来は如何に……ああっと周りからは拍手喝采!皆ナターシャ嬢の普段の行いを知っている様子だ。つまりこれ以上ゴネル令息に勝ち目はない状況に見受けられますが……あらあら、私リリ・ポーターを睨んでいらっしゃいますか!?



「ゴネル様、わたくしが雇ったものですの。うちの庇護下にいるものであることと共に、最初に貴方が許可を出したということをお忘れなく」


「っ……く、失礼する」



悔しがる様子でこちらを睨みあげたゴネル令息だったが、私の前に立ったナターシャ令嬢により安寧は保たれた!

たった今ナターシャ・ケンザン令嬢の庇護下に入ったわたくし、リリ・ポーターと申します!以後お見知りおきを……。


「相変わらずユニークで楽しい子ですこと。状況が優位になるとは言え、巻き込んで申し訳ないわね。あなた、まだ時間はあるのならこの後一緒にどうかしら」


『私の日頃の行動を評価して頂きましたこと感謝申し上げます!有難いお誘いに是非ともと言いたいのですがこの後もお呼びに預かっている物があります故また次の機会に是非!』



何とも美しく微笑むナターシャ令嬢、周りのフリー男性陣が頬を染める光景は圧巻である!聡明で優秀で花のように美しいご令嬢は……誰の手をとるのか!?


ああっとそうこうしている間に別所で騒ぎが聞こえてきますね!!次の依頼者が試合を始めたようですのでこの辺りで失礼!



周囲の視線を受けながら騒ぎの方へ向かっていくリポーターのわたくしを、皆楽しげに見つめてくれるのでありがたい所存でございます。

一部からは青ざめた顔をする者も見受けられますが…何やら思い直したかのように手に持つ紙をしまい始めたので、依頼はなかったが少しでも不幸を減らす協力が出来たようで嬉しい限りですね!


さて、本日2件目の依頼者は……いたいたおりました!



「ルーナ・サイフォース!貴様は公爵令嬢と共にここにいるナナを平民と罵り、虐げ、差別し辛い目に合わせたな!!今この場を持って、貴様を断罪する!」



『なななぁんと驚きの展開だ!!本日依頼を3件受けておりましたが、2件目のルーナ・サイフォース侯爵令嬢の話し合いは火蓋切った!そして3件目予定であった人物、ロザリア・テンペル公爵令嬢その人も同じ場にいるではないか!!これは一度で二度美味しい状況とも取れる!!』



「……お前は先程向こうで騒いでいた者だな?向こうは散々だった様子だが我々は構わないぞ。何故なら証拠が出揃っているのだからな!!」



何も言っていないのに許可を頂きました!

言質をとった以上今後何が起きても私の責は問わないと言うことで間違いないのでしょうか?こだまでしょうか。

ああっと頷かれたご様子に拳が立ち上がるーーーっ!

快く許可を下さるのはルーナ・サイフォース侯爵令嬢の婚約者……で、在らせられるルギウス・イラツ公爵令息だ!


そしてその後ろに居らせられる御仁はこの国の皇太子殿下、ライフォード・ロイズ・クローバー殿下。3件目の依頼者ロザリア・テンペル公爵令嬢の婚約者様だ。


流石に皇太子殿下を相手に……なんて事は一旦さておきまずはルギウス公爵令息のお話を聞いてみましょうか!




「ルーナはここにいるナナを平民の癖にと蔑み、様々な虐めに加担している。ロザリア公爵令嬢と共にな!形見である私物を壊され涙するも、我慢していた彼女を更に傷つけようとしたな!?彼女を傷物にする為に侯爵家が雇った野盗に襲わせようとしただろう!」


「蔑むも何も、わたくしそちらの方とはお話もしたことすらありませんわ。私物を壊す事は愚か、野盗を動かす力もありませんし」


「しらばっくれる気か!?私物が壊された部屋から貴様が出ていく姿を見たという証言がある。それに野盗を捕らえたのは私だ!お前の家紋が彫られた物を持った者がいたんだ!!これが何よりの証拠だろう!!」




今度は物的証拠となる物があるということか!?

そのようですね、彼は何やら薄汚れた布切れを手に掲げていますがあれは一体…?確かに家門の証が彫られている様にも見受けられますがだいぶ汚れていて解読が難しそうだ。


ふーむ、あれは一体何の布なのでしょうね?



