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宝刀の話

それから先は、時々骸骨と化した死体が飛びかかってきたが、先頭でフレイが宝刀で片づけていたので、列の2番手に回ってくることはなかった。エミリアさんが魔法で照らしてくれるおかげで、あたりもよく見えたし、何も問題はないように思われた。

「この辺りには行ったことがないんだよな」

とフレイは独り言を言った。

 俺は案内をしながら、ここから先に水没している場所があること、そこから先の地下はさすがに泳いで行ったことはないということを伝えた。

「フレイはいつからあんな不思議な武器を使えるようになったの?」

 アンナがエミリアさんに質問した。エミリアさんが、フレイは宝刀という武器に「選ばれた」と言っていたのを思い出した。

「そうだよな、こんな強力な武器を使えたら、無敵だよな」

俺もそう言って、フレイを見た。フレイは事もなさげに宝刀を元の鞘に収めると、「ヒースの言っていた水没している箇所っていうのはここか」とか言いながら、振り返った。

「この双剣、ずいぶん頻繁に俺の夢に出てきて、自分を台座から抜けとうるさいんで、使ってやってるんだ」

と言ってから、

「宝刀がなくても俺は強いぜ」

と言って、腕を組んだ。

 俺は、アンナの家でフレイがぼやいた、もう少し強くなれたらといつも思う、、、というセリフをなぜか思い出した。

「はいはい、それはわかってるわ」

 エミリアさんはフレイを子供みたいに扱う時がある。彼女よりずっと背の高いフレイの頭を、腕を伸ばしてクシャクシャと撫でると、「あなたが強いのはよくわかってるわ」と少し笑う。そして先を見た。


 地面は行き止まりになっていて、先は水がはっている。深さは濁ってわからないが、そんなに深くはないだろうと思った。俺の記憶がただしければ、地面の部分をつたって上の階へ行けたような気もする。アンナに聞くと、上の階へ行けるけど、周りを見た限り建物が崩れて道が塞がってしまったようだ。俺の道案内もあまり役に立たないかもしれない。


「水の先はどうなってるんだろう?」

俺は遠くを見ようと目を凝らした。しかしエミリアさんの魔術の光も使ってもよくわからない。ここから先は昔から水がひかない。俺もアンナも行ったことがない。

「フレイ、見てきてくれる?」

「了解です、隊長」

 フレイは宝刀を片方抜くと、その上に靴のまま乗っかった。浮いている。こんなこともできるのかと驚いて俺は言った。

「俺も一緒に行く」

 フレイは、もう片方の宝刀を抜くと、俺の前に置いた。

 水の上すれすれを、宝刀はゆっくりと飛んだ。こんなこともできるとは、、、と俺は手をばたつかせてバランスを取りながらフレイの背中を見た。宝刀を使っている間、フレイは無口だ。エミリアさんによると、操るにはものすごい集中が必要らしい。人を乗せて飛ばすなんてことをしたら、疲労も激しいのかもしれない。

 行った先は、壁だった。しかし、奇妙な光の文字で魔法陣が浮きあがっている。フレイは見るなり頭を抱えて、叫んだ。

「入口の鍵魔術といい、高等魔術の使い手がいるみたいだな、ちくしょう!隊長と来ればよかったかもしれねぇ」

 俺は心配になって言った。

「アンナとエミリアさんは大丈夫だろうか」

「隊長は俺より火力があるぜ?そうやすやすとヴァンパイアに負けるとは思えないけど」

 俺が思うに、フレイも宝刀二本に自分のサーベル、さらに素手で殴っても蹴っても強いのだから、火力という言葉がどうなのかはともかく、あえて使うなら驚くような火力だと思う。そのフレイより火力があるとなると、どんな技を持っているのか。

「まぁ、隊長と俺がここに来たら、お前とアンナを置いていくことになるからな。それこそ夜のハントに慣れていないふたりを残すわけにはいかない」

「一回、話し合おう」

 俺が言うと、フレイもそうだなと言って、そのまま引き返すことにした。


 しかし、元の場所に戻ると。

 いない。アンナの姿も、エミリアさんの姿もない。

「隊長ー!!」

 フレイの声が響くが、応答はない。

 俺は、カンテラをかざして、あたりの地面を調べた。見慣れた髪飾りが落ちていた。

「フレイ、これ、、、アンナのだ」

「なんだって?」

 何かがあったんだろうと思った。しかしどうするか。俺はフレイを見て言った。

「エミリアさんは強いんだな?なら、ここまで来た途中のヴァンパイアたちに負けることはないんだよな?」

 フレイはうなずいた。

「当たり前だ、あのひとは教会の夜のハンターを束ねる隊長だぞ!俺より強い」

「なら、何かがあったんだ。誰かに会ったとか。引き返すなら俺たちを待ってからにするはずだ。それに、入口の鍵は時間経過で閉じるんだろ?エミリアさんは開けられるけど、俺たちを置いてまた鍵が閉まって閉じ込められるような場所に俺たちを置いていかないと思う」

 ここまで一気に言って、俺は不安になってきた。アンナは大丈夫だろうか。

 フレイは、腕を組んで考えていたが、うなずいて。

「なら、さっきの魔法陣をくぐろう。あれはおそらく、場所を移動する類のものだ。隊長に習ったことがある」


 俺とフレイは、また宝刀に乗って、さっきの魔法陣の場所まで飛んだ。今回はかなり飛ばしていたらしく、俺は必死にバランスをとっていた。

「くぐるって、どうやって?!」

 俺は叫んだ。フレイはもっと大きな声で「突っ込む!」と叫ぶと宝刀に乗ったまま壁と衝突、、、しなかった。壁をすりぬけて、俺とともにどこかの空洞へ移動した。


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