Eve
今日が何の日か
私はわかっていた
それでも
一人で出かける
鐘が鳴る
まるで遠い異国に来たよう
街では
イルミネーションが煌めいて
誰かと誰かがそれを見つめながら
手を繋ぐ通りすぎる
私は目を細めて
二人以上が並んで歩く歩道を渡る
どうやら雪は遅れに遅れ
まだ降らないらしい
前夜だからもうしばらく
塗りあげる準備で忙しいんだろう
真っ白に染めるのは案外難しい
やろうと思っても上手くはいかなかった
今も去年の手作り雪だるまが
部屋の隅で埃を被っているはず
今年も良い子でいた
でもプレゼントを貰うには
もう大きくなりすぎて
寂しいから
私は携帯電話の電源を切って
身の回りの音を消す
人がいない山の中
はいた息は白く湯気のように
熱がこもっていて
頬がどこまでも温かくなる
余分に持ってきたカイロは
どうやら
ポケットに要らぬ負担をかけさせただけで
使わないみたいだ
思い出す
お気に入りだった地図帳が
降る雪の重みで破けたあの日を
そのまま部屋で眺めて過ごせばよかったのに
急に思いついた欲張りなことは
やっぱりよくないことで終わってしまった
もう片方のポケットの膨らみを触れる
底にはあの日の地図帳と丸印
今日が何の日か
私はわかっていた
それでも
一人で居たい