「これは襲ってきた野盗が身につけていた物だ。侯爵家の者であるという証として。だがそこに私がいるとは思わなかったのだろう?たまたま近くを通りかからなければどうなっていたか……!」


『野盗が身につけていた!物!不思議な状況ですね!?雇われた野盗であれば侯爵家の者でもない為それを持っているのはおかしな状況です!敢えてルーナ侯爵令嬢の家門に罪をなすり付けるためという物であるなら理解できますが、そうでないなら雇われではなく侯爵家直轄の騎士達の犯行になる可能性がありますがどうでしょう!?』


「え、あ、確かに…?だがこれを身につけていたのは確かだ。私が捕え未だ牢に繋いでいるし、奴らもサイフォース侯爵家の依頼だと言っていた!」



サイフォース侯爵家の依頼、という事はやはり直轄ではなく野盗へ依頼をしたという形のようですね?何だか可怪しく感じるのはわたくしだけでしょうか?


いえいえ皆様違和感を感じることでしょう。

そもそも仮にルーナ令嬢が依頼をしたと仮定しても、彼女は何故わざわざ野盗へ依頼をするのか?野盗は野山で盗みや人を襲うもの達だ。定住せずその時々で動き生きているものたちですよ?そんな彼らは金があれば動きましょう。ですが証拠や形跡を残さない為の行動は取れません。


侯爵令嬢という立場にあるルーナ様がわざわざその様な者たちへ依頼するとは考え難くないですかね?


もっと確実性のあるギルドへ依頼する方が理解できましょう。


それにその布切れ……失礼、近くで拝見しますね?



『……やはり、これは手の込んだ陰謀でしょう。ルーナ令嬢へ罪を被せようと誰かがわざと痕跡を残したとしか思えません!これはつい最近民達の間で流通が始まったばかりの布ですね!主に平民達が安く手に入れられるよう作られた素材です。これをわざわざルーナ令嬢が用意するのは考えにくいですし…そもそも家紋は何にでも彫るものでもありませんでしょう?それはルギウス公爵令息がよくよく理解されているのではありませんでしょうか!』


「……では、一体……だが私物を壊したという件もあるだろう?」


『その件に関してですが誰が彼女の姿を目にしたのでしょう?ナナ様の私物が壊されたと言う話は耳にしましたが、記憶が正しければルーナ令嬢はその時療養の名目で領地に行かれていたと存じますが、ルギウス令息はご存知でない?』




驚いた顔をしていらっしゃる。ご存知ないようだ!

ルーナ令嬢に目を向ければ彼女は肯定するように頷いてみせる。夏の頃、彼女は確かひと月ほどお風邪を召され体調が芳しくないからと療養の地へ赴かれていらっしゃいましたね!


我々は知っておりましたが、婚約者であるルギウス令息が知らないとは驚きの事実だ!




「わたくしは申し上げましたわ。体調も良くなく、ご迷惑をおかけするからと……手紙や贈り物もなかった為もしやとは思いましたが。まさか、そこまでわたくしに興味がないとは思っても見ませんでしたわ。」


「じゃあ、一体……ナナ?お前はルーナがやったと言ったよな?」


「た、確かにルーナ様でしたわ!ピンクブロンドの美しい髪で……っあ、ピンクブロンドと、言えば……」




怪訝そうな顔をするルギウス公爵令息!!

そしてその傍らに立つ、平民でありながら光魔法を有するということでこの学園へ入学を果たしたナナ様だが……なんと彼女はルーナ令嬢の隣に居らせられるロザリア様をロックオン!!!


ピンクブロンドは珍しい髪色ですものね!ルーナ令嬢とロザリア令嬢はその代名詞とも言える美しい髪を持つご令嬢だ。この展開から見るに彼女は見間違えたとでも言うのか……!?




「見間違え、そうですね…そうかもしれません。あまりに美しく珍しい色でしたので、てっきりルーナ様かと思いましたが……ロザリア様だったのですね」




なんということか……!!そのまんま引用した!?


確かに珍しい分どちらかによる犯行と言われれば少し納得もいくものだが、そもそもこれは彼女の証言のみということか?

