エンディング
天井が開いて空が見えたので、俺は村の親父にのろしをあげた。心配して一晩中待機していた親父と、アンナの父さんが、他の村人もつれてきてすぐに助けに来てくれた。
日の光で動けないオルカとその部下たちを、村人総出でやぐらを組んで、燃やした。
それから俺たちは、怪我をしていたので、急いでアンナの父さんの治療を受けた。
村の診療所はアンナの家の一角で、部屋がたくさんあるわけではなかったので、全員ベッドを並べて一緒だった。俺の怪我も、折れている骨があったりで、結局入院することになった。
窓際にジョシュア、その隣が俺、そしてフレイ、入口側にエミリアさん。エミリアさんは目を覚まして元気が出てくるとかならず、フレイに「名前で呼んでよ」と言うが、フレイは顔を真っ赤にして「隊長は隊長ですから」と言っていた。
「呼んでやればいいじゃないか、名前でくらい」
ジョシュアも少し元気が出てくると、そんな二人を見て苦笑いをしていた。
それからジョシュアは、俺たちに「ルカの埋葬をしたい」と申し出てきた。俺はジョシュアの申し出をきちんと受けることにした。
俺とフレイは少し動けるようになったので、二人して散歩に出かけたことがある。エミリアさんのいないところで、誰かに話したかったのだろう、フレイは頭をぐしゃぐしゃとかきむしりながら
「あの時のセリフ聞いてただろ」
と困惑気に言った。
「あんな所で言いたくなかったけど、けど、言ったからには…」
「責任をとったらいいんじゃない?」
俺は呆れてそう返事をした。
「っていうか、お前とアンナってどうなんだよ?」
俺はびっくりした。
「アンナは、幼馴染だぞ、今更…」
「今更って、誰かと一緒になっちまってもいいってことなんだよな?」
それは…。俺はただずっと、アンナとは一緒に楽しく、ただそれだけしか考えてこなかった。
アンナは、俺たち全員の看病で忙しい毎日を送っていた。
だけど、ずっと気になっていたことがある。アンナはやけにジョシュアに甘くないかってことだ。
「もっと食べないとだめですよ」
そういいながら、スプーンをジョシュアの口に運ぼうとするアンナに、俺はムカムカしていた。ジョシュアはルカの喪に服している最中で、そんな気はないのだろうけど。その悲しげな表情が逆にアンナの気を引くのかもしれない。そう思うと何だかイライラしてきた。
そもそも、ジョシュアは明るい日の中で見ると、なかなかの美形だってことは男の俺にもわかってる。
愛とか、俺にはわからない。
息抜きをしたいと言うアンナと、丘の上まできた。この丘で小さいころは、結婚式ごっこもしたなと俺は思い出していた。
アンナは楽しそうに花を摘んで首飾りをつくりはじめた。
「好きとか、そういうのを通り越してるんだよな…」
「え?」
アンナは花に包まれて、今も昔も俺の隣で笑っていてくれたらそれだけでいいんだ。
だけど、他の誰かと一緒になるなんてそれは嫌だった。
「…わたしは好きだよ」
アンナにそう言われて、ときめくとか、それよりも深い感情が俺にはあった。
「俺も、たぶん、そう」
それ以上は何も言えなかったので、俺とアンナはただはしゃぎまわって、丘の上で空を見上げていた。