本日最後の依頼者であるロザリア公爵令嬢は全く動きを見せないまま話を聞いていたご様子だが、この結末は如何に……



「貴女、先程から一体何を仰ってるの?わたくし、貴女のことは存じ上げておりますけれど依頼などした覚えはなくてよ」


『美しい声が発せられーーー…っえ?えっと、わたくしリリ・ポーター。ロザリア・テンペル公爵令嬢の名で本日の実況解説依頼をお受けしたのですが?』


「だから、なんの事ですの?」



何が起こったというのか。

ロザリア公爵令嬢は自分に罪を着せる発言をしたナナに一瞥もくれず、わたくしリリの方へ顔を向けられている。

確かに私はロザリア令嬢の名で依頼の手紙を頂いたが、まさかのイタズラだったということか……?


一体この状況をどうまとめる!?



「すまないロザリア。君の名で、彼女に依頼を出したのは私だ。ライフォード・ロイズ・クローバー、この国の皇太子の名で手紙を出すには…難しくてな」


『っなんと、言うことでしょう!?ロザリア令嬢の名で依頼を頂いたと思ったが、手紙の主は皇太子殿下で在らせられるライフォード・ロイズ・クローバー様からのものだったぁぁぁぁ!?どうりで筆跡がロザリア様より少し硬質的だと思いましたが、いやはや彼女を騙る者がいるはずもないと見切っておりました。盲点ですね』


「……まあ、このように。周りをよく見て他者を知り、我々が気づかない点の真相をよく知る人物と思ってな……少し騒がしいが」



騒がしいに関しては受け止めましょう!

ロザリア令嬢は驚きつつもご納得のご様子だ、殿下に見つめられ頬を染める姿は愛らし……痛い!扇子で軽く叩かれてしまいましたね!美しいご令嬢からのご褒美と浮かれたい気持ちもありますが、一旦話を戻しまして……



ナナ様は何やら驚いた様子で殿下を見ておりますね?

ルギウス令息も怪訝そうな顔はしつつこちらを見ていますが……おやおや、ナナ様から離れてしまうらしい。




「え、え?ライ、どうしてロザリア様の所にいるの?私、沢山お伝えしましたよね…?どんな事を、されたか」


「それについて、君の口から出た言葉は全て真偽が不明なものだっただろう。曖昧で、気がする。だったかな。など。それをさも本当の事のように言う。だから真偽を確かめるために、ここにいる」


『ナナ様は希少な光魔法所持者ということもあり王家の庇護下におられます方。そんな彼女に相談と言われれば聞かざるを得ない状況である殿下だが、その優しさに甘えたのは兎も角として…真偽不明の噂話をしていた!?』




不明じゃない、真実だと声を荒らげるナナ様。


話を聞いてすらいないが彼女の噂はよく耳にしていましたね。女子生徒は勿論男子生徒も色々苦労があったという話でしたかな。


分け隔てなく誰とでも仲良く!と仰られていたナナ様は大変人気を博しておりましたが、確か二年に上がった頃から女子生徒との交友が途絶え始めたご様子。婚約者のいる男性と大変仲良く過ごされており、それを指摘したことから始まった記憶ですね!


確か大泣きして、男子生徒に庇われ、その場で婚約破棄を言い渡された者もいたでしょう?身に覚え、ありますね?




「確かに、ありましたね。ですが私は友人として交友をしていただけです!それを、大勢に囲まれ罵倒されたら誰だって怖いし辛いでしょう!その様な方と婚約していた彼も辛そうでしたし、あれはなるべくして……なったものだと思ってます」




おおっと、会場がざわついたーーー!!!


なるべくしてなった婚約破棄と!仰いました!?

そもそも傍目から見ればあれは「婚約者のいる殿方と、あまり親しくするのは良くないかも。見てる人に勘違いされちゃうよ☆」程度の指摘であったはずだ!

なぜ知っているのかって?そのすぐ後ろで本を読んでいたからですとも!!なーんか指摘されてるな~って思っていたら突然耳が裂けるんじゃないかという声量で叫ぶものですから、忘れるはずもありませんよね?


それだけ聞けばどちらに非があるかなど言わずともですが、なるべくしてなったという言葉はよくありません。


あなたの軽率な行動から始まった婚約破棄でしたでしょう?その後ご令嬢がどうなったかご存知です?


彼女、彼の婚約者という立場から今後を学ぶ為に学園に在籍しておりました状況です。元々男爵家である彼女は家格が低いとも言われていましたが、それはそれは勤勉で大変優秀な方でしたね!

それが婚約の白紙により状況も変わりました。

子爵令息の婚約者にならないのであればと、金が勿体無いからと両親から退学を強制され、領地へ戻り、隣国へ売られるように嫁がされてしまいました!



『なるべくしてなった!一体何がなるべくしたのでしょう?彼女はそもそも貴女と会話すらしていないのに!彼女の友人が心配した上での行動を、さも彼女がしたように発言した貴女のお陰で一人の人間の人生を壊したのに?なるべくしてなったと、素晴らしいお考えのようですね!?』


「な、にそれ……私、そんなの、知らない」



知らなかったのですか。まあそうでしょうね。


おっと失礼。今のはわたくしの私情が入りましたね!

友人であり未だ連絡を取り合う彼女が辛い思いをしたという事実を思い出し思わず自分の思いが出てしまいました。失敬失敬。


彼女の話はまた次の機会と致しまして、ナナ様やロザリア令嬢のお話へ戻るとしましょう!!




『さあここからはクライマックス!虐げられていたと各所に悲痛な叫びをあげる光魔法保持者のナナ様と、彼女を虐げていた張本人として名が上がったロザリア令嬢……二人の決戦の火蓋がここで切って落とされたーーーっ!』




「失礼。私は君の話が聞きたくて頼んだのだ。実況解説は建前で。真実は既に知っているんだろう?それだけ教えてくれないか」




決戦、開始________っあら?




先程からわたくし、リリ・ポーターは、音響魔法という魔法により声を拡声して会場を盛り上げておりました。


が、顔の前に伸ばされた手により視界は遮られまして。



実況解説のリリ・ポーターさんをお呼びでないと?

わたくし実況解説風にしかまともにお話出来ませんよ?

普通にお話するのは不得手なものでして。



「つまり、彼女が話していたこれまでの噂を言ってくれるだけでいい。何が真実で何が嘘か。証拠や推理があれば一緒にだ。リポート風で構わない」


『なるほど………ではでは気を取り直して、一風変わった本日最後の依頼をお受けすると致しましょう!!ライフォード・ロイズ・クローバー皇太子殿下より頂きましたご依頼内容は簡単に言うと題して【光魔法所持者ナナ!噂の真相はいかに!?】!実況解説はわたくしリリ・ポーターがお送りします』




リポート風に言っていいなら期待に応えて進ぜましょう!



ナナ様の件は噂も多々、本当に沢山ありますが放送部員としてどーーーしても真実が気になりましてね?そりゃあ色々お調べさせて頂きましたとも!


客観的視点もあるかと存じますが、そこの判断は皆様におまかせするとして……一つ目の噂が器物破損でしたかね?




『これは最早面白味もないので結論からお伝え致しましょう!器物破損の件でしたら同級のモモ様方の仕業でしたね?わざわざピンクブロンドのウィッグを用意されたようでしたが、自作自演とは手の込んだ行動にわたくしリリも驚きました!』


「自作……自演……?」


『おおっと驚くルギウス令息!それもそのはずナナ様から聞いていた話と食い違っているからだ!!ルーナ令嬢はそもそも療養中で無理ですし、時間帯で言うと昼食頃とお聞きしましたがロザリア令嬢もその時間帯は殿下とランチを嗜まれておりましたよね?わたくしたまたま鉢合わせただけですけども、ピンクブロンドの髪でお花を摘みに行かれる方をお見受けしてご挨拶でもと思いこっそりお待ちしていましたが…その後御手洗からモモ様しか出てこず驚いてしまいしたよええ!』


「……御手洗で、待ってた…」



ああ!ロザリア令嬢が怪訝な顔をされている!

そこについては深く追求しないで頂きたい所存であるが、この件に関してはまだまだあるぞ!




『気になりまして暫くモモ様を観察する日々を過ごしておりました!女性のストーキン……失礼、観察は非常に苦もなく楽しめましたね!日暮れの教室でナナ様とお二人会話する姿は何度も目にいたしました!ルーナ様やロザリア様をこれで蹴落として婚約者を奪えると楽しげでしたね!?わたくし隠密スキルには自信がありますが強気な不敬発言で流石に声が出かけましたよ!』



「う、嘘!そんなのデタラメ……証拠だって、ないでしょう!!」



ありますが?


あなたのように杜撰な手口をすると思わないでいただきたいものですね……おっと、失言でしたね!

わたくし放送部員でございますから、勿論放送に必要となる物の作成も抜かりありません!わたくしが今つけておりますこちらのネックレスも、そのひとつでございます。


ボタンをポチッと、あら不思議!

目の前には鮮明な人の顔。聞こえてくる声。皆様大変驚きのご様子ですね?こちら私が制作したビデオ機能というものでございます!!



『紙に書き綴るにはあまりにもスピードが足りませんのでデータに残るものを作ればいいのでは!?ということで出来上がりましたのがこのビデオ機能!王家や魔塔には既に申請を上げており品質保証もされた逸品です!』



【ルギウス様ったら全部信じてくれちゃうの。ルーナって信頼がないのね?まあ、庇護欲もないし】


【ひっどーい。まあ気位ばっか高くてそんなモノないでしょ。やっぱり男子は可愛くて守ってあげたい子の方が好きなのよ】


【まあでもルギウス様はやっぱり微妙かなぁ……折角なら王子様の方が自慢できるじゃない?私がもし王妃様とかになったら、色々融通してあげるから協力してよ】


【本当に〜?じゃあ私がルギウス様と結ばれるように繋いでよ。次期公爵様ならお金もいっぱいあるし】




映し出されるビデオは皆様新鮮なようで離れていた方々も一点集中して見ておられますね!

想像以上の発言内容に、吐き気すら催した様子の方々がいらっしゃるご様子。事前警告をするべきでしたか?


ナナ様は何やら叫びながらしゃがみこみ頭を抱えているようですが、あなたが始めたことですよね?証拠がないと言うから出してあげただけなのですけど!



『まあこの様な感じに彼女は彼女の友人達と、様々な方へ噂を流していた様子ですね!後は殿下にお送りしますが、【婚約破棄計画】という名の策略も目論んでおりますのでご注意ください!簡単に申しますと婚約者のいる殿方へ愛想を振りまき、誰が一番婚約破棄させるかという地獄のような計画でございます!皆様そのようなものに騙されないかと存じますが、ぜひお気をつけくださいね!?』




静まり返る会場内ではゴクリと息を飲み込む音が鳴る。



本日この場に居らせられる皆様方はナナ様から背を向けていき、場に残されたナナ様は座り込んだまま殿下を見上げていらっしゃいますね!まだ何か言うことでもあるのでしょうか!?




「何も言うな、お前は一度送還する。公爵令嬢及び侯爵令嬢への侮辱、名誉毀損。嘘の噂で人々を騙した事も罪深い。そして非がないのにも関わらず巻き込まれた者たちへ償う為に、生きていけ」




殿下の言葉と共にナナ様は騎士達に連れていかれてしまった……彼女のこの後は如何に!?


何ともまあ長く体力の使う最終日でございましょう!

ですが最後まで放送部員としてリポーターを務めることが出来た私はリポーター冥利に尽きるというものです!




「リリ・ポーター。本日は感謝する。真実を公にしてくれたこと…ロザリアを守ってくれたこと、礼を言う」


『いえいえそんな!お二人が相思相愛であらせられるのは学園生徒…並びに国民にも広く知れ渡る事実です!愛されているロザリア様がわざわざナナ様に…?と思って確認したら真実が露見したということでしたねぇ!』



「……リポート力は然ることながら、推理明察力も素晴らしい。また君に依頼をしようと思う」





王族からの信頼を勝ち取ったぁぁぁあ!!

これで安心安全、信頼実績出来上がり!

皆様も何かあればこのリリ・ポーターへ……



ん?おや?誰かが私の肩を……むむ?



これはこれはルーナ令嬢、先程はありがとうございました……え?依頼の完遂をしていないって?

ルーナ令嬢はどうやらルギウス様をコテンパンに懲らしめつつ、優位な婚約破棄をご所望のようだ!!


おやおやルギウス公爵令息、顔が真っ青ですね?

まあ確かに片方の意見のみ聞き勝手な思い込みで非難しようとする様な方、今後を共にするのは難しいというものでしょう!彼はこの先一体どうする…!?




ではではわたくしリリ・ポーター。

改めまして、お客様からのご依頼にお答えし安心安全確かな真実をしっかり実況解説いたしましょう!!




皆様も今後何かございましたら、

わたくしリリ・ポーターへ是非ご依頼ください。


実況解説を見ていたらふと思い浮かびました。

設定が甘い点などはお許しください。


あまりにも名前が思いつかなかったのでそのままです。

アナ・ウンサーよりはいいかなって思っています。


初めての短編でしたが楽しかったです。

ここまでお読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
この作品、本当に面白かったです 着眼点が凄いと思ったので連載版が読みたいです
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